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民事2021年12月15日 消費者被害の防止・回復のための特定商取引法の改正・預託法の抜本改正 ~消費者被害の防止及びその回復の促進を図るための特定商取引に関する法律等の一部を改正する法律~ 令和3年6月16日公布 法律第72号 法案の解説と国会審議 執筆者:木村歩

1.法案の提出と成立

特定商取引に関する法律(以下「特定商取引法」という。)及び特定商品等の預託等取引契約に関する法律(注:今回の改正により、題名が「預託等取引に関する法律」に改められた。)(以下「預託法」という。)については、消費者の脆弱性につけ込む悪質商法が後を絶たないこと、特に「販売預託商法」によって大きな消費者被害が発生している状況にあること等を踏まえ、消費者庁は、法改正を視野に制度の在り方について検討を開始することとし、令和2年2月から「特定商取引法及び預託法の制度の在り方に関する検討委員会」が開催された。同年8月19日には、同検討委員会において報告書がまとめられ、それが今回の法改正の基となっている。報告書の内容は、その後、法案として取りまとめられ、令和3年の通常国会に提出された(第204回国会閣法第54号)。
法案は、衆議院で一部修正された後(電子メール等によるクーリング・オフに発信主義を採用、契約書面の電子化に係る規定の施行を1年延期、契約書面の電子化に係る検討条項の追加)、参議院で可決され、第204回国会中のうちに成立した。

2.法改正の概要

【特定商取引法の改正】
(1)通販の「詐欺的な定期購入商法」対策
○ 定期購入でないと誤認させる表示等に対する直罰化
○ 上記の表示によって申込みをした場合に申込みの取消しを認める制度の創設
○ 通信販売の契約の解除の妨害に当たる行為の禁止
○ 上記の誤認させる表示や解除の妨害等を適格消費者団体の差止請求の対象に追加
(2)送り付け商法対策
○ 売買契約に基づかないで送付された商品について、送付した事業者が返還請求できない規定の整備等(改正前は消費者が14日間保管後処分等が可能 → 改正後は直ちに処分等が可能に)
(3)消費者利益の擁護増進のための規定の整備
○ 消費者からのクーリング・オフの通知について、電磁的方法(電子メールの送付等)で行うことを可能に(預託法も同様)
○ 事業者が交付しなければならない契約書面等について、消費者の承諾を得て、電磁的方法(電子メールの送付等)で行うことを可能に(預託法も同様)
○ 外国執行当局に対する情報提供制度の創設(預託法も同様)
○ 行政処分の強化等
【預託法の改正】
(1)販売預託の原則禁止
○ 販売を伴う預託等取引を原則禁止とし、罰則を規定
○ 原則禁止の対象となる契約を民事的に無効とする制度の創設
※ 預託等取引契約:3か月以上の期間にわたり物品の預託を受けること及び当該預託に関し財産上の利益の供与を約するもの
※ 例外的に認める場合には、厳格な手続の下、消費者庁が個別に確認
(2)預託法の対象範囲の拡大
○ 預託法の対象の限定列挙の廃止 → 全ての物品等を対象に
(3)消費者利益の擁護増進のための規定の整備
○ 行政処分の強化等
【消費者裁判手続特例法の改正】
○ 被害回復裁判に資するために、特定適格消費者団体に対し、特定商取引法及び預託法の行政処分に関して作成した書類の提供を可能に

