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企業法務2021年03月31日 連載開始にあたり(2) 2030年、人権を実現できるビジネスをめざす ~ビジネスと人権に関する国連指導原則 そしてSDGsを追い風に~ 執筆者:和田勝

 二つ目は「中小企業憲章」です。
 中小企業にとって、個々の企業努力だけでは解決できない課題が多いのも事実です。
 課題を解決する為に、中小企業を軸とした抜本的な転換を図り、日本経済の新たな発展の為に提言したのが「中小企業憲章」でした。
 骨子は次の通りです。
① 中小企業で働く人たちが、経済的だけでなく、雇用や地域の活性や多様なサービスなどの中小企業の役割について誇りを持つ事と自身への振り返りを行う事。
② 国民全体が、中小企業の役割を理解し中小企業が正当に評価される社会にする事。
③ 中小企業が直面する不利な経営環境を是正していく事。
 7年間の運動の成果で、中小企業憲章は2010年6月18日に閣議決定しました。
 しかし、グローバル化する市場の中で、人間尊重経営を行う企業は、それを最優先とは考えない企業と、海を越えて競い合う事が出て来ています。
 自社の”人間尊重経営”の取り組みと合わせ、国の内外にわたる公正なルール環境づくりの為に、中小企業憲章を海外にも広げる必要を感じてきました。

3.なぜ、同友会はビジネスと人権やSDGsに関わったのか。

 そんな時に、2011年6月の国連人権理事会で承認された「ビジネスと人権に関する指導原則」を知り、私たちはその潮流に”共感”を覚えると同時に、この指導原則を学ぶ事でさらに同友会の理念を深化させる”必要性”を感じました。
 「ビジネスと人権に関する指導原則」の背景には21世紀に入り、それまでの先進国主導型の経済成長モデルに様々な問題が出て来た事が挙げられます。
 多国籍企業増加の一方で、安価な人件費を求めての新興国や途上国への進出という経済成長サイクルに限界が出て来た事。先進国を上回る新興国の経済成長とそれに伴う発言権の拡大。金融危機の発生と市場経済への信頼低下。タックスヘイブンを利用した利益操作への批判。地球温暖化への対応。気候変動の脅威 等々です。
 企業活動による労働者や環境等への影響について国を跨いだ視野に拡げ、生みだした付加価値の公正な配分が必要で、その為の秩序ある企業行動ルールが不可欠です。
 その基盤に人間尊重の経営と中小企業憲章がなりうるのではないかと考えました。
 他方、指導原則の柱の中の「企業の人権尊重責任」には「企業規模を問わず人権を尊重する責任が全ての企業に課される」とあります。
 人間尊重の経営を標榜する中小企業団体として、この指導原則を学ぶ事が必要です。

4.その関わりを踏まえこれから何を目指していくのか。

 国際社会の潮目は変わりだしていますが、まだ全ての中小企業に働く人が誇りを持ち、その役割を国民が正当に評価し、中小企業の不利が是正された社会にはなっていません。
 連載で、中小企業としてビジネスと人権、SDGsにどう取り組んでいるかの実例を紹介していきます。SDGsの17の項目に対して新たな取り組みをするのではなく、今行っている事を深め、検証する為のヒントにする事が大切だと思います。
 更なる展望を目指すには現場情報を基にした発想を総体でとらえていく必要があります。
 これからの連載に対しての皆様の鞭撻やご批判は、私たちの糧になります。
 宜しくお願いいたします。

(2021年2月執筆)

執筆者

和田 勝わだ まさる

(株)トータル・サポート取締役相談役

略歴・経歴

1977年 3月  明治大学政経学部卒業
1977年 4月~ 金融業・流通業に勤務
1997年 6月  保険代理店として独立
2000年10月  愛知中小企業家同友会入会
現在 (株)トータル・サポート取締役相談役
愛知中小企業家同友会 理事 政策委員長
中小企業家同友会全国協議会 政策副委員長

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