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企業法務2020年09月11日 企業統治等に関する規律の見直し ~会社法の一部を改正する法律・会社法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律~ 令和元年12月11日公布 法律第70号・第71号 法案の解説と国会審議 執筆者:高澤和也

1.法案の提出と成立

 会社法の企業統治に関する規律は、平成26年に成立した改正法によって強化が図られていたが(同法は、平成27年5月に施行)、その後、東京証券取引所において「コーポレートガバナンス・コード」の運用が開始され、情勢に変化が見られるようになったこと等を受け、規律の更なる見直しについての議論が行われるようになった(例えば、公益社団法人商事法務研究会の会社法研究会における議論)。
 上記の改正法に、企業統治に係る制度の在り方についての更なる検討等を求める検討条項が置かれ、その年限が改正法の施行後2年と定められていたこともあり、平成29年2月には、法務大臣から法制審議会に対し、企業統治等に関する規律の見直しについての諮問がなされた。
 審議会では、会社法制(企業統治等関係)部会が設置され、議論が行われた。平成30年2月には「中間試案」が、平成31年1月には「要綱案」が部会から示され、同年2月、審議会において要綱案が原案どおり決定され、大臣に答申された。
 この答申を踏まえて立案された法律案は、令和元年10月の臨時国会(第200回国会)に提出された(閣法第10号・第11号)。国会審議においては、株主提案権の濫用的な行使を制限するための措置を一部削る修正が行われ、同国会中に成立した。

2.法改正・新法の概要

 会社法の一部を改正する法律
〔施行期日:公布の日(令和元年12月11日)から起算して1年6月を超えない範囲内において政令で定める日(下記(1)①・(3)④は、公布の日から起算して3年6月を超えない範囲内において政令で定める日)〕
(1) 株主総会に関する規律の見直し

① 株主総会資料の電子提供制度の創設
 定款の定めにより、取締役が、事業報告等の株主総会資料をウェブサイトに掲載して株主に提供し、請求をした株主に対してのみ当該資料を書面により交付することができるようにする。

② 株主提案権の濫用的な行使を制限するための規定の整備
 株主が議案要領通知請求権を行使して提案することができる株主総会の議案の数について、10を上限とする旨を規定する。
※ 政府が提出した段階では、上記のほか、次の内容も定められていたが、衆議院における修正で削られた(民法の権利濫用の一般法理との関係を整理すべき、より明確な規律にすべき等の議論があった。)。

 次のいずれかに該当する場合には、株主は、議案を提案することができないこととする。
・ 株主が、専ら人の名誉を侵害し、人を侮辱し、若しくは困惑させ、又は自己若しくは第三者の不正な利益を図る目的で議案を提案する場合
・ 議案の提案により株主総会の適切な運営が著しく妨げられ、株主の共同の利益が害されるおそれがあると認められる場合

(2) 取締役等に関する規律の見直し

① 取締役に対する報酬等の付与や費用の補償などに関する規定の整備
・ 上場会社等の取締役の個人別の報酬、賞与等について、株主総会で決定されない場合につき、取締役会に対し、その決定方針を定めることを義務付ける。また、株式等を取締役の報酬等として付与する場合の株主総会の決議事項に、株式等の数の上限などを加える。
・ a)役員等がその職務の執行に関し責任の追及等を受けたことにより要する費用等について株式会社が当該役員等に対して補償する契約を締結すること、b)株式会社が会社役員賠償責任保険(D&O保険)に加入することについて、利益相反性があり得ることから、締結・加入に必要な手続規定等を整備する。
② 上場会社等における社外取締役の設置の義務付け等
 一定の状況下では業務執行を社外取締役に委託し得ることとするとともに、上場会社等(公開会社かつ大会社である監査役会設置会社で、その発行する株式について有価証券報告書の提出義務を負うもの)に社外取締役の設置を義務付ける規定を設ける。

