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企業法務2021年12月07日 中小企業経営と「持続可能な開発目標(SDGs)」(1) 2030年、人権を実現できるビジネスをめざす ~ビジネスと人権に関する国連指導原則 そしてSDGsを追い風に~ 執筆者:池内秀樹

1.はじめに

 本稿では、最近私が見聞きするSDGsと企業の関わりで感じることを述べたいと思います。
 私は、愛知中小企業家同友会という中小企業経営者の団体に奉職しています。中小企業経営者同士が学び合い、自らを高め、企業を変革すること、中小企業経営者同士の連帯により、地域や社会経済をより良く創っていくことが私たちの中小企業運動の目的です。そうした団体の専従職員ですから、私自身も日常的に会員経営者の皆さんとお付き合いをさせていただいています。その中で最近耳にすることの中に、どうにも引っかかることがあります。

2.パンダ化するSDGs?

 ある日、金融機関や保険会社、各種団体、行政が「持続可能な開発目標(以下、SDGs)」の積極的な推進に動いているという話を耳にしました。SDGsは、2015年の国連総会にて全加盟国の合意のもとで、2030年に目指すべき世界像から導き出した実現すべき政策目標です。そして成果を国連に結集すべく、いま国際的に進められている社会運動でもあります。市民、企業問わずあらゆるセクターの構成員に広く参画を呼び掛けるものですから、私が耳にしたような動きは当然と言えば当然です。しかしよく聞いてみると、そこで共通して言われているのは、SDGsのプラスイメージを企業や商品・サービスのイメージアップやブランド力の向上、あるいは新たな市場開拓に利用するという域が大半です。確かに、書店に出向けば類似の書物もあふれていますし、出版不況と言われて久しい中でも売れ筋テーマの一つのように見受けられます。
 中小企業だけでなく、日本の企業を取り巻く経営環境は、2020年1月からの新型コロナウイルス感染症の流行(パンデミック)に追い打ちをかけられ厳しさを増しています。そうした中で企業は新たな取り組みで活路を見出すことが確かに求められているわけですから、先ほど述べたような動きが盛んになるのも分かりますし、一定理解できるところもあります。しかし、どうも私にはSDGsを「お手軽に」あるいは「客寄せパンダ的に」組み込もうとしているように思えてなりません。個人的意見を許されるならば、少々厳しいかもしれませんが、これらは総じてSDGsの商業利用です。

3.世界を変える原動力は、振る舞いを変えること

 基本的にSDGsが「目指しているもの」に異を唱える人はいないでしょう。それは、SDGsが私たち自身が広く人類というくくりの中で直面している課題そのものだからです。ただし、現在さまざまな場面で話題に上り、私たちの目にしばしば触れるSDGsへの取り組みが、すべて正しい理解のもとで行われているのかと問われると、一部に疑問を禁じ得ないものがあることも事実です。
 現在、SDGsへの関わりについて取り組みを進めている企業事例の中には、「過去から現在」までの自社の取り組みを17の各目標とヒモ付けすることで「SDGsに貢献している」と主張しているものを多く見かけます。しかし、それはあくまでスタートラインに過ぎないことを自覚しなければならないのではないでしょうか。
 ロゴを貼るだけで終わらせる、あるいはSDGsの掲げる諸問題の核心に目を向けずにいれば、SDGsはこれまでの行動を肯定するための、単なる免罪符として利用されるだけです。私たち一人ひとりが正しく認識を転換させ、自省し、その振る舞いを変えないことには、社会や地球の状況はこれまでとは何も変わらない、ともすれば悪化の途をたどってしまうことでしょう。

中小企業経営と「持続可能な開発目標(SDGs)」(2)へ続く

(2021年9月執筆)

執筆者

池内 秀樹いけうち ひでき

愛知中小企業家同友会 事務局次長

略歴・経歴

兵庫県出身。修士(経済学)
大学院修了後、愛知中小企業家同友会事務局へ入局。
2018年より現職。
その他、県内大学の非常勤講師を兼職。

【刊行物】
・「『観光まちづくり』の成果と課題―由布院温泉・黒川温泉を実例として」(2007.03/共同執筆)『地域創成研究年報vol.02』pp.155-174.
・「東アジア視察報告―中小企業憲章の東アジア展開を展望して」(2013.12)『企業環境研究年報 No.18』pp.115-129.
・『岐路に立つ愛知県経済―地域経済の将来をどう展望するか』(2015/分担 担当第17章「中小企業の見地から考える、これからの地域産業政策の方向」)愛知労働問題研究所.

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