経営・総務2021年02月05日 TDB景気動向調査(全国) ― 2021年1月調査 ― 出典:帝国データバンク
国内景気は2カ月連続で悪化
~11都府県への緊急事態宣言の再発出により下押し圧力が強まる~
~11都府県への緊急事態宣言の再発出により下押し圧力が強まる~
(調査対象2万3,695社、有効回答1万1,441社、回答率48.3%、調査開始2002年5月)
調査結果のポイント
1.2021年1月の景気DIは前月比1.1ポイント減の33.9となり、2カ月連続で悪化した。国内景気は、緊急事態宣言の再発出などで個人消費関連を中心に2カ月連続で悪化した。今後の景気は、一時的な後退はみられるものの、春頃を底として、緩やかに上向いていくとみられる。
2.10業界中、9業界が悪化した。11都府県で緊急事態宣言が発出され、個人消費関連の業種で景況感がさらに下押しされた。また、世界的な半導体不足により自動車メーカーの減産もみられるなか、『製造』は8カ月ぶりの悪化となった。
3.『南関東』『北陸』『近畿』など9カ月ぶりに全10地域がそろって悪化した。11都府県への緊急事態宣言の再発出で個人消費関連が大きく落ち込んだほか、日本海側を中心とした寒波や記録的な大雪などが下押し要因となった。都道府県別では37都道府県が悪化した。規模別では「大企業」「中小企業」「小規模企業」がいずれも2カ月連続で悪化した。
<2021年1月の動向:悪化が継続>
2021年1月の景気DIは前月比1.1ポイント減の33.9となり、2カ月連続で悪化した。
1月の国内景気は、11都府県で2回目となる緊急事態宣言が発出され、外出自粛や飲食店を中心とした営業時間の短縮要請などが実施されたことで、再び下押し圧力が強まった。また、政府による各種支援策の一時停止や、企業の出張が抑制されたことなどで宿泊業界が一段の悪化となった。日本海側を中心とした寒波と記録的な大雪などによる個人消費の落ち込みのほか、自動車メーカーの減産の影響もみられた。他方、半導体製造装置が高水準で推移したほか、パソコンや暖房器具などを含む自宅内消費関連は上向き傾向が続いた。
国内景気は、緊急事態宣言の再発出などで個人消費関連を中心に2カ月連続で悪化した。
<今後の見通し:一時的に後退>
今後1年程度の国内景気は、緊急事態宣言の延長による影響のほか、社会経済活動の抑制などにともなう下振れリスクを抱えつつ推移すると見込まれる。新型コロナウイルスの感染状況次第ながら、地域間や業種間で景気動向が二極化していく可能性もある。また、雇用・所得環境の悪化による個人消費への影響は懸念材料であろう。他方、ワクチン接種の開始による経済活動の正常化に向けた動きに加え、自宅内消費など新しい生活様式に対する需要の拡大、米国や中国など海外経済の回復などはプラス要因になるとみられる。
今後の景気は、一時的な後退はみられるものの、春頃を底として、緩やかに上向いていくとみられる。
業界別:9業界が悪化、緊急事態宣言下で個人消費関連がさらに下押し
・10業界中、『金融』を除く9業界が悪化した。11都府県で緊急事態宣言が発出され、個人消費関連の業種で景況感がさらに下押しされた。また、世界的な半導体不足により自動車メーカーの減産もみられるなか、『製造』は8カ月ぶりの悪化となった。
・『サービス』(33.9)…前月比1.8ポイント減。2カ月連続の悪化。各種観光施策の一時停止や緊急事態宣言の発出を受け、個人向けサービスの業種を中心に景況感が下押しされた。特に、「旅館・ホテル」(同8.5ポイント減)は5カ月ぶりに景気DIが一桁台に落ち込み、営業時間の短縮を要請されている「飲食店」(同5.0ポイント減)も厳しい状況が続いている。また、イベント中止の影響や広告案件の停止がみられる「広告関連」(同2.3ポイント減)も5カ月ぶりに悪化するなど、『サービス』は15業種中11業種が悪化した。なお、寒波の影響や液化天然ガスの不足により電力需給がひっ迫するなか、「電気・ガス・水道・熱供給」(同3.9ポイント増)の仕入れ単価DIは、1年1カ月ぶりに50を超えた。
・『製造』(33.4)…同0.5ポイント減。8カ月ぶりの悪化。世界的な半導体不足により、自動車メーカーで減産の動きがみられるなか、「輸送用機械・器具製造」(同横ばい)、「化学品製造」(同1.3ポイント減)、「鉄鋼・非鉄・鉱業」(同0.4ポイント減)などの持ち直しの動きが一服した。また、「繊維・繊維製品・服飾品製造」(同1.6ポイント減)も、2カ月連続の悪化となり、川下の卸売・小売とともにアパレル関連の業種は厳しい水準が続いた。他方、プリント回路や電子部品製造が含まれる「電気機械製造」(同0.6ポイント増)、木製家具製造やコンクリート製品製造などの「建材・家具、窯業・土石製品製造」(同1.3ポイント増)では、8カ月連続でプラスとなり持ち直しの動きが継続した。