(3) 社債の管理等に関する規律の見直し

① 社債管理者よりも裁量が限定された「社債管理補助者」制度を新設し、関連する規定を整備する。
② 完全子会社とする場合以外でも、株式会社が他の株式会社を子会社とするために自社の株式を当該他の株式会社の株主に交付することができる制度(株式交付制度)を設ける。
③ 議決権行使書面の閲覧謄写請求の拒絶事由を明文化する。
④ 会社の支店の所在地における登記を廃止する。
⑤ 成年被後見人又は被保佐人に係る取締役の欠格条項を廃止する。

 会社法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律

〔施行期日:一部を除き、会社法の一部を改正する法律の施行日(令和元年12月11日から起算して1年6月を超えない範囲内において政令で定める日)〕

(4) 商業登記法に、株式交付による変更の登記についての規定を設ける。
(5) 会社の支店の所在地における登記の廃止に伴い、商業登記法その他の法律の関係規定を整備する。
(6) 社債、株式等の振替に関する法律に、振替株式を発行する会社は株主総会資料の電子提供措置をとる旨の定款の定めを設けなければならない旨の規定を設けるとともに、株式交付の対価として株式交付親会社が交付する株式が振替株式であるときの規定等を整備する。
(7) 会社更生法等において社債管理補助者についての規律を定める規定を整備するとともに、更生会社は、更生計画の定めるところによらなければ株式交付をすることができない旨の規定等を整備する。
(8) 一般社団法人における社員総会等の招集の通知に際して必要となる資料の提供について、株主総会資料の電子提供制度に関する規定と同様の規定を整備する。
(9) 相互会社の取締役会に取締役の報酬の決定方針を定めることを義務付ける規定等を整備する。
(10) 一般社団法人の役員等がその職務の執行に関し責任の追及等を受けたことにより要する費用等について一般社団法人等が当該役員等に対して補償する契約を締結するための手続を定める規定を整備する。
(11) 投資法人が発行する投資法人債等について、社債管理補助者制度と同様の制度を設ける。
(12) 法人の登記申請手続においてあらかじめ印鑑の提出を義務付ける規定を削る。

3.国会論議の概要

 ここでは、国会での委員会審議の中から今後の解釈運用に関わり得る主な質疑を幾つか紹介することとしたい。なお、紹介する質問と答弁(法務省民事局長の答弁)は、いずれも、発言そのままではなく、趣旨をまとめたものである。

【株主総会資料の電子提供(2.(1)①)関連】

○定款の定めにより、電子提供のみを認め、書面交付請求を排除することの可否
→ 定款の定めによっても排除できない。新規に設立する会社であっても、同様(第200回国会 衆・法務委員会議録第9号 6ページ、同第11号 2ページ)
〇電子提供を受ける株主に対して配当を上乗せすることの違法性
→ 配当については、株式数に応じて割り当てなければならないとされており、そういった規定に違反する可能性(同第11号 2ページ)

【株主提案権の制限(2.(1)②)関連】

〇議案要領通知請求権を行使して行う提案権について制限を設ける一方で、議場における提案権(会社法第304条)には制限を設けない理由
→ a) 取締役会設置会社では、招集通知に記載された目的事項(議題)以外の事項について決議できないこと、b) 議案の修正動議の範囲も目的事項から一般的に予見し得る範囲を超えられないと解されていること、c) 議場における提案の態様等によっては、その議案や修正動議を取り上げなければならないものではないと解されていることから、議場における提案権の制限の必要性は大きくない(第200回国会 衆・法務委員会議録第9号 7ページ)
○10を超える議案が提出され、それに順位付けがない場合に、10になるように選択する際の基準
→ あらかじめ株主取扱規程等で定めておくことができる旨を法務省令に規定する予定。それが恣意的な判断を許さない合理的な内容であれば、その内容に従って議案を決定可能(同第11号 4ページ)
〇10を超える議案を提出し、会社が一部の議案について議案要領通知をしない場合に、その議案の選択が不当であるとして争う場合の方法
→ 議案要領を招集通知に記載することを求め、又は株主総会の決議や株主総会の開催を禁止することを求める仮処分の申立てをすること等が考えられる(同第9号 8ページ)

