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株式・株主総会2020年06月05日 コロナ禍における「会合」のあり方 ~会議、総会、そして裁判~ 執筆者:多賀啓

1 新型コロナウイルス感染拡大により、政府は、2020年4月7日に東京、千葉、埼玉、神奈川、大阪、兵庫、福岡の7都府県に、同月16日に全国に緊急事態宣言を発出しました1。この影響を受け、各企業や団体において、テレワークの導入が進められ、各種ソフトを利用したオンライン会議が実施されているところかと思います。これらは言うまでもなく、新型コロナウイルスの感染を予防するために採られている措置です。

2 6月のいわゆる「総会シーズン」にあたる現在ですが、各企業や団体は、今年の定時株主総会(定時社員総会・定時評議員会)の開催について悩ましいことが多々あるのではないでしょうか。というのも、株主総会では、みなし決議2により決議を省略する場合以外は、株主総会を物理的に開催する必要があるからです3。しかしながら、緊急事態宣言が解除されたとはいえ、当面はいわゆる三密を回避する必要があるでしょう。
新型コロナウイルス感染拡大の情勢を踏まえて、法務省は、「定時株主総会の開催に関しての解釈」を公表しました4。ここでは、新型コロナウイルス感染症に関連し、定款で定めた時期に定時株主総会を開催することができない状況が生じた場合には、その状況が解消された後合理的な期間内に定時株主総会を開催すれば足りると考えられることのほか、参考情報として、 議決権の行使方法として書面又は電磁的方法により議決権を行使することも会社法上認められていること(会社法第298条第1項第3号・第4号)や、いわゆるハイブリッド型の株主総会(株主に株主総会の開催場所での参加を認めるとともに、株主がオンラインで参加することも許容する方式の株主総会)5の運用方法についての情報を掲載しています。また、法務省と経済産業省は、「株主総会運営に係るQ&A」6を公開し、株主総会の招集通知等において、新型コロナウイルスの感染拡大防止のために株主に来場を控えるよう呼びかけることが可能である等の情報を提供しています。ただし、来場を控えるよう呼びかけるだけにとどまらず、来場を拒否することが可能とまでは解説されていません7
一般(公益)社団法人・一般(公益)財団法人については内閣府公益認定等委員会が8、NPO法人については内閣府が9、それぞれ総会や評議員会の運用についての情報を提供しています。
未曾有の事態とも言えるコロナ禍にあっても、決議に瑕疵があるとされないよう、株主総会(社員総会・評議員会)の運用は法令に基づいて行わなければなりません。まずは法令上のルールを正確に理解したうえで、現在官公庁から出されている指針等を取り入れていく必要があります。

3 話は変わりますが、新型コロナウイルス感染拡大は、裁判実務にも大きな影響を及ぼしており、各地で裁判期日が取り消される事態となっています10。2017年から、裁判手続等のIT化検討会11が裁判のIT化(オンライン化)を進めています。残念ながら、現在の裁判実務の大部分は新型コロナウイルス感染拡大により一時的にストップせざるを得ない状況となっていますが、改めて裁判のIT化(オンライン化)の導入の必要性を痛感している関係者も多いと思われます。裁判のIT化(オンライン化)については、まずは現行法のもと(法改正をせず)、裁判期日のオンライン会議方式の導入等を進めていくこととなります12

4 以下は、私の日々の雑感です。
私自身も、ここ最近は打ち合わせや研究会は専らオンライン会議で行うようになりました。幸いにして以前からオンライン会議のツールは使用することがありましたから、不都合を感じることなく打ち合わせ等を実施することができています。
ただ、人数が多くなると会議の進行が遅延することもあります。また、勤務している大学院でのオンライン講義を実施してみて、通常の講義よりもさらにはっきりと分かりやすい言葉遣いを心がける必要があり、私たち自身がオンライン方式に適応していくことが求められていることを実感します。
今後も、新型コロナウイルスの影響を受け様々な会議等をオンラインで実施することを余儀なくされるように思います。オンライン会議のツールがさらに広く普及することによって、物理的な会議場所を設定しないことから各種コストが抑えられることや、会議日程を入れやすくなるといったメリットを見いだすこともできます。オンライン方式のシンポジウムや研究会が活発化することにより従前よりも国内外を問わず参加できる人が増えるなど、オンライン方式を用いることによる可能性を最大限に活かしていくことが求められるのでしょう。

 本稿執筆時点(2020年5月28日時点)で、緊急事態宣言は全国で解除されている。
 会社法第319条第1項
 この点は一般(公益)社団法人・一般(公益)財団法人(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第58条1項・第194条1項)、
  NPO法人(特定非営利活動促進法第14条の9)等も同様。
 法務省「定時株主総会の開催について」
 現行法上は、株主総会の開催にあたって特定の場所を設定することとされていることから(会社法298条1項1号)、純粋なバーチャル型
  株主総会は認められないと解されている。
 経済産業省・法務省「株主総会運営に係るQ&A」
 もっとも、経済産業省は、令和2年5月22日に「株主の皆様へのお願い -定時株主総会における感染拡大防止策について-」において、
 「御自身を含む来場株主の健康への影響等を十分考慮いただき、原則会場への来場はお控えいただくようお願いいたします。」と呼びかけている。
 内閣府公益認定等委員会だより第93号例えばスポーツ競技団体等は、公益(一般)社団・財団法人の形態をとっている団体が多い。
 内閣府「新型コロナウイルス感染拡大に係るNPO法Q&A」
10 例えば、東京高等裁判所は、緊急事態宣言が行われた翌日の令和2年4月8日から同年5月末日までの民事裁判の期日を取り消す等
  の措置を採りました。
  https://www.courts.go.jp/tokyo-h/vc-files/tokyo-h/2020/01893_saiban_torikeshi_202004..pdf
  https://www.courts.go.jp/tokyo-h/about/osirase/minjikijitsutorikeshi/index.html
11 https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/saiban/index.html
12 裁判のIT化に関する状況については、LIBRA2020年1・2月号8頁以下等も参照。


(2020年5月執筆)

執筆者

多賀 啓たが ひろむ

弁護士

略歴・経歴

虎ノ門協同法律事務所・弁護士
東京都立大学法科大学院・講師

学歴
2010年 首都大学東京都市教養学部法学系(現 東京都立大学法学部)卒業
2012年 首都大学東京法科大学院(現 東京都立大学法科大学院)修了

取扱分野
スポーツ法務、企業・団体法務、訴訟・仲裁その他紛争解決

著書
『スポーツの法律相談』(共著)青林書院(2017年3月)
『スポーツ事故対策マニュアル』(共著)体育施設出版(2017年7月)
『Q&Aでわかる アンチ・ドーピングの基本』(編著)同文館出版(2018年11月)
『法務担当者のための契約実務ハンドブック』(共著)商事法務(2019年3月)

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