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契約2024年06月17日 Distribution Agreement②(英文契約書(4)) 執筆者:矢吹遼子

 Distribution Agreementの留意点について、前回の続きです。
 Distribution Agreementでは、Minimum Purchase Amount(最低購入数量/金額)を入れるかどうかを検討します。独占的契約で入ることが多いですが、非独占的でも入ることはあります。いずれにせよ、Distributorにとっては厳しい条項です。
 Distributorとしては、期間に注意することが必要です。単位は年間なのか、半期なのか、四半期なのか。例えば、年間合計では同じ4万個であっても、1年間に4万個売れば足りるのか、四半期ごとに1万個ずつ売る必要があるのか。対象商品によっては、時期により波がある場合もありますから、よく検討すべきところです。Supplierとしては、Distributorがそこで定めた数量/金額の販売を達成できなかった場合に、契約を解除できるようにしておくのか、独占的契約の場合は非独占的契約に変更できるようにするのかといった効果に留意します。両者を自由に選択できるようにしておくのが良いでしょう。

 知的財産権に関する条項について、Distribution Agreementでは主に商標権の使用について詳細に規定されることが多いと思います。商標はブランドの使用を通じて知名度や信用を向上させるもので、企業や商品のイメージと密接に結びついています。ですので、Supplierとしては、Distributorが企業・商品のイメージに悪影響を与えるような商標権の使用をしないよう特別の注意を払う必要があります。どのような形態であれば使用を許可できるか、ガイドラインなどで明確に定めておくと良いでしょう。
 クロスボーダーの取引で留意すべきなのは、商標や特許などは国ごとであるということです(一方、著作権は国境がありません)。これらの権利は日本で登録をしていても外国で当然有効になるわけではありません。商標はWIPO(Global Brand Database (wipo.int))などで海外の登録状況を容易に調べることができます。その国で商標登録をされていないのをいいことに、先に出願されてしまうということが往々にしてあるので、費用対効果を考えながら、進出予定の国での商標登録を積極的に検討しましょう。
 また、知的財産については第三者の権利を侵害していないことの保証をするかどうかを必ず検討することになります。クロスボーダーの取引では、非侵害の保証はできる限り避けるべきだと思います。海外で第三者の権利を侵害していないかどうかなど厳密に調査をすることはできません。特に特許やノウハウの調査など困難です。保証をしなければ契約がまとまらないというような状況であれば、せめて対象国を限定するとか、侵害時の損害賠償の条件を設ける等、何らかの責任の限定をかけるべきところです。

 また、Supplierの商品供給義務について定めることがあります。“Supplier shall use its best efforts to supply ~”などと記載するのですが、Supplieとして、“best efforts”と記載して良いかどうかは注意すべきところです。日本人の感覚では、供給する努力をすれば足りると考えがちですが、英米法の“best efforts”は、その時点でなしうるあらゆることをすべき義務というニュアンスで、非常に重い義務です。Supplierとしては“reasonable efforts”などの表現に変更してもらうよう交渉すべきところかと思います。

(2024年6月執筆)

(本記事の内容に関する個別のお問い合わせにはお答えすることはできません。)

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執筆者

矢吹 遼子やぶき りょうこ

弁護士(弁護士法人 本町国際綜合法律事務所)

略歴・経歴

平成21年弁護士登録(大阪弁護士会)。
弁護士法人 本町国際綜合法律事務所所属。
CEDR(Centre for Effective Dispute Resolution)の認可調停人。
契約書(和文・英文)のリーガルチェックや作成等の国際案件、一般民事、家事事件を多く担当する。
薬害肝炎訴訟、全国B型肝炎訴訟、HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)薬害訴訟にも参加。

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