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人事労務2019年12月23日 不妊治療を行っている女性社員への配慮は必要? 女性社員の労務相談 執筆者:小西華子(弁護士)

Q 女性社員Aから、不妊治療中なので配慮してほしいとの申告がありました。会社は、Aに対して、どのような配慮をしなければならないのでしょうか。

A 不妊治療中の女性社員に対する配慮について定める法律や通達は現時点では存在しません。
しかし、不妊治療中の女性にも働き続けて活躍してもらうためには、他の社員との公平性も念頭に置きつつ、可能な限り、女性社員に配慮した対応を行うことが望ましいでしょう。

解 説

1 マタハラの対象

マタハラ(ハラスメント言動のほか、妊娠・出産・育児休業等を理由とする解雇などの不利益取扱いを含みます。)の対象となるのは、あくまで妊娠中・産後の女性社員、子どもを持つ社員です。
不妊治療中の女性社員に対する配慮を定めた法律や通達は現時点では存在せず、不妊治療は「マタハラ」の対象にはなりません。
では、本問のような場合に、会社は、「配慮の必要はない」と突っぱねることができるのでしょうか。また、果たしてそのような対応が会社として望ましいものなのでしょうか。
不妊治療の通院のための休暇を取れないなどの理由で不妊治療中に退職してしまう女性も少なからずいますが、これは会社にとって大きな損失といえます。現に、政府が推進する「働き方改革」の中では、治療(ただし、ここでの治療は不妊治療に限りません。)と仕事の両立もあげられています。
例えば、治療と仕事を両立できる社内制度の整備を行うことが望ましいでしょう。

2 治療と仕事の両立について(不妊治療の観点から)

平成28年10月24日「第2回働き方改革実現会議 治療と仕事の両立等について」によると、不妊治療の両立のため職場からどのようなサポートが欲しいか、という調査に対して、75%の人が「休暇・休業制度」、74%の人が「就業時間制度」と回答しています。
治療と仕事が両立できるような社内制度の整備が今後求められることとなるでしょう。現に、上記「第2回働き方改革実現会議」の中では、患者ニーズに応じた働き方の選択肢の提供が課題として挙げられています。
不妊治療は、頻繁に通院する必要があるものの、1回の治療にそれほど時間がかかるわけではありません。このため、通院に必要な時間だけ休暇を取ることができるよう、年次有給休暇を時間単位で取得できるようにする、不妊治療目的で利用できるフレックスタイム制を導入して、出退勤時刻の調整ができるようにするなど、柔軟な働き方を可能とすることによって仕事との両立をしやすくする取組のほか、不妊治療のための休暇(休職)制度を設けたり、治療費の補助や融資を行うなど、独自の取組を行っている企業もあります(厚生労働省リーフレット「事業主の皆様へ 従業員が希望する妊娠・出産を実現するために」)。

専門家のアドバイス

時間外勤務や休日出勤をなくして長時間労働を避けたいのか、部署を異動させてほしいのか、通院のための休暇がほしいのか、不妊治療中にどのような配慮を求めるかは、人によって異なると思われます。
会社において、当該社員への配慮を行う場合には、どのような配慮を望むのか、十分にヒアリングして、本人が納得するような対応をすることが求められるでしょう。
ただし、妊娠中であれば、体型の変化等により、職場内で「妊娠により配慮を受けている」ということが分かりやすいのですが、不妊治療中であるか否かを外見から判断することはできず、また、当該社員が不妊治療中であることを公表してほしくないと望むケースも多々あります。
不妊治療中であることを知らない同僚などから、「あの人だけ特別扱いされている」などと不公平感を抱かれることは、当該社員にとっても働きにくい状況を作り出すことになりかねません。
本人の希望を尊重しつつ、同じ職場の他の社員の就業状況(仕事の量、質)とのバランスにも配慮した対応が必要となるでしょう。
なお、前掲のリーフレットにはプライバシーの保護への配慮の必要性も記載されています。不妊や不妊治療に関することは、その社員のプライバシーに属することです。社員自身から相談や報告があった場合でも、本人の意思に反して職場全体に知れ渡ってしまうことなどが起こらないよう、プライバシーの保護に配慮する必要があります。
また、職場での社員の意に反する性的な言動は、セクハラになる可能性がありますので、この点からの注意も必要です。

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執筆者

小西 華子こにし はなこ

弁護士

略歴・経歴

○経歴
平成15年 旧司法試験合格
平成16年 東京大学法学部卒業
平成17年 検事任官
平成21年 弁護士登録,竹林・畑・中川・福島法律事務所入所
以後 現在に至る。
◯経営法曹会議会員

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