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一般2023年02月20日 スポーツ競技団体における「コンプライアンス委員会」の位置付け 執筆者:多賀啓

1 現在、多くのスポーツ団体(特に中央競技団体)が、いわゆるコンプライアンス委員会を設置し、または今後設置を検討しています。
本稿では、スポーツ団体におけるコンプライアンス委員会の位置付けを再確認したいと思います。

2 スポーツ団体ガバナンスコード<中央競技団体向け>は、その原則4においてコンプライアンス委員会について説明しています1。同コードによれば、コンプライアンス委員会の基本的な権限事項として考えられるものとして、コンプライアンス強化に係る方針や計画の策定及びその推進、実施状況の点検、リスクの把握等を挙げています。また、同コードは、コンプライアンス委員会の定期的な開催、委員として有識者(弁護士、会計士、学識経験者、スポーツ団体の実情等を十分に理解した者等)を配置し、女性委員を配置すること等も定めています。

3 コンプライアンス委員会は、常設の委員会として設置し、定期的に開催することが求められているといえるでしょう。逆に言えば、コンプライアンス委員会として求められる実質が備わっていれば、名称が必ずしも「コンプライアンス委員会」でなければならないということもないでしょうし、他の機能を持つ委員会(例えば、不祥事調査や裁定を担う委員会)がコンプライアンス委員会の機能を兼ねることも考えられるでしょう。
重要なのは、各スポーツ団体において、コンプライアンス委員会が中心となり、コンプライアンス・ガバナンス上の問題点を洗い出し、ステークホルダーと問題を共有する機会を継続して設けることです2

4 中央競技団体の加盟団体(例えば、都道府県の加盟種目団体)においても、同様に、コンプライアンス委員会に相当する委員会を設置する必要があります。スポーツ団体ガバナンスコード<一般スポーツ団体向け>3においては、コンプライアンス委員会のあり方に関する原則は定められていません。ただし、同コードの原則6では、「高いレベルのガバナンスの確保が求められると自ら判断する場合、ガバナンスコード<NF向け>の個別の規定についても、その遵守状況について自己説明及び公表を行うべきである。」とされており、一般スポーツ団体の自主的な判断で、コンプライアンス委員会に関するスポーツ団体ガバナンスコード<中央競技団体向け>原則4を遵守するということは考えられます。
他方で、人的物的リソースの問題から、有識者の配置等は実情として困難である団体も多いように思います。その場合は、少なくともコンプライアンス委員会の機能を担う機関の設置から始めてみることが重要と考えます。

5 コンプライアンス委員会の機能・役割の設定や、人員構成・配置等、要求される事項は多く、それらを全てクリアしていくことは容易なことではないでしょう。
重要なのは当該委員会の実質であり、スポーツ団体において、コンプライアンス強化は不祥事の事後対応のみを意味するものではなく、平時から取り組むべきことを改めて確認すること、また繰り返しになりますが、日常的なコンプライアンス・ガバナンス上の問題点を洗い出し、ステークホルダーと問題を共有する機会を設け、これを継続して実践していくことであると考えます。


1 スポーツ団体ガバナンスコード<中央競技団体向け>原則4
 https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/sports/mcatetop10/list/detail/1420887.htm
2 公益財団法人日本スポーツ仲裁機構 スポーツ競技団体のコンプライアンス強化委員会 スポーツ界におけるコンプライアンス強化ガイドライン「2. コンプライアンス強化のための組織基盤整備に関するガイドライン」45頁も同旨 https://www.jsaa.jp/ws/complianceindex.html
3 スポーツ団体ガバナンスコード<一般スポーツ団体向け>原則6
 https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/sports/mcatetop10/list/detail/1420888.htm

(2023年2月執筆)

執筆者

多賀 啓たが ひろむ

弁護士

略歴・経歴

パークス法律事務所・弁護士
東京都立大学法科大学院・講師
尚美学園大学スポーツマネジメント学部・講師
学歴
2010年 首都大学東京都市教養学部法学系(現 東京都立大学法学部)卒業
2012年 首都大学東京法科大学院(現 東京都立大学法科大学院)修了

取扱分野
スポーツ法務、企業・団体法務、訴訟・仲裁その他紛争解決

著書
『スポーツの法律相談』(共著)青林書院(2017年3月)
『スポーツ事故対策マニュアル』(共著)体育施設出版(2017年7月)
『Q&Aでわかる アンチ・ドーピングの基本』(編著)同文館出版(2018年11月)
『法務担当者のための契約実務ハンドブック』(共著)商事法務(2019年3月)

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