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契約2023年11月10日 Jリーグのクラブライセンス制度に求められる透明性と公平性 執筆者:堀田裕二

1 2023年10月24日、日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)が2024シーズンのJ2及びJ3クラブライセンスの判定結果を発表した。その結果、J3からJ2を目指すFC大阪にJ2クラブライセンスが付与されないという判定がなされた。

2 そもそもJリーグにおけるクラブライセンス制度とはどのようなものであろうか。
 Jリーグは、現在はJ1からJ3までの3リーグあり、それらを総称してJリーグと呼ぶ。そして、その下位にJFL(日本フットボールリーグ)があり、更にその下位に地域リーグがある。そして、基本的にそれぞれのリーグ内での順位で上位になればさらに上部リーグに昇格することができ、逆に下位であれば下部リーグに降格するということになっている。

  しかし、ただ上位になれば上部リーグに昇格できるというのではなく、それぞれのリーグに入るための要件が存在する。Jリーグにおいては、まずはJリーグ百年構想クラブに認定される必要があり、その上で現在はJ1からJ3リーグの各クラブライセンスを取得する必要がある。

3 このクラブライセンス制度は、ドイツサッカー連盟がリーグ戦への参加資格審査制度を設けたものが最初であると言われており、その後ヨーロッパ(UEFA)に広がったものであるが、アジアでは、AFCがAFCチャンピオンズリーグ(ACL)の参加資格として2013シーズンから導入することを決め、加盟各国サッカー協会に同制度の整備を通達したものである。

  日本サッカー協会及びJリーグでも、これを受けて2012年2月1日にクラブライセンス制度が施行され、J1のクラブライセンスは基本的にこのAFCが各国に提示している制度概要に準拠した形となっている1

  AFCに準拠したJ1クラブライセンス交付規則では、競技、施設、人事組織、法務、財務の5分野56項目の審査基準項目が設けられており、J2・J3クラブライセンスも同様の交付規則となっている。

  今回、FC大阪は、J2クラブライセンス交付規則記載の競技基準のうち、U-10からU-18までのアカデミーチームを保有しないといけないという要件を満たしていないとしてJ2クラブライセンスが認められなかった 2

4 クラブライセンス制度については、発足当初はJリーグクラブの中でも赤字決算のクラブが多かったため、財務基準の中にある「3期連続の当期準損失を計上していないこと」という要件が注目されていた。しかし、その後Jリーグが各クラブへ配分金を均等に割り振ったことなどから、クラブの経営が比較的安定するようになり、結果的にこの基準違反でクラブライセンスを失うというような事態は生じていない。

  新たにクラブライセンスを取得する際には、スタジアムの要件などの施設基準を満たすことができるかどうかが問題となることが多くある。

  具体的には、スタジアムの要件について、入場可能人員がJ1であれば15,000人、J2であれば10,000人を上回っていることなどの要件があり、それ以外にも、トイレ(観客数1,000名あたり洋式トイレ5台以上など)や客席の屋根(観客席の3分の1以上を覆う必要)などの要件も存在することから、客席の大きなホームスタジアムを持たないクラブの大きなハードルとなっていた。

5 しかし、Jリーグでは、財務基準についてはコロナ禍で大幅な例外措置を認め、施設基準についても例外規定が設けられている上3、コロナ禍で例外規定の期間を延長する措置をとったため、財務要件や施設要件でクラブライセンス交付が認められないという事態は生じなかった。

  そのような中での競技基準(アカデミー)でのクラブライセンス不交付となったため、FC大阪は不満を募らせていると伝えられている 4
 

6 基準には時に例外が必要であり、柔軟な運用が必要な場合もあるが、基準を設けた以上、それが誰にでも明確であり、その運用が公平である必要がある5

  現在、Jリーグは、所属選手の多くが海外に移籍して活躍できるレベルになり、アジアでも注目されるようなリーグとなった。そして、春秋制から秋春制への移行が議論されるなど、世界基準に合わせるための検討も行われている。

  リーグを支える各クラブの要件を定めたクラブライセンス制度についても、より透明性、公平性のある基準、運用であることが求められる。

1 これに対し、「J2およびJ3クラブライセンス交付規則」は、「J1クラブライセンス交付規則」と連動しているものではなく、AFCのライセンス制度からも独立しているが、将来的にJ2、J3クラブがJ1昇格を目指すことを考えて、J1クラブライセンス制度における基準のレベル等がある程度意識できるように制定されている。
2FC大阪は、J2クラブライセンス交付規則における競技基準S.02「アカデミーチーム(U-15チーム)」が未充足のため、J2クラブライセンスは不交付となった(2024年から設置予定であった。)。ただし、J3クラブライセンス基準は充足しているため、J3クラブライセンスが交付された。
3J2クラブライセンスI.01公認スタジアム(3)②等
4J1クラブライセンスの交付判定については上訴機関が存在するがJ2・J3クラブライセンス制度については上訴の制度はない。
5J1クラブライセンスについては、Jリーグから独立した第三者機関であるクラブライセンス交付第一審機関(FIB)が交付判定を行っている。

(2023年10月執筆)

執筆者

堀田 裕二ほった ゆうじ

弁護士/アスカ法律事務所パートナー

略歴・経歴

【経歴】
平成17年10月 大阪弁護士会登録 アスカ法律事務所入所
平成23年 1月 アスカ法律事務所 パートナー

公益財団法人日本スポーツ仲裁機構 スポーツ仲裁人・調停人候補者
一般社団法人奈良県サッカー協会 常務理事
OCA大阪デザイン&IT専門学校eスポーツ学科 講師
日本スポーツ法学会理事・事務局長
大阪弁護士会スポーツ・エンターテインメント法実務研究会世話役
日本スポーツ協会スポーツ少年団協力弁護士等

【主な取扱い分野】
インターネット、コンピュータに関連する法律問題
スポーツ(eスポーツ含む)・ファッションビジネスに関連する法律問題

【書籍】
「eスポーツの法律問題Q&A」 (共著・eスポーツ問題研究会編)民事法研究会
「スポーツの法律相談」 (共著・菅原哲朗・森川貞夫・浦川道太郎・望月浩一郎 監修)青林書院
「発信者情報開示請求の手引」 (共著・電子商取引問題研究会編)民事法研究会
「スポーツガバナンス実践ガイドブック」 (共著・スポーツにおけるグッドガバナンス研究会編)民事法研究会
「スポーツ界の不思議 20問20問」 (共著・桂充弘編)かもがわ出版
「Q&A スポーツの法律問題(第4版)」 (共著・スポーツ問題研究会編)民事法研究会

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