・『運輸・倉庫』(30.0)…同1.5ポイント減。2カ月連続の悪化。人の移動が再び抑制され、旅行代理店や旅客自動車運送などの観光関連の業種は、厳しい状況が継続している。また、アジアを中心とした輸送用コンテナの不足、海上運賃の高騰で輸出入の荷動きが停滞するなか、沿海貨物海運や港湾運送の景況感も悪化した。一般貨物自動車運送も、大雪の影響などによる国内での荷動きの停滞や、軽油など燃料費の上昇がマイナス材料となった。
規模別:全規模が2カ月連続で悪化、人の移動減少や季節需要の低調が響く
・「大企業」「中小企業」「小規模企業」がいずれも2カ月連続で悪化した。緊急事態宣言の再発出や各種施策の全国的停止による人の移動減少が響いたほか、ギフト需要も低調だった。
・「大企業」(36.3)…前月比1.1ポイント減。2カ月連続で悪化。民間の設備投資が低調ななかで、入札時の価格競争の激化も加わり『建設』の景況感が9カ月ぶりに悪化した。また、鳥インフルエンザの流行による鶏卵・鶏肉価格などの上昇も関連業界に影響した。
・「中小企業」(33.4)…同1.1ポイント減。2カ月連続で悪化。緊急事態宣言の発出や各種施策の停止による人の移動減少などがマイナス要因となった。特に、『不動産』など年度末に向けて繁忙期となる業界で悪化幅が拡大した。
・「小規模企業」(32.8)…同1.4ポイント減。2カ月連続で悪化。店舗への来客数が減少したほか、年末年始や冠婚葬祭におけるギフト需要も低調だった。また、「旅館・ホテル」や「娯楽サービス」の景気DIが大きく下落するなど、個人消費関連が落ち込んだ。
地域別:全10地域が悪化、緊急事態宣言の再発出や大雪などが下押し
・『南関東』『北陸』『近畿』など9カ月ぶりに全10地域がそろって悪化した。11都府県への緊急事態宣言の再発出で個人消費関連が大きく落ち込んだほか、日本海側を中心とした寒波や記録的な大雪などが下押し要因となった。都道府県別では37都道府県が悪化した。
・『南関東』(34.0))…前月比1.2ポイント減。2カ月連続で悪化。緊急事態宣言が域内1都3県を対象に発出されたなか、いずれも景況感が悪化した。特に、観光客の減少にともない「旅館・ホテル」「娯楽サービス」や『小売』など個人消費関連が顕著に落ち込んだ。
・『北陸』(32.7))…同2.3ポイント減。9カ月ぶりに悪化。新型コロナウイルスの再拡大にともなう各種施策の停止に加え、記録的な大雪による来客数の減少や流通網の停滞などが下押し要因となった。とりわけ「富山」「石川」「福井」が大きく下落した。
・『近畿』(33.1))…同0.8ポイント減。2カ月連続で悪化。緊急事態宣言が「京都」「大阪」「兵庫」に対して発出された。都道府県をまたぐ移動や出張が削減されるなか、域内の「娯楽サービス」や「飲食料品小売」などの景況感が大幅に悪化した。
2.調査事項
・景況感(現在)および先行きに対する見通し
・経営状況(売り上げ、生産・出荷量、仕入れ単価・販売単価、在庫、設備稼働率、従業員数、時間外労働時間、雇用過不足、設備投資意欲)および金融機関の融資姿勢について
3.調査時期・方法
2021年1月18日~1月31日(インターネット調査)
■TDB景気動向調査の目的および調査項目
全国企業の景気判断を総合した指標。国内景気の実態把握を目的として、2002年5月から調査を開始。景気判断や企業収益、設備投資意欲、雇用環境など企業活動全般に関する項目について全国2万3千社以上を対象に実施している月次統計調査(ビジネス・サーベイ)である。
■調査先企業の選定
全国全業種、全規模を対象とし、調査協力の承諾が得られた企業を調査先としている。
■DI算出方法
DI(ディフュージョン・インデックス〈DiffusionIndex〉)は、企業による7段階の判断に、それぞれ以下の点数を与え、これらを各選択区分の回答数に乗じて算出している。
景気DIは、50を境にそれより上であれば「良い」、下であれば「悪い」を意味し、50が判断の分かれ目となる(小数点第2位を四捨五入)。また、企業規模の大小に基づくウェイト付けは行っておらず、「1社1票」で算出している。
■企業規模区分
企業の多様性が増すなか、資本金や従業員数だけでは計りきれない実態の把握を目的に中小企業基本法に準拠し、全国売上高ランキングデータを加え下記の通り区分している。
■景気予測DI
景気DIの先行きを予測する指標。ARIMAモデルに、経済統計やTDB景気動向調査の「売り上げDI」、「設備投資意欲DI」、「先行き見通しDI」などを加えたstructuralARIMAモデルで分析し、景気予測DIを算出している。
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