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相続・遺言2026年06月01日 不動産の有料引取サービス業について 執筆者:政岡史郎

 2021年(令和3年)に「不要な土地(負の遺産)からの解放」というテーマのコラムを掲載させて頂きました。土地を物理的に廃棄処分することは通常不可能で、また、「不動産の所有権放棄」という法制度が無い現状では、「この土地は要らないから、もう俺の物ではない!」と宣言しても、法律的な所有者であることの責任(納税義務・管理義務)はいつまでも付いて回ります。
 ただ、「先祖伝来の山林や田畑が地方にあるが利用価値はなく、誰も買ってくれない。自治体も貰ってくれない。相続人は誰も引き継ぎたくないし、子孫にも引き継がせたくないので、放棄したい。」というようなケースの場合には、家裁での相続放棄手続のほか、令和5年4月に施行された相続土地国庫帰属制度で国に引き取ってもらい、所有者としての責任を回避することができます。
 これは、「負担金を納めて不要な土地を国に引き取ってもらう」という制度なのですが、国の引き取り条件が結構厳しく、①相続(遺贈)で引き継いだ土地でなければダメ、②更地でなければダメ、③他人の通行権や抵当権が付いていたらダメ、④隣人と境界を確定させていないとダメ、⑤土地に埋設物があったり、崖地であったり、土壌汚染等のリスク要因があったらダメとなっており、この時点で多くの土地がふるいに掛けられてしまいます。ちなみに、引き取りが認められる場合の負担金は土地一筆当り最低20万円で、地域・面積によって更に高額になる可能性があります。
 通常、「要らない土地」(負の遺産)というのは「利用が困難」「売却できない何かしらのリスク・デメリットがある」ため、多くの土地が上記制度の申請すらできないのではないかと思いますが、データとしては、令和5年4月から令和8年3月までで申請件数が約5200件、国に帰属したのが約2600件ということで、制度利用は伸びていない印象です。

 そのような状況下で、世の中のニーズと国の制度の狭間を狙った新たなビジネスが生まれています。それが「不動産の有料引取サービス」です。
 様々な法人や個人が行なっているようで、業界の実態・実数は不明ですがネットで相続土地国庫帰属制度を検索すると先に民間のHPが表示され、「相続土地国庫帰属制度よりも安く土地を手放せます」というような売り文句でアピールする会社もあります。
 このサービスの仕組みは、相続土地国庫帰属制度と同様、土地所有者からお金を貰い、代わりに土地の所有権を譲り受けるというものです。土地とお金をセットにして業者に譲る仕組みなので売買契約をするわけではなく、つまり、業者側にはいわゆる不動産業者(宅建業者)としての資格、免許(国や自治体への登録)、保証金の供託も必要ではありません。明確な監督官庁もありません。
 そのため、悪質な業者に騙されて、原野商法で取得した土地の相続人が第二の被害に遭ってしまうこともあります。私が数年前に相談を受けたのは、地方の別荘地を処分したがっていた相談者が業者に巧みに騙され、数十万円の費用を業者に払い、自己名義の別荘地は確かに業者の名義になっていたものの、なぜか他の別荘地を買わされたことになっていて、結局、同じ別荘地の別区画の土地の所有者にさせられていた事件がありました。相談を受けて業者を調べたら、既に業者の事務所は無くなっていました。他にも、「売却のために測量が必要と言われて費用を払ったものの、実際には測量をせずに業者が逃げてしまい、結局、損をしただけ」というケースもよく耳にします。
 国土交通省によれば令和8年1月時点で「不動産の有料引取サービス」をネットでうたう事業者は70社以上あるようですが(東京新聞令和8年3月12日記事より)、HPすらない業者は信用性が低いと考えるべきでしょう。事業者の多くは「不動産の有料引取サービス」だけに特化しているわけではなく、賃貸不動産の管理やリノベーション事業、通常の仲介事業を手掛けています。引き取った土地に宿泊施設を開発している会社もあります。その意味で、経営実態がしっかりしている会社もあるようですが、上記の通り、資格も免許も要らない新業種のため、窮状に付け込んで人を騙す悪質な業者も多くいるようです。
 そのため、「不動産の有料引取サービス」を利用する場合には、信頼できる業者なのかという目線を持ち、業者の実態(事務所の実在、固定電話の有無、経営実績、HPの口コミ等)をしっかり確認しつつ、「言われるがまま書類にハンコを押したりしない」「明確に理解してリスクが無いことを確認できるまで決断しない」という姿勢が必要です。無用なトラブルに巻き込まれないよう、周囲の人間や専門家に相談することを心がけていただければと思います。

(2026年5月執筆)

(本記事の内容に関する個別のお問い合わせにはお答えすることはできません。)

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執筆者

政岡 史郎まさおか しろう

弁護士

略歴・経歴

  H7  早稲田大学卒業、小田急不動産(株)入社
  H13 同社退社
  H17 司法試験合格
  H19 弁護士登録・虎ノ門総合法律事務所入所
  H25 エータ法律事務所パートナー弁護士就任

著書
「ある日、突然詐欺にあったら、どうする・どうなる」(明日香出版社 共著)
「内容証明の文例全集」(自由国民社 共著)
「労働審判・示談・あっせん・調停・訴訟の手続きがわかる」(自由国民社 共著)
「自己破産・個人再生のことならこの一冊」(自由国民社 校閲協力)

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