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民事2021年06月16日 消費者裁判手続特例法見直しのゆくえ(1) 執筆者:井田雅貴

1 消費者庁では、現在、消費者裁判手続特例法等に関する検討会(以下、「検討会」という。)を開催している。令和3年3月24日に第1回検討会が開催され、現在(令和3年6月4日時点)、第5回検討会まで開催されている。
筆者は、これまで何度も、消費者裁判手続特例法(以下、「特例法」という。)に関する原稿を書いてきた。ただ、初見の方のために改めて述べると、特例法の特徴は、特定適格消費者団体が、事業者の不当な行為により生じた財産的被害を集団的に回復するための制度であり、平成25年に創設され、同28年10月から運用されている。
特例法の手続対象となるのは、同法運用後の消費者契約が対象である。
制度の担い手である「特定適格消費者団体」は、適格消費者団体の中から認定され、令和3年3月1日時点で3団体が認定されている。
特例法に基づく訴訟提起は、令和3年3月1日時点で5件なされている。
特例法制定時の付帯決議には、施行後3年を経過した時点で内容について検討を加え、必要があれば見直す、とあることから、検討会が開始されたものである。
2 特例法に規定する訴訟手続は2段階に分かれる。
1段階目は、事業者の共通義務(金銭支払義務)を確認する手続、同段階で事業者の共通義務が認められれば、2段階目で個別債権者の債権額を確定する手続、となっている。特定適格消費者団体が、いずれの段階においても関与し、個別消費者への金銭分配まで実施するという、わが国の法制度上、極めてユニークな制度である。
もっとも、すべての消費者契約が特例法の対象となるのではなく、消費者契約に関する金銭支払義務のうち、①契約上の債務の履行の請求、②不当利得に係る請求、③契約上の債務の不履行による損害賠償の請求、④不法行為に基づく民法の規定による損害賠償の請求、の4つの事案に限られている。しかも、損害として「拡大損害、逸失利益、人身損害、 慰謝料」は除かれている。
このように、特例法を利用できる事案が限られているうえ、共通義務を確認できる損害の内容も限定されている。加えて、特定適格消費者団体は、第2段階で、個別消費者からの授権を経て事業者から金銭を受領し、個別消費者に金銭を分配しなければならず、同消費者からの授権を経る前提として、本訴訟の結果を通知・公告する、等、手続的負担も相当である。
3 特例法に基づく訴訟提起が5件であることは上記のとおりである。手続が十分機能しているか否かは評価が分かれるところであろう。
ちなみに、全国の消費生活センターに寄せられる相談につき、令和元年の実情は下記のとおりである。
消費者が事業者から請求された又は契約した金額である「平均契約購入金額」は98万5000円、消費者が実際に支払った金額である「平均既支払額」が38万2000円、である。
また、消費者被害・トラブルの経験があると認識し、その内容を具体的に回答した人のうち、相談・申出をした人の割合が44.8パーセント、誰にも相談・申出をしていない人の割合は45.4パーセントであり、更に、相談・申出をした相手が誰かについて、消費生活センター等は8.6パーセント、弁護士等の専門家は2.1パーセント、消費者団体は1.4パーセントとなっている。係る調査結果に鑑みれば、個別消費者が、事業者に対して金銭を支払ったことに疑問を持ちつつも、具体的に係る意思を表明していないことが窺える。この、消費者が具体的な不満の意思表明をしていない理由の1つに、紛争となっている金額が少額であることも含まれるであろう。
筆者は、特例法に基づく訴訟手続がもっと活用されれば、係る現状にも変化が生じる、と考えている。
4 事業者側が、特定適格消費者団体から返金の申入れを受けた後、任意に返金に応じた例もある。その理由は、特例法に基づく訴訟提起を嫌気したことも含まれるであろう。このため、一概に、訴訟件数でのみ特例法の効能を論じるべきでない、とも評価できる。
しかし、消費者に周知される程度に制度が活用されなければ、個別消費者の被害回復にはなお十分でない。特例法に基づく上記訴訟制度に「目詰まり」の要素があるか否か、また、目詰まり解消のために何が必要か、検討会での実態を踏まえた議論が待たれるところである。
(2021年6月執筆)

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執筆者

井田 雅貴いだ まさき

弁護士(弁護士法人リブラ法律事務所)

略歴・経歴

出   身:和歌山県 田辺市
昭和63年:京都産業大学法学部法律学科入学
平成 4年:京都産業大学法学部卒業
平成 7年:司法試験合格
平成 8年:最高裁判所第50期司法修習生
平成10年:京都弁護士会 谷口法律会計事務所 所属
平成14年:大分県弁護士会登録変更 リブラ法律事務所 所属
平成16年:弁護士法人リブラ法律事務所に改組

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