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労働基準2020年11月10日 外国人労働者の相談を受けて考えること 執筆者:冨田さとこ

私はいま今年7月に開設された多機関が同居して外国人の在留支援に当たる「在留支援センター(Foreign Residents Support Center(FRESC、フレスク))」の中で、法テラス本部国際室の一員として、外国人への法的支援に携わっています。新型コロナウイルスによる影響は、当然在留外国人の生活も直撃し、解雇や雇止め、生活苦などの相談が毎日フレスクに寄せられています。同じような相談を受けることも多く、回答がパターン化することもある中で、日本の法的支援制度等を踏まえて、考えさせられている類型が2つあります。
1つは、「雇用主が在留資格の更新のための書類を用意してくれません。私の在留資格を更新するためには雇用主のサポートが必要です。在留期限はすぐそこに迫っているのに、会社は私を辞めさせようとしています。」という相談です。
話をよく聞くと、透けて見えるのは、勤務先の業績が悪化しているものの、適正な整理解雇の手続を踏まずに人を減らそうとしている雇用主側の実情です。政府がコロナ対策のために雇用調整助成金を積極的に支給する中で、整理解雇の要件を満たすことは難しいという判断も背景にはあるのかもしれません(そこまで考える雇用主であれば早期退職を広く募ることくらいはしそうですが)。在留資格更新に必要な書類を用意せずに労働者を日本にいられなくするというのは、労働者が在留資格に依って立つ外国人であることを利用して、日本人労働者に対してはおよそできない解雇を行うものです。
在留資格がなくなってしまえば日本から出国する他なく、それまで築いてきた日本での生活の本拠を失ってしまいます。実質的な解雇であると証明できれば、他の一次的な在留資格への変更で在留期間を延ばしながら次の仕事を探すこともできるため、相談者には、会社とのやりとりを証拠に残しつつ、求職活動を始めるようにとアドバイスします。
一方で、そこに至るまでにも休業手当や残業代を支払われていない等のひどい扱いを受けてきたケースもあります。訴訟で解雇無効を争えるのに、「いまの雇用主は諦めて次を探せ」とアドバイスをするのは「(労働法制による保護は諦めて)泣き寝入りしろ」と言っているのに等しく、上記のようなアドバイスをする際には、「あなたの解雇はおかしいけど、それを一人で解決するのは無理だと思う。あなたに伴走して権利を守ってくれる弁護士を探した方がいい」とも励まします。ただ、最終的に本人負担となる日本の法律扶助制度のもとでは、費用の説明で相談者が躊躇することも少なくありません。
もう1つ悩む類型は、他の人がいる前で罵倒されたという相談です。「毎日のように、バカとか、アホとか言われました。お前に給料を払っている意味がない。国へ帰れとも言われました。日本で働きたいと思って一生懸命勉強したのに、自信がなくなりました。帰りたいです。」こんな相談をよく聞きます。技能実習生をはじめとする現業系の労働者を支援する人たちに聞いても「「バカ、アホ、国へ帰れ」は、みんな言われているね」という答えが帰ってきます。
こういった衆人環視の中で自尊心を潰すような叱り方をするのは、日本ではよく目にする光景です。多数の人が働く職場で、自分のデスクの前に部下を呼び出し、みんなの前で部下を罵倒し、なじる上司。辱めて反省させる「教育的指導」。これは、他の多くの国では受け入れがたい扱いのようです。私はネパールで働く際に、海外で働いたことのある先達から教えられました。「みんなの前で詰ったりしてごらん。プライドを潰されたとずっと恨まれるよ」。
確かに、考えてみれば、部下に何か注意したいときに、みんなの前で言う必要もなければ、人格否定的な言葉が具体的な行動の改善に繋がることもありません。こちらは希望的な観測になりますが、外国人労働者が更に増えていく中で、彼らが日本のおかしな労働環境について指摘することで、私たちは、自分たちが当たり前だと思っていた職場文化を見直し、より合理的な気持ちのよい職場環境を作っていけるのかもしれません。
(2020年11月執筆)

執筆者

冨田 さとことみた さとこ

弁護士

略歴・経歴

【学歴】
1999年(平成11年)4月 東京都立大学法学部 入学
2002年(平成14年)11月 司法試験合格
2003年(平成15年)3月 東京都立大学 卒業(法学士)
2003年(平成15年)4月 司法研修所(57期)入所、2004年(平成16年)9月 同所修了
2013年(平成25年)9月 Suffolk大学大学院(ボストン) 入学
2014年(平成26年)12月 同大学院修了(社会学刑事政策修士(Master of Science Crime and Justice Studies))

【職歴】
2004年(平成16年)10月 桜丘法律事務所(第二東京弁護士会)
2006年(平成18年)10月 法テラス佐渡法律事務所(新潟県佐渡市、新潟県弁護士会所属)
2010年(平成22年)3月 法テラス沖縄法律事務所(沖縄県那覇市、沖縄弁護士会所属)
2012年(平成24年)10月~ 桜丘法律事務所に弁護士登録を戻す(第二東京弁護士会)(現在まで)
2015年(平成27年)9月 国際協力機構(JICA)ネパール裁判所能力強化プロジェクト(カトマンズ、ネパール)
2018年3月~ 日本司法支援センター(法テラス)本部(東京)
広報・調査室長、犯罪被害者支援課長を経て現在は事務局長付

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