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一般2026年03月30日 スポーツ団体に求められる「コンプライアンス」と「ガバナンス」 執筆者:多賀啓

 スポーツ団体向けのセミナーを担当させていただく際、各論に入る前に「コンプライアンス」と「ガバナンス」の位置付けを整理することをリクエストいただくことがあります。同様のタイトルのセミナーを実施したこともありますが、本稿ではその内容を概観したいと思います。
 「コンプライアンス」は、「法令(等)遵守」と訳され、法令、倫理、ルール等の規範を守り、逸脱しないことを意味し、現在においては馴染みのある言葉のように思います。また、スポーツ団体の運営に関する「ガバナンス」とは、スポーツ団体が健全に運営されるためのチェックやルールの仕組み全般をいいます。スポーツ団体におけるガバナンスの確保については様々議論がなされていますが、これが求められる場面がとても多いことから、ガバナンスという言葉の持つ意味が多義的に感じられることがあります(もちろん本稿も例外ではありませんが)。実際、スポーツ団体ガバナンスコード<中央競技団体向け>における原則は13あり、同コードに基づく適合性審査においては、43もの審査項目が存在し、役員構成、情報公開、不祥事対応、加盟団体との関係等、様々な場面においてガバナンスの確保が要請されています(スポーツ団体の果たす役割や機能の多さを踏まえると、実際には13の原則以外にも様々な場面が挙げられるでしょう)。

 筆者は、スポーツ団体におけるガバナンスの内容として重要なポイントは何か、と問われた際、①スポーツ団体の運営の相互チェック、②ルールに基づいた運営による円滑化、③不祥事(コンプライアンス違反)の予防・対応、の3つを挙げるようにしています。

 ①スポーツ団体の運営の相互チェック:外部監査・内部監査の実施のみを意味するものではなく、日常的な事務(特に問題が生じやすいのがお金の出入り・管理)に至るまで、チェック体制を備えておくことです。また、理事会や各委員会といった組織内の会議体が形式化していないか、構成員同士が互いの議論や検討プロセスをチェックし合うことも重要です。
 ②ルールに基づいた運営による円滑化:「これまでのやり方」といった慣習や事実上の運用に頼るのではなく、規程の整備やブラッシュアップを行い、誰が見ても明確なルールに基づいた円滑な運用を目指します。
 ③不祥事(コンプライアンス違反)の予防・対応:不祥事(コンプライアンス違反)を予防し、これが生じた場合の対応体制を整えることも、ガバナンスを考える上での重要なポイントの一つです。通報窓口制度、懲戒制度等を設ける上では規程の整備と機関の設置が必須です。また、予防との関係で最も重要となるのは、ステークホルダーに向けた研修・教育活動です。例えば、年何回は研修を実施する、数年スパンの研修計画を立てる、といった決め事をすることも、一つの仕組み作りのあり方といえます。

 上記を実行する上では、仕組み・ルールといった形を整えることだけでなく、個々の役職員が自身の役割を理解し、実践していく姿勢が不可欠です。ガバナンスの重要性を組織における共通認識化することが、ガバナンスを「実装」することにつながっていきます。
 ガバナンスの確保・実装を目指す上で、スポーツ団体における事務局機能や委員会機能ももちろん重要であるが、何に取り組むか、について最終的な意思決定を下すのは理事会(一部業務執行理事会に権限を委譲している場面もあると思います)です。経営陣である理事会が強いリーダーシップを持ち、各団体における制約の中で「今、何ができるか」を常に問い続ける姿勢が求められます。
 スポーツ団体において、人的・物的リソースが豊富にあるという団体は少数でしょう。完璧なシステムを一度に作ろうとするのではなく、実情を踏まえながら、組織における課題に取り組み続けることで、多くのステークホルダー、ひいては社会からの信頼を得られるものと考えます。

(2026年3月執筆)

(本記事の内容に関する個別のお問い合わせにはお答えすることはできません。)

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執筆者

多賀 啓たが ひろむ

弁護士(パークス法律事務所)

略歴・経歴

パークス法律事務所・弁護士
公益財団法人日本スポーツ仲裁機構 スポーツ仲裁人・調停人等候補者
第一東京弁護士会総合法律研究所 スポーツ法研究部会 部会長

学歴
2010年 首都大学東京都市教養学部法学系(現 東京都立大学法学部)卒業
2012年 首都大学東京法科大学院(現 東京都立大学法科大学院)修了

取扱分野
スポーツ法務、企業・団体法務、訴訟・仲裁その他紛争解決

著書
『スポーツの法律相談』(共著)青林書院(2017年3月)
『スポーツ事故対策マニュアル』(共著)体育施設出版(2017年7月)
『Q&Aでわかる アンチ・ドーピングの基本』(編著)同文館出版(2018年11月)
『法務担当者のための契約実務ハンドブック』(共著)商事法務(2019年3月)
『スポーツ事故の法的責任と予防 ~競技者間事故の判例分析と補償の在り方~』(編著)道和書院(2022年3月)
『これで防げる!学校体育・スポーツ事故 科学的視点で考える実践へのヒント』(編著)中央法規出版(2023年9月)
『実務対応 株式会社の清算手続における疑問点-解散・通常清算を円滑に進めるために』(共著)新日本法規出版(2024年1月)

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