3.国会論議の概要

ここでは、国会での委員会審議の中から今後の解釈運用・将来的な制度改正に関わり得る主な質疑を幾つか紹介することとしたい。なお、紹介する質問と答弁(担当大臣、消費者庁職員の答弁)は、いずれも、発言そのままではなく、趣旨をまとめたものである。
〇 通信販売における詐欺的な定期購入商法への対策について
→ 通信販売に係る契約の申込みを受ける最終段階の表示において、定期購入契約において重要な要素となる商品や役務の分量、価格、引渡時期及び代金の支払い時期等を表示することを販売業者等に義務付け。
  これらを表示しない、不実の表示をする、又は人を誤認させるような表示をすることを禁止し、これに違反した場合には罰則の対象。
  販売業者等が、通信販売に係る契約の申込みの撤回又は解除を妨げるため、契約の解除に関する事項や契約の締結を必要とする事情に関する事項について不実のことを告げる行為を禁止し、これに違反した場合には罰則の対象。
  消費者がそのような表示によって誤認をして申し込んだ場合に、申込みの意思表示の取消しを認める制度を創設。
〇 特定商取引法第12条の6第2項の「人を誤認させるような表示」について
→ 定期購入契約において、最初に引き渡す商品等の分量やその販売価格を強調して表示し、その他の定期購入に関する条件を分かりにくいような小さな文字で表示する場合や、目立たない場所に設置されたリンクから移るページにしか表示していない場合などが該当。
〇 通信販売の契約の解除の妨害に当たる行為の禁止について
→ 具体的に想定される事例としては、契約を解除するために連絡をしてきた消費者に対して、販売業者等が、実際には特段の条件なく解約ができるにもかかわらず、事実に反して、定期購入契約になっているので残りの分の代金を支払わなければ解約はできないなどと告げる行為や、販売した商品について、その商品は今使用を中止すると逆効果になるなどと告げる行為などが該当。
〇 送り付け商法の規制について
→ 売買契約が存在しないのに商品を一方的に送付し売買契約の申込みをする行為は、何ら正常な事業活動とみなされず、正当性のない行為。一方的に送りつけた商品について代金を支払わなければならないと誤認させて代金を請求するような行為は、一種の詐欺行為。
  今回の改正では、消費者は一方的に送りつけられた商品を直ちに処分等をすることができるようにし、これにより、消費者は、送り付けられた商品の代金を支払わなくてはならないのではないかといった不安から解放される。悪質事業者は、送り付けた商品の代金や送料に相当する額を損することになるため、送りつけるインセンティブを失うことになる。送りつけ商法による消費者被害の未然防止等に資する制度。
〇 送り付け商法により送り付けられた商品の所有権の所在について
→ 所有権は、憲法上認められた財産権の主要なものであるため、贈与や売買契約といった所有権者の意思表示なくして、ある者の所有権を剥奪し、他者に与えるという法的論理構成については、極めて慎重な検討が必要。
  一方で、消費者が送り付けられた商品をどう扱っていいか分からないという不安定な状況や、もしかすると送り付けた者から返還請求をされるのではないかという心配を払拭する観点から、特定商取引法の制定当時、消費者が頼んでもいないものを一方的に販売業者が送り付けた場合は、一定の期間経過した後は、その販売業者は商品の返還を請求することができないと規定することとした。
  販売業者は、商品の返還を請求することができないということになると、その反射的効果として所有権も主張できなくなり、所有権が移転したときと法律効果としては差異は生じないものとなる。そのため、商品の送付を受けた者は自由に当該商品の処分などをすることができるということになる。
  なお、処分には、廃棄するだけではなく、使用や売却することも含まれており、この解釈は現行法でも既に定着している。
〇 契約書面の電子化に関する立法事実について
→ 新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のために、社会や経済のデジタル化が必要となる中で、消費者の利便性の向上のニーズに応えるとともに、デジタル技術を活用して消費者利益の保護を図る必要がある。
  また、紙よりも、デジタル技術を活用して必要な情報を保存、閲覧し、やり取りする方が、より便利であると感じる国民も増えているのではないか。
