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民事2022年08月09日 景品表示法改正のゆくえ(1) 執筆者:井田雅貴

1 消費者庁は、現在、景品表示法検討会(以下「検討会」という。)を開催している。
  検討会は、景品表示法が、平成26年に法改正が行われて一定の期間が経過したこと、デジタル化の進展等、社会環境の変化等を踏まえ、消費者利益の確保を図る観点から必要な措置について検討するために開催されている。
  検討会では、検討にあたっての視点として
(1)景品表示法を取り巻く社会環境の変化への対応
(2)厳正・円滑な法執行の確保及び不当表示等の早期是正等のための方策
(3)その他
 を挙げている。
  検討会は、本原稿作成時までに4回開催され、第4回検討会では、検討会における今後の方向性を示した。内容は下記のとおりである。
  1.効率的かつ重点的な法執行の実現
  ①悪質事業者への対策➡違反行為を繰り返した事業者に対する課徴金算定基準、特商法等との連携等
  ②自主的な早期是正・再発防止措置の導入➡確約手続(改善計画)等
  2.デジタル化等の社会状況の変化への対応
  ①国際化への対応➡書類送達規定、海外当局との協力等
  ②消費者を誤認させるおそれのある表示への対応➡ステルスマーケティング等
  3.消費者利益の回復の充実等
  ①消費者利益の回復策➡確約手続(再掲)、課徴金制度に係る自主返金制度
   (電子マネー等の活用)等
  ②執行体制整備・連携➡都道府県との連携、特定適格消費者団体等との連携等
  4.中長期的な検討課題 供給主体性 ダークパターン等
  検討会は、令和4年内に意見を取りまとめる予定、とのことである。つまり、早ければ、来年初頭から始まる国会において、景品表示法の改正がなされる可能性がある。
2 今後の方向性として示されている点はいずれも重要なテーマであるところ、検討会が「確約手続」を重点的に検討すべき事項と考えていることが看取できる。
  確約手続とは、独占禁止法違反の疑いがある事業者の事業活動について、公正取引委員会と事業者が合意して独占禁止法上の問題を自主的に解決する手続である。TPP11協定(環太平洋パートナーシップに関する包括的かつ先進的な協定)の発効に伴い導入された制度といわれている
  公正取引委員会は、通常、独占禁止法違反の疑いがある事業活動の調査を行い、違反行為が存在すると判断したとき、事業者に対して「処分内容」を事前通知し、意見聴取手続を経て、排除措置命令や課徴金納付命令をなしている。これに対して確約手続は、公正取引委員会が、事業者に対して、調査開始後に「独占禁止法違反の疑いがある行為」を通知することを契機として、①事業者がかかる行為を改善するための計画を自主的に作成してこれを公正取引委員会に示し、②公正取引委員会が、当該計画が十分かつ実施可能な内容と認めて当該計画を認定し、③公正取引委員会が、係る事業者の行為を独占禁止法違反と認定しないまま、事業者による当該計画の履行を待つ、という制度である。確約手続は、公正取引委員会と事業者が、独占禁止法違反が疑われる行為について、協調して早期解決するという点に特徴がある。
  確約手続は、計画を策定した事業者が真摯に当該計画を履行すれば、公正取引委員会と事業者の双方にとって意義がある制度である(事業者が係る計画を履行しない場合は計画認定が取り消されることもある)。実際、確約手続の導入後、同制度が利用された例も複数ある。
  確約手続が、とりわけ事業者にとって受け容れやすい制度であることは事実であるし、独占禁止法違反の疑いがある行為が早期に是正できることは取引秩序維持の観点からも望ましい。
  ただ、当該手続のみで、事業者がなす景品表示法違反行為の是正が進むわけではなく、既存の制度をより活用しやすくすることでこれを実現することも検討すべきである。この意味で、検討会が示す方向性として、特定適格消費者団体との連携を明示していることは評価できる。今後、連携の具体的内容が議論されることとなる。筆者は、特定適格消費者団体が、消費者庁、国民生活センター及び地方公共団体に対し、その有する一定の情報の開示を求めることができる制度の創設は極めて重要であると考えている(改正前消費者裁判手続特例法第91条第1項、第92条第1項)。引き続き、検討会の議論内容を確認していく次第である。
(2022年8月執筆)

執筆者

井田 雅貴いだ まさき

弁護士(弁護士法人リブラ法律事務所)

略歴・経歴

出   身:和歌山県 田辺市
昭和63年:京都産業大学法学部法律学科入学
平成 4年:京都産業大学法学部卒業
平成 7年:司法試験合格
平成 8年:最高裁判所第50期司法修習生
平成10年:京都弁護士会 谷口法律会計事務所 所属
平成14年:大分県弁護士会登録変更 リブラ法律事務所 所属
平成16年:弁護士法人リブラ法律事務所に改組

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