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民事2022年12月12日 景品表示法改正のゆくえ(2) 執筆者:井田雅貴

  筆者は、前回、消費者庁で開催されている景品表示法検討会での議論状況をお伝えした。
  景品表示法検討会は、令和4年11月29日までに8回実施され、第8回検討会では今後の議論の方向性について示された。つまり、景品表示法の改正内容について具体的な方向性が示されたものである。
  以下では、第8回検討会で示された主な議論を紹介する。
1 確約手続の導入
  独占禁止法で定められている確約手続(行政機関が、調査開始後に、違反の疑いのある行為の概要等について調査対象事業者に通知し、この通知を受けて調査対象事業者が違反の疑いのある行為を排除するための措置の計画を作成・申請し、行政機関が当該計画を十分・確実なものとして認定すれば行政処分が行われないこととなる手続)を導入する方向性が示されている。
  検討会では、確約手続の導入に賛成する意見として“迅速な不当表示の是正・早期の被害拡大防止”“事業者の自主的な取組の推進”の他に、事業者が定める計画の中に消費者への返金措置をも含めることで、消費者被害の回復にも資する、という意見も出ている。
  他方、景表法に確約手続を導入するにあたっては、手続の対象となる事案を限定しないと、却って違反事例に対する執行力が弱くなる、同種の不当表示行為への抑制とならないという意見、事業者が計画として策定する返金措置の位置付けに関する意見(返金措置を制度として位置づけるか等)、認定された確約計画について公表することの要否に関する意見(公表に消極的な意見もある)、確約計画が履行されなかった場合の措置に関する意見(独占禁止法では認定された計画の取消しがありうる)、が出されている。
  確約手続の存在は、行政機関や事業者側にとって柔軟な対応が可能となる結果、迅速な対応が期待できる反面、同手続の対象範囲を無制限とすれば、制度設計によっては行政機関の執行力が一気に弱まることが懸念される。筆者は、認定された計画は特段の事情がない限り公開すべきであると考える。
2 返金措置の促進
  事業者が消費者に対し、自主的に返金する措置を執ることを促進する観点から、電子マネー等の金銭以外の支払手段も可能とする方向性が示されている。また、利用される支払手段は現金と同等の価値代替性を有するものに限定される必要がある、という方向性も示されている。
  筆者は、係る方向性に賛成である。とりわけ、価値代替性を確保することは重要である。
3 違法行為に対する抑止力の強化
  ⅰ)一定期間内に違反行為を繰り返し行った事業者に対しては、通常より高い算定率を用いて課徴金額を算出する規定をおくこと、ⅱ)違反行為を行った事業者が消費者庁の調査に応じず資料を提出しないなど、売上額等の課徴金の計算の基礎となるべき事実を把握することができない場合に備え、課徴金の計算の基礎となるべき事実を把握できない期間に係る推計規定を整備すること、ⅲ)名称を変えて繰り返し違反を行うような悪質事業者に対応する観点から、実質的な違反行為者と目される役員等の自然人に供給主体性・表示主体性が認められる場合には、当該役員等を「事業者」と認定して措置命令及び課徴金納付命令の対象とするなどの運用上の工夫をすること、が示されている。
  筆者は、いずれの方向性にも賛成である。とりわけⅲ)については、いわゆる黒幕である個人が名称を変えて事業を実施するあるいは別の主体(別団体)に属しつつ同様の不当表示を繰り返すことが十分予想されること、特定商取引法では特定個人(役員等)に対しても行政処分を科すことが可能となっていること、消費者裁判手続法の改正により係る黒幕的存在の人物も被告とし得ること、から制度化が可能であると考える。
4 適格消費者団体との連携
  特定適格消費者団体との連携を進めるため、消費者裁判手続特例法91条(特定適格消費者団体への協力等)に、景品表示法を加えてはどうか、との方向性が示されている。
  特定適格消費者団体が共通義務確認訴訟を提起するか否かを検討するにあたり、行政機関が景表法違反により事業者を処分する際に作成した書類を確認できることは、適正な権限行使に資するものであり、賛成である。
(2022年11月執筆)

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執筆者

井田 雅貴いだ まさき

弁護士(弁護士法人リブラ法律事務所)

略歴・経歴

出   身:和歌山県 田辺市
昭和63年:京都産業大学法学部法律学科入学
平成 4年:京都産業大学法学部卒業
平成 7年:司法試験合格
平成 8年:最高裁判所第50期司法修習生
平成10年:京都弁護士会 谷口法律会計事務所 所属
平成14年:大分県弁護士会登録変更 リブラ法律事務所 所属
平成16年:弁護士法人リブラ法律事務所に改組

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