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一般2005年11月02日 くれぐれも御用心 日本人弁護士が見た中国 一般社団法人日中法務交流・協力日本機構からの便り 執筆者:稲田堅太郎

 最近、日本人が中国各地において、覚醒剤や麻薬等の密輸容疑で逮捕され裁判にかけられるという事件が増えています。
 大連においても何名かの日本人が裁判にかけられて厳しい有罪判決を受けているようです。
 その内の一件では見知らぬ中国人から荷物を預かり、日本に運ぶよう依頼を受けたという事案であったようです。
 皆さん、メルボルン事件というのを御存知でしょうか。
 随分古い話になりますが、1992年にオーストラリアのメルボルン空港で日本人観光客が所持していた旅行カバンの中から約13キログラムものヘロインが発見されて、一行7人のうち5人がヘロイン輸入の嫌疑で逮捕され裁判にかけられました。
 そのまま身柄を長期間にわたって拘束され、2年後の1994年6月10日に判決の言渡があったのですが、なんと4人に対して懲役15年、残りの1人に対しては懲役25年(後に20年に変更されている)の厳しい実刑判決が下されました。
 この様なとんでもない事件に巻き込まれた日本人ツアーの一行は安い費用でオーストラリア旅行ができるということで喜びいさんでツアーに参加したのです。
 このツアーでは途中マレーシアのクアラルンプールで一泊することになっており、一行は到着後、街のレストランで夕食をとることになりました。ところがレストランで夕食中に車中に置いていた4人の旅行カバンが車ごと何者かに盗まれてしまったのです。そのため大騒動となったのですが、一行を案内していた現地のガイドが必死になって探しまわってくれた結果、ほどなくガイドからカバンが見つかったとの連絡が入りホッとしたのも束の間、カバンが引き裂かれて使用できない状態になっているということで、新しいカバンをガイドの方で用意してもらったのです。一行は親切に対応してくれたガイドさんに感謝しながら、新しいカバンをひっさげてオーストラリアに向けて出発したのです。
 恐るべきことに、一行が所持することになった新しい旅行カバンの中に大量のヘロインが何者かによって仕込まれていたのです。おそらく、一行に対して親切にふるまった現地ガイドとその仲間達によって仕組まれたものと思われます。
 彼ら日本人にとっては、全く身に覚えのないことであり、冤罪であるということが明白であったにもかかわらず有罪とされ、しかも懲役15年とか25年という厳しい実刑判決が言い渡されたことになります。
 オーストラリアという国家からみて彼等が日本人という外国人であることから警察での取調べや裁判において言葉が通じにくかったことや、通訳との意思疎通が充分でなかったことから満足な裁判活動ができなかったことも厳しい実刑判決の要因になっているものと思われます。
 その後、この裁判内容があまりにもひどいということから、日本の弁護士達が協力して国際的な支援活動を展開するまでに至っています。
 自分の所持しているカバンからヘロイン等の違法な物品が発見された場合、自分の知らないことだといくら弁明してもなかなか通用するものではありません。メルボルン事件で示されたように中国という日本からみて外国に当たる国においてはなおさらのことです。
 私自身、大連空港において搭乗手続をしている最中に、次の様な経験がありました。
 沢山の荷物を所持して、乳飲子をかかえた若い母親から、通関手続をする際に手荷物を預かってもらえないかという依頼があったのです。乳飲子が泣きさけんでいるために、つい預かってやろうかとの親切心が出かかったのですが、心を鬼にしてことわりました。預かった手荷物の中に、何が入っているか判らないからです。
 旅行中には、たとえ幼児づれの若い女性であっても、見知らぬ人からカバン等を預かって通関手続をしないようくれぐれも気をつけて下さいネ。

(2015年10月執筆)

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