企業法務2023年07月31日 ビジネスと人権を考える 2030年、人権を実現できるビジネスをめざす ~ビジネスと人権に関する国連指導原則 そしてSDGsを追い風に~ 執筆者:青木義彦
私はソフト開発会社を40年営んで来ました。当時創業間もない小さな会社は顧客企業から、正しく評価されていませんでした。スタートアップ直後は、顧客から経費分は要らないだろうとハッキリ言われ、価格決定されていました。
多くの同業社が、勤務会社からスピンアウトして仲間と始めた会社でした。業界の社員も労働条件により会社を移ることのハードルが下がって来た時代だと思います。私の会社でも技術者の退職はありました。採用は基本的に中途採用で未経験者を採用後に教育することしか考えられない状況でした。会社の経営が安定しない要因のひとつでした。
同時に、1980年代は「派遣労働市場」が出て来たタイミングでした。大企業は社員の雇用を止めて、外部の派遣労働者へと切り替えて経費化を進めました。労働者も「新しい働き方」だと口々にし、派遣会社への就職を自ら選択する時代の始まりでもあったと思います。
こうした背景の下で小さな企業を経営していて、顧客から請負契約の発注価格について、派遣事業者の提示価格基準への値下げを要求されるようになっていきました。私の会社が社員への教育に費用をかけて育てることを考えていても、顧客企業はその費用分までをも価格を下げてきました。さらに、業界内の大手派遣企業が、不当に安い賃金で社員を雇い安い労働市場を創る時代になったと見ていました。残念ながら日本のIT技術者の労働市場が成長する過程では、労働者の人権より顧客の希望価格重視が当たり前だという状況でした。そんな中で小企業の経営を、派遣業では無く請負業を軸にして顧客からの受注を得ようとすることに困難を感じていました。
何時の時代でも、経営の手法として一面で「時代の流れに沿って」上手く経営する事が必須だと言われます。私も否定はしません。しかし、自分の過去を振返った時に言えるのは、上手な経営が社員や協力会社への無理強いの上に成立しているのは、美しくないと考えて経営して来たということです。私の業界は、上流も下流も見通せる業界なので、上手くやって急成長した例が多くあったと思います。
今、SDGsが言われて、働く労働者の人権が世界中で大きな意味を持って語られる様になっていますが、遠い世界で無く身近に常にあった問題だというのが私の認識です。そういう意味では1945年以降の新しい日本で、中小企業家が苦悩の中で1957年に中小企業家同友会を発足させた過程には、中小零細企業の労働者のみならず経営者自身の人権も社会的に認知されていなかったことも理由のひとつとしてあったのではないかと理解しています。
同友会の先達の皆さんが同友会理念の基礎を纏めた「労使見解」は、会社を経営者だけでなく、働く社員や周りの社会に果たす役割として考え、その経営の苦悩の中から10年以上に亘る議論研究を経て1975年に冊子として世に送り出したものだと言えます。
そんな「労使見解」の考え方が自分の経営の軸になってきたと改めて考えます。
(2023年6月執筆)
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執筆者
青木 義彦あおき よしひこ
株式会社サンテック 代表取締役
略歴・経歴
1954年08月 愛知県生まれ
1979年03月 名古屋大学理学部数学科卒業
1979年04月~1980年03月 県内高等学校講師
1980年04月 友人とソフトハウス開業
1982年07月 個人事業でフリーエンジニア
1985年07月 株式会社 サンテック 設立 代表取締役
現在に至る
同友会の会歴
2002年03月 愛知中小企業家同友会入会
2004年~2010年 労務労働委員長
2005年~2006年 愛知同友会海部津島地区会長
2008年~2009年 西尾張支部長(理事)
2010年~2014年 企業体質強化部門長副代表理事(5年間)
2015年~2017年 第49回中同協総会担当理事
2018年~2022年 全県課題対応副代表理事(5年間)
2023年 企業変革支援プログラム普及担当理事
現在に至る
その他社外役職
2002年05月~2022年05月 保護司(20年間)
株式会社サンテック
資本金 1,000万円
従業員数 74名
売上高 4.6億円
事業内容 組込みシステム・WEBサーバー・IOT開発ソフトハウス
住所 〒496-0915 愛西市本部田町宮ノ切105 ℡0567-32-1126
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