【取締役の報酬等の決定方針(2.(2)① )関連】

〇取締役会が定めるべき方針の内容
→ 例えば、報酬等の種類ごとの比率、業績連動報酬等の有無・内容、再一任、任意の報酬委員会の設置などが含まれると考えられる。具体的には、省令に委任しており、引き続き検討(第200回国会 衆・法務委員会議録第11号 2ページ)
〇報酬等の決定方針の株主総会での説明義務
→ 決定方針は、総会決議で報酬等についての定めがされた後に、その内容に基づいて決定するものであり、その総会の時点ではまだ存在しない。そのため、当該総会での説明義務は課していない。ただ、その総会決議の議案について賛否を決定する上で重要な情報として、予定している決定方針の内容も説明することが求められる(同第11号 13ページ)

【社外取締役の設置の義務付け(2.(2)② )関連】

○社外取締役の兼務についての法令上の問題
→ 兼務自体は禁止していない。もっとも、社外取締役にはその役割・責務を果たす上で善管注意義務があり、過剰な兼務でその役割・責務を適切に果たせなくなる場合には、善管注意義務との関係で問題が生じ得る(第200回国会 参・法務委員会会議録第9号 3ページ)
〇事故等で社外取締役が欠けた場合の取締役会決議の有効性
→ 次の候補者の擁立等の手続を遅滞なく進めた結果、合理的な期間内に社外取締役が選任されたときは、その間にされた取締役会の決議を含めて取締役会決議は無効にならない(同第9号 11ページ)
〇2つの会社が相互に社外取締役を派遣し合うことの是非
→ 親子会社関係があるとかいうことがない限りは許容(第200回国会 衆・法務委員会会議録第9号 18ページ)

【「社債管理補助者」制度(2.(3)① )関連】

〇社債管理補助者の資格として法務省令で定める内容
→ 破産手続等をする権限や、契約に定める範囲内で社債に係る債権の実現を保全するために必要な裁判上・裁判外の行為をする権限等を有することとなることを踏まえ、弁護士及び弁護士法人とする予定(第200回国会 衆・法務委員会議録第11号 14ページ)

【「株式交付」制度(2.(3)② )関連】

〇産業競争力強化法の「株対価買収」との違い
→ ①「株対価買収」では事業再編計画等につき主務大臣の認定が必要だが、「株式交付」では不要。また、②「株対価買収」では債権者異議手続は不要だが、「株式交付」では必要。その他、③「株対価買収」は、既存の子会社の株式を買い増す場合や、外国会社を対象会社とする場合でも利用可能(「株式交付」は利用不可)(第200回国会 衆・法務委員会議録第9号 12ページ))

【成年被後見人等に係る取締役の欠格条項の削除(2.(3)⑤ )関連】

〇成年被後見人が取締役を辞任する場合の手続
→ 就任については、後見人が代わって就任の承諾をすることを定めているが、辞任についてはそうした定めはなく、①被後見人が辞任の意思表示をする方法と、②後見人が代わって辞任の意思表示をする方法が考えられる。ただ、①は取消し可能であるため、効力を確定的に生じさせるには②(第200回国会 衆・法務委員会議録第11号 5ページ)
〇業務執行における後見人の同意の要否
→ 後見人の同意を得ずに取締役の職務を遂行したとしても、取消しはできない。一旦就任した以上、後見人が職務執行に関与することは想定していない(同上)
〇善管注意義務の軽減
→ 成年被後見人が取締役に就任した場合でも、軽減されない(同第11号 6ページ)

4.今後について

 まずは、法務省令に委任された事項の内容がどうなるか、注視する必要がある。また、取締役の報酬等に関する再一任の規律の要否や、社外取締役の兼任状況の情報開示の在り方など、実務の動向を注視しながら引き続き検討すべきと指摘された課題もあり、今後の法改正に向けた議論についても、注意を払っていくことが適当である。

(2020年7月執筆)

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