一般2021年01月18日 スポーツ団体の法人化 執筆者:多賀啓
1 前回筆者が寄稿したコラム(一般スポーツ団体にも求められるガバナンス)で、「スポーツ団体ガバナンスコード〈一般スポーツ団体向け〉」について紹介しました。
今回は、このコードにおいて1つのキーワードとして言及されている「法人化」について見ていきたいと思います。
今回は、このコードにおいて1つのキーワードとして言及されている「法人化」について見ていきたいと思います。
2 「スポーツ団体ガバナンスコード〈一般スポーツ団体向け〉」の6つの原則のうち、原則1「法令等に基づき適切な団体運営及び事業運営を行うべきである。」においては、権利義務関係を明確化し、適正なガバナンスを確保する観点から、少なくとも公的助成(国や独立行政法人、地方公共団体等が、スポーツ関連活動の実施を支援するためにスポーツ団体に対して行う補助・助成のことを指す。)を受給する一般スポーツ団体1においては、可能な限り早期に法人格の取得に取り組むことが求められる、との補足説明がなされています。
ここでいう法人とは、公益(一般)財団法人・公益(一般)社団法人・特定非営利法人が想定されています。これらの法人としての法人格を取得することが、いわゆる「法人化」を意味します。
ここでいう法人とは、公益(一般)財団法人・公益(一般)社団法人・特定非営利法人が想定されています。これらの法人としての法人格を取得することが、いわゆる「法人化」を意味します。
3 一般に、スポーツ団体が法人化をするメリットとしては、社会的信用力が高まり、資金調達がしやすくなることや、個人ではなく法人名義で契約の主体となることができ、資産も法人名義で所有できること等が挙げられます。
もっとも、筆者は、スポーツ団体が法人化をするメリットについてはさらに実質的に考える必要があると考えています。上述したメリットのみの説明では、それらが当てはまらない、というスポーツ団体にとって法人化をする動機付けになりにくいからです。
それでは、法人化をするメリットを実質的に考えるとは、果たして何を意味するのでしょうか。
筆者は次のように考えています。つまり、法人化をすることにより、法律上設けられた仕組みを用いて団体運営を行うことになります。各種根拠法2を踏まえて定期的に理事会や社員総会(評議員会)を開催し、事業報告や計算書類を作成し公告・情報開示を行う場面が出てくるということです。この仕組みを活用し、団体運営における権限・役割や責任の所在を明確にし、内部・外部から運営をチェックすることで、適正なガバナンスの確保を図ることができることが、法人化をする上での最も重要なポイントであると考えます。
もっとも、筆者は、スポーツ団体が法人化をするメリットについてはさらに実質的に考える必要があると考えています。上述したメリットのみの説明では、それらが当てはまらない、というスポーツ団体にとって法人化をする動機付けになりにくいからです。
それでは、法人化をするメリットを実質的に考えるとは、果たして何を意味するのでしょうか。
筆者は次のように考えています。つまり、法人化をすることにより、法律上設けられた仕組みを用いて団体運営を行うことになります。各種根拠法2を踏まえて定期的に理事会や社員総会(評議員会)を開催し、事業報告や計算書類を作成し公告・情報開示を行う場面が出てくるということです。この仕組みを活用し、団体運営における権限・役割や責任の所在を明確にし、内部・外部から運営をチェックすることで、適正なガバナンスの確保を図ることができることが、法人化をする上での最も重要なポイントであると考えます。
4 他方で、先に述べた一般的なメリットの裏返しとして、法律上の各種手続を踏まなければならないことや情報公開が必要となることがデメリットとして挙げられることもあります。たしかに、必ずしも人的・物的リソースが豊富とはいえない一般スポーツ団体にとっては、法人化により、団体運営において踏まなければならないプロセスが増えることで運営の負担は増すでしょう。しかし、適正なガバナンスの確保を図るという大前提がありますし、法人化の有無にかかわらず、団体運営において適正なプロセスを踏む必要があることには変わりはない以上、これらの点はデメリットとして捉えるべきではないと考えます。
また、法人化に際しては法人設立のための費用がかかることや、団体としての税務申告義務も生じるなどの負担も生じますが、上記と同様の理由で、これらの負担があることから法人化を避ける、ということにはならないでしょう。
また、法人化に際しては法人設立のための費用がかかることや、団体としての税務申告義務も生じるなどの負担も生じますが、上記と同様の理由で、これらの負担があることから法人化を避ける、ということにはならないでしょう。
5 筆者がよく質問されるのが、法人化の即効性についてです。つまり、法人化をすることで、(ガバナンス体制の確保という意味で)すぐに目に見える効果は出るのか?ということです。法人格の取得により、もちろんその団体の法的な位置づけは変わりますが、それによって即ち適正なガバナンス体制を確保したことになるかと聞かれれば、必ずしもそうですとは答えにくいところです。というのも、ガバナンスの確保・体制の構築は地道な積み重ねが必要であり、構成員の教育や意識付けも重要となってくるからです。
スポーツ団体が、法人化を契機に、その枠組みを活用して発展していく、という姿勢を持つことが最も重要であり、それこそが適正なガバナンスの確保に向けた第一歩であると考えます。
スポーツ団体が、法人化を契機に、その枠組みを活用して発展していく、という姿勢を持つことが最も重要であり、それこそが適正なガバナンスの確保に向けた第一歩であると考えます。
1 「一般スポーツ団体」とは、スポーツ団体(スポーツ基本法第2条第2項における、スポーツの振興のための事業を行うことを主たる目的とする団体)のうち中央競技団体以外の団体と説明されています。
2 一般社団法人及び一般財団法人については一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(一般法人法)、公益社団法人及び公益財団法人については公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(公益法人法)、特定非営利活動法人(NPO 法人)については特定非営利活動促進法(NPO法人法)
(2021年1月執筆)
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執筆者
多賀 啓たが ひろむ
弁護士
略歴・経歴
パークス法律事務所・弁護士
東京都立大学法科大学院・講師
尚美学園大学スポーツマネジメント学部・講師
学歴
2010年 首都大学東京都市教養学部法学系(現 東京都立大学法学部)卒業
2012年 首都大学東京法科大学院(現 東京都立大学法科大学院)修了
取扱分野
スポーツ法務、企業・団体法務、訴訟・仲裁その他紛争解決
著書
『スポーツの法律相談』(共著)青林書院(2017年3月)
『スポーツ事故対策マニュアル』(共著)体育施設出版(2017年7月)
『Q&Aでわかる アンチ・ドーピングの基本』(編著)同文館出版(2018年11月)
『法務担当者のための契約実務ハンドブック』(共著)商事法務(2019年3月)
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