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民事2020年06月03日 特別定額給付金と世帯主 執筆者:亀井真紀

 新型コロナウイルス感染症緊急経済対策として、国の閣議決定により、特別定額給付金としてひとりにつき10万円が支給されることになりました。給付対象者は、基準日(令和2年4月27日)において住民基本台帳に記録されている者、受給権者はその者の属する世帯の世帯主とされています。
 ここで「世帯主が?」と思われた方も少なくないかもしれません。
 自分が世帯主かどうか、誰が世帯主なのか・・と普段あまり意識しない方もいるかと思います。世帯主であることが利害に直結することはあまりないのですが、今般、誰でも10万円がもらえるという分かりやすい政策を受けて、改めてクローズアップされることになりました。
 そもそも世帯とは、住居及び生計を共にする者の集まり又は独立して住居を維持し、若しくは独立して生計を営む単身者のことをいいます。世帯主とは、世帯の中心となって物事をとりはかる者とされています。単身世帯ならその者が当然世帯主です。未成年でもなれます。世帯の別、世帯員、世帯主を決めるのは国民の側であり、国や自治体が勝手に決めることではありません。
 住民基本台帳法上、住民票を世帯ごとに編成すること、住民票に世帯主についてはその旨、世帯主でない者については世帯主の氏名及び世帯主との続柄を記載することが求められています。日本では、家制度の名残か、今なお父親や夫が世帯主というパターンが多いように思いますが、性別、収入の有無、年齢などは不問です。同居していても世帯を別にすることはできますし、戸籍上家族ではなくても世帯を同一にすることもできます。生計をともにするといっても、実際はそうでない世帯も多くあります。
 要するにわりと自由な部分があり、また実際の居住形態・生活状況等は様々です。
 そのため、今般、世帯主が他の世帯構成員の分もまとめて申請、受取を行う手続き方法により、一部支障も生じています。
 ひとつは住民票を残したまま、親族からの暴力その他の虐待により自宅から避難をしている方、ひとつは成年後見人等が選任されている場合です。
 いずれの方に関しても当事者、福祉関係者、法曹関係者等が当初より手続きの問題点を指摘し、総務省が各自治体に向けてとりいそぎ「事務連絡」を通知することになりました。
 前者のいわゆるDV・虐待事案については、地方公共団体の判断により、福祉事務所または市町村における担当部署から被害を受けて避難している旨の「確認書」を発行してもらい、本人が確認書を添付して、居住市町村に特別定額給付金の申請を行うことができることになりました。
 また、後者の成年後見人等が選任されている方については、成年後見登記制度に基づく登記事項証明書により成年後見人等と判断できる場合には、申請書の送付先を成年後見人等に変更してもらい、その上で申請することができるようになりました。
 しかしながら、あくまでもこれは各自治体がそういう取扱いをすることが「できる」というレベルのものであり、一律義務化されたわけではありません。
 実際、自治体が申請書を送付したり、受付を開始したりする前の僅かな期間中(しかも外出自粛要請が出ていました)に上記の手続きを完了できた方がどれだけいたのでしょうか。タッチの差で虐待加害者である世帯主がまとめて被害者の分も受給してしまう例も生じるでしょう。間に合わなかった方でも後に個別に対応はするとはいえ、事実上断念してしまう被害者もいるのではないか懸念もします。
 また、後見人等に関しても私自身、被後見人が住民票を置く自治体に個別に問い合わせして、申請書の送付先変更手続き等をしましたが、全国で情報収集しているとそもそも当該受付はしない、一律住民票住所に送付するという自治体も中にはあったようです。また、世帯主ではない被後見人の場合は、いずれにしても世帯主にいったんは申請してもらう他ない例が多くあるようでした。自治体職員の方が新型コロナウイルス対策で疲弊していること、人手不足であることは分かっていますが、自治体によっての対応格差が浮き彫りになった一面でもあり、残念です。
 そもそも今回のように一律国民ひとりひとり誰もが10万円の支給対象とされている中で、事務手続きの簡素化というメリットが一応あるとしても、世帯ごとでまとめて行う申請方法を原則とする必要があったのか正直疑問です。
 当該手続きで想定されているのは、世帯全員が実際に同じ家に住み、代表者がまとめて申請受給をすれば、家計支援のために支給された特別定額給付金がきちんと世帯全員のために利用される・・・といったものだと思いますが、残念ながら現実の世の中では、そうでないことも珍しくないわけです。虐待や後見開始といった事情がない世帯でも、お金の分配・利用法が家族間で問題になり得ることは容易に推測できます。
 新型コロナウイルスの本当の意味での収束にはまだまだ時間がかかります。そのような中で新しい生活様式が求められ、各業界は対応を迫られています。国民への重要なサービスを提供する自治体も様々な世帯形態、家族実態があることを前提に事務運営を進化させていく必要があると思います。
(2020年5月執筆)

執筆者

亀井 真紀かめい まき

弁護士

略歴・経歴

第二東京弁護士会所属。
平成13年弁護士登録。北海道の紋別ひまわり基金法律事務所(公設事務所)に赴任。
その後、渋谷の桜丘法律事務所(現事務所)に戻り現在に至る。
第東京弁護士会高齢者・障がい者総合支援センター委員会、日弁連高齢者・障害者権利支援センター委員会等所属。
一般民事・家事、刑事事件のほか、成年後見、ホームロイヤー契約等高齢者、障がい者の事件を多く担当する。

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