  このような消費者ニーズの変化はまさに今回の制度改正の立法事実であり、契約書面等の電子化には、消費者にとって、書類の保管が容易になる、拡大、縮小などの閲覧がしやすいといったメリットもある。また、電磁的方法でのクーリング・オフも可能とし、非対面での解約も可能とすることで、消費者保護も更に手厚いものとしている。
  そのため、今回、特定商取引法等において、消費者のニーズを踏まえたデジタル化にも対応する制度改革を行うもの。
〇 契約書面の電子化に係る承諾の実質化について(政省令等への委任)
→ 消費者からの承諾の取り方については、実際には消費者から承諾を得ていないにもかかわらず承諾を得たなどとする行為を排除することが極めて重要。
  そのため、政省令等を策定するに当たっては、少なくとも今考えているものとしては、まず、後になって承諾を取ったかどうかが分からないということにならないよう、口頭や電話だけでの承諾は認めないこととし、電子メールなどの電磁的な方法か紙での承諾しか認めないことが考えられる。
  この際、例えばオンラインで完結する取引は電子メールで、それ以外の分野については当面紙で消費者からの承諾を取らなければならないようにし、控えの交付も義務付けることが考えられる。また、オンラインで完結する取引についても、消費者被害を発生させる悪質事業者の活動が顕著に見られるものもあるので、消費者被害を発生させる蓋然性の低いオンライン完結型の取引については電子メールでの承諾を認めるということも一案として検討していきたい。
  また、消費者が承諾をしたことを事業者に明示的に確認させることも重要だと考えており、そのためには、消費者から明示的に承諾に関して返答や返信を事業者にしなければ承諾があったとはみなさないことも考えられる。その観点から、勧誘の流れで対面での販売などにおいて、そのタブレット上で承諾のチェックを入れさせることを認めないこととし、対面できちんと紙による承諾を得ることが原則とすることが適当ではないかと考えられる。
  さらに、消費者から承諾を得る際に、電子メールなどで提供されるものが契約内容を記した重要なものであることや、電子メールなどで契約書面等を受け取った時点がクーリング・オフの起算点となることを明示的に示すことも重要。加えて、デジタル機器に不慣れなお年寄りの方が事業者の言われるがままに本意ではない承諾をしてしまったりしないような仕組みも必要だと考えている。
  そのためには、契約の相手方が高齢者の方々の場合には、家族などの契約者以外の第三者(親族、後見人のほか、ヘルパーなど日常的関わりのある第三者も含む。場合によっては複数。)にも承諾に関与させる、家族などにもメールを送らせることなどによって安易に承諾を得られないようにすることで消費者被害の発生を抑止できるのではないかと考えている。
  法案が成立した暁には、オープンな場で広く意見を聴取する検討の場を設けるとともに、消費者相談の現場にいらっしゃる相談員の方や、デジタル技術に通じた専門家の方々などから丁寧に意見を伺って、それらを十分に踏まえながら消費者の承諾の実質化や電磁的方法による提供の具体的な方法の在り方を検討してまいりたい。
〇 契約書面等の記載事項を電磁的方法により提供することに加えて書面の交付を認めることについて
→ 契約書面等の記載事項を電磁的方法により提供することに加えて書面の交付を認めることは、クーリング・オフの行使期間の起算点が不明確になるおそれがあるなど、法的安定性の観点から適切とは言えない。
  ただし、消費者が一旦、契約書面等の記載事項の電磁的方法による提供について承諾をした場合でも、その後、電磁的方法による提供がされる前であれば、原則どおり、契約内容が記載された書面の交付を受けることができるよう、政省令等で必要な細則を整備していくことを検討。
〇 外国執行当局に対する情報提供制度の創設の趣旨について
→ 国境をまたぐような越境的な電子商取引については、その取引規模が拡大しており、外国の販売業者等と日本の消費者のトラブルについても増加している中で、外国執行当局との情報交換がますます重要になってきている。
  これを踏まえ、消費者庁から外国執行当局へ情報を提供するとともに、外国執行当局との間で相互主義を確保し、外国執行当局からも情報の提供を受けられるようにするという観点から、この制度を新設。
〇 特定商取引法における行政処分の実効性の強化
