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その他2020年02月25日 仲裁自動応諾条項 執筆者:多賀啓

1. スポーツを巡る紛争を解決する手段として、スポーツ仲裁という手続きが存在し、日本においては、2003年に設立された公益財団法人日本スポーツ仲裁機構(JSAA)がこれを担っています1
スポーツ仲裁への途が開けていることは、スポーツを巡る紛争を解決する場が確保されること、競技者等の権利が守られることといった大きなメリットがあるほか、競技団体の決定に対して第三者のチェック機能が働いていることを意味しますから、競技団体の運営の健全化という観点からも重要な意義を持つものといえるでしょう。

2. スポーツ仲裁を行うにあたっては、申立人(競技者等)と被申立人(競技団体)との間の仲裁合意がなければなりません(スポーツ仲裁は、大きくはドーピング紛争に関わる仲裁とそれ以外の仲裁に分けられます。ドーピング紛争に関する仲裁においては基本的に仲裁合意は不要です2)。しかし、紛争が起こるたびに都度競技者等と競技団体との間で合意を形成してスポーツ仲裁を行っていくのでは、迅速な紛争解決が実現できません3。そこで、スポーツ仲裁規則4第2条第3項では、競技団体がその制定する規則において、競技団体の決定に対する不服についてスポーツ仲裁においてその解決を委ねる旨を定めている場合、仲裁合意がなされたものとみなすこととしています。この定めを仲裁自動応諾条項といいます。
JSAAは、仲裁自動応諾条項を採用している競技団体をウェブサイトで公開しています5。仲裁自動応諾条項を採用している競技団体は増加傾向にあり、上述したスポーツ仲裁が持つ意義からしても、望ましい傾向といえるでしょう。

3. ドーピング紛争に関する仲裁以外のスポーツ仲裁の類型としては、代表選考に関する紛争や懲戒処分に関する紛争が多く、その他には競技大会における成績に関する紛争等もあります。
ここで、一口に仲裁自動応諾条項といっても、スポーツ仲裁規程という形で独立した規程を策定している競技団体もあれば、例えば処分規程等において処分に対して不服がある者はスポーツ仲裁を申し立てられる旨を定める形を取っている競技団体もあります。そのほかには、競技団体の規程という形式ではなく、理事会決定を経てその議事録の記載でもって仲裁自動応諾条項としている競技団体もあります。
いずれにしても肝心なのは、各競技団体が、その仲裁自動応諾条項の対象となっているスポーツ仲裁の類型に「漏れ」がないようにすること、また、競技団体の関係者に対して、仲裁自動応諾条項を採用していることを含め、スポーツ仲裁制度や手続きについて周知徹底しておくことでしょう。

4. 2019年6月に、「スポーツ団体ガバナンスコード」が策定されました6。同コードは13の原則から構成されており、その原則11「選手、指導者等との間の紛争の迅速かつ適正な解決に取り組むべきである。」においては、「NFにおける懲罰や紛争について、公益財団法人日本スポーツ仲裁機構によるスポーツ仲裁を利用できるよう自動応諾条項を定めること」と定められています。
仲裁自動応諾条項について、これを採用していない競技団体がその採用を検討していくというだけではなく、既に仲裁自動応諾条項を採用している競技団体も、この機に、採用した仲裁自動応諾条項の対象となるスポーツ仲裁の類型が限定されるような規定の内容となっていないか、またその規程ぶり・周知方法が関係者にとって明確なものとなっているかを改めて確認し、必要があれば規程の改定や新設に取り組んでいくことが求められます。

1 http://www.jsaa.jp/sportsrule/arbitration/index.html
2 ドーピング紛争に関するスポーツ仲裁規則第4条 http://www.jsaa.jp/sportsrule/arbitration/03_Doping_180320.pdf
3 『スポーツの法律相談』菅原哲朗他監修(青林書院・2017年)150頁・151頁
4 スポーツ仲裁規則 第2条第3項 http://www.jsaa.jp/sportsrule/arbitration/01_rule_180320.pdf
5 http://www.jsaa.jp/doc/arbitrationclause.html
6 スポーツ団体ガバナンスコード
 https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/houdou/31/06/__icsFiles/afieldfile/2019/08/30/1417895_01.pdf

(2020年1月執筆)

執筆者

多賀 啓たが ひろむ

弁護士

略歴・経歴

虎ノ門協同法律事務所・弁護士
東京都立大学法科大学院・講師

学歴
2010年 首都大学東京都市教養学部法学系(現 東京都立大学法学部)卒業
2012年 首都大学東京法科大学院(現 東京都立大学法科大学院)修了

取扱分野
スポーツ法務、企業・団体法務、訴訟・仲裁その他紛争解決

著書
『スポーツの法律相談』(共著)青林書院(2017年3月)
『スポーツ事故対策マニュアル』(共著)体育施設出版(2017年7月)
『Q&Aでわかる アンチ・ドーピングの基本』(編著)同文館出版(2018年11月)
『法務担当者のための契約実務ハンドブック』(共著)商事法務(2019年3月)

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