一般2016年05月24日 『中華人民共和国広告法(2015年改正)』の施行による外資企業への影響(後編) 中国律師(弁護士)が見た日系企業 一般社団法人日中法務交流・協力日本機構からの便り 執筆者:陳偉雄
3.外資企業に対する影響
今回の『中華人民共和国広告法』の改正による外資企業の広告活動への影響について、筆者の考えをまとめると、以下の通りとなります。
(1) 一部の広告の制限強化
① タバコ広告の全面禁止
改正広告法第二十二条では、タバコに関する広告が全面的に禁止されています。現在、中国では外資企業のタバコが販売されていますが、販売量はそれほど多くはありません。また、実際の生活でも、外資企業のタバコ広告はあまり見られません。中国のタバコ広告の禁止は、もともとあまり広告活動を行ってこなかった外資企業にとっては、ある程度プラスに働くかもしれません。
② 酒類の広告の制限
中国では、酒類に関する広告について、いろいろな制限があります。たとえば、改正広告法第二十三条には、酒類に関する広告の場合、酒を飲む動作を出してはいけない、車・船・飛行機など交通機器を運転する画面を出してはいけない、明示あるいは黙示で飲酒は緊張感・不安感を解消でき、体力を増加できるなどの効果があると宣伝してはいけない、などの制限条件を規定しています。
今の中国で放送されているビール(外国系ビールを含む)の広告の中に、飲酒運転などを宣伝する画面はないものの、ビールを飲む動作の画面がよくあります。さらに、ビールを飲む動作の画面だけではなく、ビールを飲む音も同時に放送されています。これを通じてビールのおいしさをアピールすることが目的だと思われますが、上述のとおり、酒類に関する広告には、酒を飲む動作を出してはいけないと規定されていますので、今後、外資系のビール広告の内容はこの規定と合致させなければならないと思われます。
③ 医療、薬品、保健食品の広告に関する規定
改正広告法第十五条から第二十条までは、医療と薬品、保健食品の広告に関する規定になっています。生活水準の向上に伴い、中国人の医療、保健などに対する要求はますます高まっています。また外国医療機関の医療水準、薬品の効果、保健食品の効果などがさまざまな面において中国より高い場合が多いため、外資系の医療機関、薬品、保健食品などの企業がどんどん中国に進出しています。こうした外国の医療機関、製薬会社、保健食品のメーカーや卸売会社などは中国で関連医療サービスや薬品、保健食品を提供するに当たり、当然ながら改正広告法の関連規定に注意しなければなりません。
たとえば、麻酔薬品、精神薬品などの特別薬品は、広告をしてはいけません(第十五条第一款)。その他の処方薬は、国務院の衛生行政部門と国務院の薬品監督管理部門に共同指定される医学・薬学の専門出版物でのみ広告できます(第十五条第二款)。また医療、薬品、医療機器の広告は、効果・安全性に関する断言あるいは保証をしてはならず、治癒率と有効率を説明してはいけません(第十六条)。そのほか、保健食品の広告は、効果・安全性に関する断言あるいは保証をしてはならず、病気の予防と治療機能を宣伝してはいけません(第十八条)。
(2) 広告用語の注意点
改正広告法第九条第三項には、『広告には、「国家級」、「最高級」、「最佳」などの用語を使用してはいけない。』と規定されています。そのため、外資企業が広告する場合、できるだけ「最高」、「首位」、「トップ」などの表現を使わないようご注意ください。
(3) ショートメッセージおよびメールによる広告
現在の中国では、携帯電話やメールアドレス宛に迷惑な広告ショートメッセージやメールがよく送信され、広告を受信した当事者は迷惑を被っています。これに対して、改正広告法第四十三条には、『当事者の同意を得ず、当事者に電子広告(ショートメッセージとメール)を送信してはならない。電子広告(ショートメッセージとメール)を送信する場合、送信者の真実の身分および連絡先を明示しなければならず、かつ広告の受信者に広告の受信を拒否する方式を提供しなければならない』と規定されています。
そのため、外資企業はショートメッセージとメールで広告を送信する時、上記規定を守らなければなりません。また、今後、電子広告(ショートメッセージとメール)に関する規制はますます厳しくなると思われます。
(4) インターネット広告
通信技術の発展に伴い、インターネット広告は急速に発展しています。ポータルサイトなど人気サイトを開けると、たくさんのポップアップ広告が見られます。ポップアップ広告がニュースなど閲覧したい内容を邪魔し、インターネットが使用しづらいと感じることも少なくありません。
改正広告法第四十四条には、『インターネットを通じて広告を配布、送信する場合、インターネット使用者のインターネット使用に影響してはならない。インターネットのサイトでポップアップ広告を配布する場合、クローズのマークを明確に標記しなければならず、すぐ閉じられるようにしなければならない』と規定されています。
現在、インターネット広告を利用する外資企業は少なくありませんが、今後、インターネットで広告をする場合は、上記の法律規定にご注意ください。
(5) 罰則の強化
改正広告法の罰則は旧法に比べ著しく厳格化されています。まず、罰金の金額が多くなりました。たとえば、虚偽広告の場合、旧法では広告費用の1倍以上5倍以下の罰金を科すと規定されていましたが、改正広告法は、広告費用の3倍以上5倍以下の罰金を科し、かつ広告費用を計算できないあるいは著しく低い場合、20万元以上100万元以下の罰金を科すと規定されました。
また、2年以内に3回以上、虚偽広告があった場合、処罰の金額が更に大きくなる以外に、営業ライセンスが取り消されるリスクがあります。
4.終わりに
改正広告法の内容は旧法と比べ、かなり大きく変化しています。全体から見ると、広告活動に対する規定が細かくなり、制限が厳しくなっていることが分かります。改正広告法の施行は広告活動に大きな影響を与える可能性がありますので、外資企業は改正広告法の内容に十分注意する必要があると思われます。
(2016年4月執筆)
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