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民事2020年05月12日 改正民法:配偶者居住権とその財産価値 執筆者:政岡史郎

1. この4月1日から改正民法(債権法)が施行され、一部前倒しで施行されていた「相続法」の分野も、わずかな項目を除いて施行されました(法務局での遺言書保管に関する法律は7月10日施行)。
  今般の相続法改正は、従来からの「戸籍制度下での家族内の問題」に対処するもので、事実婚や同性婚など近年多様化の一途をたどる「家族」の在り方にまでは対応していません。いつか、世論や社会状況に応じ、一部の先進国のように事実婚や同性婚にも法的保護を与える抜本的な改正がなされるのかもしれません。
2. さて、今回は、従来の家族(戸籍上の家族)を前提とする相続法改正の中で、配偶者保護として制定された新制度、「配偶者居住権」に触れてみたいと思います。
  日本はイタリアやドイツと肩を並べる超高齢化社会で、配偶者に先立たれた方の生活保障が必要となります。そこで、配偶者に「生活の基盤となる住居」を確保すべく導入されたのが「配偶者居住権」です。
  配偶者の居住権には、①「配偶者短期居住権」(民法1037条以下)と②「配偶者居住権」(民法1028条以下)がありますが、①は従来の判例法理(遺産である建物に居住していた相続人には、一定の範囲・期間で使用貸借関係を認める)を、配偶者の立場で明文化したものといえます。これは遺産分割確定か相続発生から6カ月経過した日のいずれか遅い日までの「暫定的な居住環境の保障」となります。
  ②の「配偶者居住権」はこれと異なり、原則的に、被相続人の遺産である建物に居住できる期間は「終身」とされており、極めて強固な権利です。この権利が発生するには、(1)相続開始時の建物居住、(2)建物が第三者との共有ではないこと、(3)遺産分割協議や遺贈、死因贈与契約、遺産分割審判で権利取得が認められること、が必要です。そして、「配偶者居住権」が相続される際には、その権利を財産評価した上で、他の遺産も含めた遺産分割、遺留分侵害額請求といった場面で具体的な相続分や支払額の計算をしていくことになります。
3. 我が国においては、遺産に占める不動産の割合がとても高く、不動産を相続すると他の金融資産の分配を受けられないとか、共同相続人に代償金支払いを余儀なくされる場面が多くあります。そのため、「配偶者居住権」が幾らになるのかが、遺産分割協議の場面で非常に重要になること、また、その額が争いになり易いことは直ぐにお分かりいただけると思います。
  改正民法では「配偶者居住権」の財産評価については全く触れていないので、法律上の定めがなく混乱が生じかねませんが、法制審議会では、相続人全員の合意があることを前提にした簡易な評価方法が示されました(「民法(相続関係)部会資料19-2」)。
  その評価方法は以下の通りとなります。
 ① 建物の評価額は、「配偶者居住権」の価値+「配偶者居住権の負担が付いている所有権」の価値とする(固定資産税評価額ベースで計算)。
 ② 「配偶者居住権の負担付き所有権」の価値は、
  とする。
 ③ 「配偶者居住権」の価値は、「建物の固定資産評価額-上記②(配偶者居住権の負担付き所有権の価値)」とする。
  というものです。
  上記計算式の法定耐用年数*は、木造住宅であれば22年、鉄筋コンクリート造住宅は47年で、存続期間*が終身の場合は簡易生命表記載の平均余命で存続期間(配偶者の余命)を想定します。ライプニッツ係数*は、例えば想定余命1年なら0.971、20年なら0.554と、年数を経るにつれて徐々に下がっていきます。
  ちなみに、法定耐用年数以上に経過した老朽化建物の場合、上記式の「法定耐用年数-経過年数」が0やマイナスになるため、②の「配偶者居住権の負担付き所有権」の価値は0となり、「配偶者居住権」の価値は固定資産税評価額そのものとなります。
4. 【具体例】
 一戸建て(木造築10年、固定資産評価額1000万円)、配偶者(妻)80歳(平均余命11年)の場合
  上記②「配偶者居住権の負担付き所有権」の価値
  上記③「配偶者居住権」の価値
   固定資産評価額1000万円-60万1666円=939万8334円
5. 以上は建物にフォーカスした説明ですが、敷地がある一戸建ての場合には、敷地利用権についても同様に「配偶者居住権の負担付き土地所有権」を算出し、「土地に関する配偶者居住権」の価値を算出します(この場合、建物と異なって耐用年数などの計算は不要)。
  相続人全員が上記算出方法によることを合意できない場合には、専門家(不動産鑑定士)による鑑定評価などが必要になると考えられており、今後、判例の積み重ねに注目していく必要があります。
(2020年4月執筆)

執筆者

政岡 史郎まさおか しろう

弁護士

略歴・経歴

  H7  早稲田大学卒業、都内某不動産会社入社
  H13 同社退社
  H17 司法試験合格
  H19 弁護士登録・虎ノ門総合法律事務所入所
  H25 エータ法律事務所パートナー弁護士就任

「ある日、突然詐欺にあったら、どうする・どうなる」(明日香出版社 共著)
「内容証明の文例全集」(自由国民社 共著)
「労働審判・示談・あっせん・調停・訴訟の手続きがわかる」(自由国民社 共著)
「自己破産・個人再生のことならこの一冊」(自由国民社 校閲協力)

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