→ 具体的には、業務停止命令を受けた法人等の役員等に対して、新たに法人を設立して業務を開始することなどを禁止する業務禁止命令の対象となる役員等について、業務停止命令の日前60日以内に役員等であった者から1年以内に役員等であった者にその期間を延長するほか、業務禁止命令の対象となる役員等が命令前から既に命令の対象となる業務と同一の業務を行っている場合等においてもその業務を停止できるように命令の対象範囲を拡大するといった措置を講じている。
〇 消費者裁判手続特例法における特定適格消費者団体に対する情報提供について
→ 特定適格消費者団体の求めに応じ、当該団体が被害回復裁判手続を追行するために必要な限度において、消費者庁が当該団体に対して、改正後の特定商取引法及び預託法に基づく行政処分に関して作成した書類で、内閣府令で定めるものを提供することができる。
  具体的に提供する書類については内閣府令で定めるが、現段階では消費者庁が行った行政処分の処分書等を想定。
〇 預託法全面改正の趣旨について
→ 販売預託については、これまでも大規模な消費者被害が発生しており、その取引自体に消費者被害を引き起こす側面がある。その理由としては、販売代金の支払いという形式で消費者から金銭の出捐を元本保証又は類似するものと誤解させた上で行わせるとともに、新規の契約者への物品の売買代金で既存の契約者に供与を約した配当を支払うことが一時的に可能であることなどが考えられる。また、販売の対象となる物品などが存在しないことが発覚しづらいことも考えられる。
  もっとも、改正前の預託法は、預託等取引を中心とした規制であり、販売については、その勧誘のみに関する規定にとどまっていた。
  こうしたことを踏まえて、抜本的な改正として、販売預託を原則として禁止することとした。
〇 販売預託の「確認」の方法について
→ 販売預託の確認は、契約の勧誘等の段階及び契約の締結等の段階のそれぞれにおいて、内閣総理大臣が確認を行う。
  まず、契約の勧誘等の段階においては、内閣総理大臣は、売買契約に係る物品等の価額、預託等取引契約によって供与される財産上の利益の金額等の事項を審査し、これらが適正であると認めるときでなければ確認をしてはならない。
  次に、契約の締結等の段階においては、内閣総理大臣は、個別の契約の内容が勧誘等の確認を受けた事項に整合しているかなど、消費者利益の保護に欠けるおそれがないかを確認し、これらに問題があれば確認をしてはならない。
  また、それぞれの段階において、内閣総理大臣が確認をしようとするときはあらかじめ消費者委員会の意見を聴くこととし、確認に万全を期すこととしている。
〇 改正後の預託法において、USBに入れずにデータを預託するケースが対象かどうか
→ 今回の改正は、物品に関する政令指定制を廃止し、全ての物品が適用対象。規制の潜脱を防止する観点から、物品の利用に関する権利、引渡請求権その他これに類する権利についても適用対象。
  自らが所有する物品の預託のみならず、当該物品に含まれる内容等の預託についても、物品の利用に関する権利、引渡請求権その他これに類する権利に該当し得る。したがって、個別の事案によるものの、電子データを預託した場合においても、USBに含まれる内容等の預託として適用対象となり得る。

4.今後について

法案の可決の際、参議院の「地方創生及び消費者問題に関する特別委員会」で附帯決議がなされており、国会審議で頻繁に問われた契約書面の電子化について、「消費者の承諾の要件を政省令等により定めるに当たっては、消費者が承諾の意義・効果を理解した上で真意に基づく明示的な意思表明を行う場合に限定されることを確保するため、事業者が消費者から承諾を取る際に、電磁的方法で提供されるものが契約内容を記した重要なものであることや契約書面等を受け取った時点がクーリング・オフの起算点となることを書面等により明示的に示すなど、書面交付義務が持つ消費者保護機能が確保されるよう慎重な要件設定を行うこと」「高齢者などが事業者に言われるままに本意でない承諾をしてしまうことがないよう、家族や第三者の関与なども検討すること」と盛り込まれている。
これに関しては、令和3年7月30日に消費者庁に設置された「特定商取引法等の契約書面等の電子化に関する検討会」において検討が進められており、「消費者からの承諾の取り方」「電磁的方法による提供の在り方」が主な検討事項として挙げられ、令和4年春ごろを目途に取りまとめを行うこととされている。今後、政省令に委任された事項や関連するガイドライン等の内容がどうなるか注目される。
(2021年12月執筆)
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