倒産2019年12月17日 特別企画:飲食店の倒産動向調査(2019 年) 出典:帝国データバンク
飲食店の倒産、過去最多へ
~「酒場・ビヤホール」、「西洋料理店」が過去最多を更新~
はじめに
飲食店が厳しい状況に置かれている。節約志向の高まりに加え、今年 10 月に消費税率の引き上げと それに伴う軽減税率が導入されたことで、消費者はテイクアウトやデリバリーなどの中食や、内食を選 ぶ傾向が強まったと言われる。飲食店は他にも、人手不足、社長の高齢化、後継者問題、キャッシュレ ス化、改正健康増進法の施行が 2020 年に控えるなど今後も懸念が尽きない。
今回、帝国データバンクでは、2000 年~2019 年 11 月の飲食店事業者の倒産(※)動向について集 計・分析した。
※ 飲食事業を主業とする事業者(法人・個人事業者)で、法的整理かつ負債 1000 万円以上を対象としている
調査結果(要旨)
□ 2019 年(1 月~11 月)の飲食店事業者の倒産は 668 件で、11 月時点で過去 4 番目の水準となった。 通年では過去最多となっている 2017 年(707 件)を上回る勢い
□ 業態別にみると、「酒場・ビヤホール」(143 件、構成比 21.4%)、「西洋料理店」(110 件、同 16.5%) が 11 月時点で過去最多を更新した。「酒場・ビヤホール」は 11 年連続で件数最多の業態となった ほか、「西洋料理店」は 3 年連続で件数が急増している
□ 負債額別にみると、2019 年(1 月~11 月)は 5000 万円未満の小規模倒産が構成比 84.4%(564 件)、 5000 万円以上の倒産が同 15.6%(104 件)となった。5000 万円未満の倒産は 2015 年から 5 年連続 で 8 割超となっている
1.件数動向 ~2019 年は過去最多のペースで推移~
2019 年の飲食店事業者の倒産は 11 月までに 668 件発生し、既に前年(653 件)を上回った。過去最 多となっているのは 2017 年の 707 件であるが、2019 年はこのままのペースで推移すると通年の倒産件 数は 728 件前後となり、過去最多を更新する可能性が高い。
2. 業態別動向 ~「酒場・ビヤホール」と「西洋料理店」が過去最多を更新~
業態別(11 業態)にみると、居酒屋やビヤホールのほか、焼き鳥店、おでん店、もつ焼き店などを メインとする「酒場・ビヤホール」(143 件、構成比 21.4%)、レストラン、フランス・イタリア料理店 などの「西洋料理店」(110 件、同 16.5%)が 11 月時点で過去最多を更新し、業界全体の倒産件数を底 上げしている。「中華・東洋料理店」や「喫茶店」は過去最多に迫る勢い。
11 月までの件数でみると、「酒場・ビヤホール」、「西洋料理店」、ラーメン店、カレー店、焼肉店、 餃子店などを含む「中華・東洋料理店」(96 件、構成比 14.4%)の 3 業態で全体(668 件)の 52.2%を 占めている。
「酒場・ビヤホール」は 2009 年以降、11 年連続で最も倒産件数の多い業態となっているほか、「西 洋料理店」は 2017 年(86 件、前年比 41.0%増)、2018 年(92 件、同 7.0%増)、2019 年(110 件、同 19.6%増)と 3 年連続増加し、ここ数年で件数が 2 倍近くに急増している。
一方で、てんぷら店、うなぎ店、とんかつ店、沖縄料理店などの「日本料理店」(46 件、構成比 6.9%) は、他業態に比べ件数は少なく、「すし店」(18 件、同 2.7%)や「そば・うどん店」(15 件、同 2.2%)、 「料亭」(7 件、同 1.0%)も同様の結果となった。和食はその他の業態に比べ新規参入が少なく、消費 者の嗜好やトレンドに左右されにくいことなどが要因とみられる。
3. 負債額動向 ~5000 万円未満が 8 割超、50 億円以上は 2013 年以降ゼロ~
負債額別にみると、2019 年(1 月~11 月)は「5000 万円未満」の小規模倒産が構成比 84.4%(564 件)、5000 万円を超える倒産は同 15.6%(104 件)となった。「5000 万円未満」の倒産は 2015 年から 5 年連続で 8 割超の構成比となっている。
飲食業界はブームやトレンドの移り変わりが激しく、成長半ばにして事業継続が困難となる事業者 が多いことが要因とみられる。実際、今年 1 月から 11 月に発生した全国(全業種)の倒産(7646 件) を業歴別にみると「5 年未満」が 12.3%であるのに対し、飲食店は 20.4%。また、全国(全業種)の 「20 年以上」が 48.8%であるのに対し、飲食店は 32.8%となっている。
負債額 5 億円以上の倒産は 11 件発生し、そのうち 10 億円以上の倒産は 2 件となった。負債額最大 となっているのは、「カルビ屋大福」のフランチャイズ事業を展開し今年 4 月に破産したシズカコーポ レーション(株)。なお、負債 50 億円以上の倒産は 2013 年以降発生していない。
まとめ
2019 年(1 月~11 月)の飲食店の倒産件数は 11 月時点で 668 件発生し、過去最多となるペースで推 移している。
消費者の節約志向は高まる一方で、外食を控えて中食や内食を選ぶ消費者が増加している。そのよう ななか今年 10 月には消費税率が 10%に引き上げられ、それに伴い導入された軽減税率により、テイク アウトやデリバリーなどは消費税率が 8%に据え置かれたのに対し、飲食店の店内で食事をすると消費 税率が 10%となったことなども客離れの要因となった。帝国データバンクが発表している景気動向調 査によると、10 月の飲食店の景気 DI は前月比 6.3 ポイント減の 37.3 となり、その影響が伺える。
また、「人手不足」が原因となり倒産するケースが増えつつあり、これからさらに増加する可能性も ある。実際、帝国データバンクが 2019 年 11 月に発表した『人手不足に対する企業の動向調査』では、 飲食店では非正社員について 78.3%の事業者が人手不足を感じていると回答している。
12 月に入っても、東京競馬場や中山競馬場でレストラン「メトロ」を運営していた太平洋興業(株) や、ハンバーグ&ステーキ店「听屋(POUND-YA)」などを運営していたデリシャス・リンクス(株)な どが破産手続き開始決定を受けた。消費税率の引き上げにより景況感が悪化している飲食店において は、年末に向けてさらに倒産件数が増加することも考えられる。また、2020 年から施行される予定の 改正健康増進法により飲食店などの屋内では原則禁煙となるなど今後も飲食店は厳しい状況が続くと 予想される。
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