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人事労務2019年10月23日 どんな行為がセクハラにあたる? 女性社員の労務相談 執筆者:小西華子(弁護士)

Q 部下と普通に話をしていたつもりなのに、「セクハラですよ、部長」と言われました。どのような言動がセクハラとなるのでしょうか。どのようなことに気を付ければいいのでしょうか。また、同性同士でもセクハラになるのでしょうか。

A セクハラとは、一般的に「相手方の意に反する性的な言動」と定義されます。厚生労働省の指針では、「同性に対するものも含まれる」、「被害を受けた者の性的指向又は性自認にかかわらず、当該者に対する職場におけるセクシュアルハラスメント」も含まれると示されています。
したがって、同性同士でもセクハラになることはあります。
また、相手方の意に反するものであれば、発言者にとって冗談のつもりであったり、親しみを込めた表現のつもりであっても、セクハラに該当することもあります。

解 説

1 厚生労働省の指針

男女雇用機会均等法11条1項は、会社に職場でのセクハラの防止等のために必要な措置をとることを義務付け(雇用均等11②)、これに基づき、厚生労働省は「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」(平成18年厚生労働省告示615号、以下「セクハラ指針」といいます。)を定めています。
セクハラ指針は、職場におけるセクハラを、「職場において行われる性的な言動に対する労働者の対応により当該労働者がその労働条件について不利益を受けるもの」(対価型セクシュアルハラスメント)と「当該性的な言動により労働者の就業環境が害されるもの」(環境型セクシュアルハラスメント)の2種類に分類しています。
そして、職場におけるセクハラには、同性に対するものも含まれること、被害者の性的指向又は性自認にかかわらず、当該者に対する職場におけるセクハラも指針の対象となることが明記されています(セクハラ指針2(1))。
すなわち、女性から男性への言動、同性から同性への言動、そして、LGBT(Q39参照)に関する言動も、いずれもセクハラとなりえます。
この指針が対象とする「職場」とは「事業主が雇用する労働者が業務を遂行する場所」(セクハラ指針2(2))であり、「労働者」とは、いわゆる正規雇用労働者のみならず、パートタイム労働者、契約社員等いわゆる非正規労働者の全てをいいます(セクハラ指針2(3))。

2 「性的な言動」とは

「性的な言動」とは、性的な内容の発言及び性的な言動を指します。典型例として、次のものがあります(セクハラ指針2(5)(6))。
① 対価型セクシュアルハラスメント
・事務所内において事業主が労働者に対して性的な関係を要求したが、拒否されたため、当該労働者を解雇すること
・出張中の車中において上司が労働者の腰、胸等を触ったが、抵抗されたため、当該労働者について不利益な配置転換をすること
・営業所内において事業主が日頃から労働者に係る性的な事柄について公然と発言していたが、抗議されたため、当該労働者を降格すること
② 環境型セクシュアルハラスメント
・事務所内において上司が労働者の腰、胸等に度々触ったため、当該労働者が苦痛に感じてその就業意欲が低下していること・同僚が取引先において労働者に係る性的な内容の情報を意図的かつ継続的に流布したため、当該労働者が苦痛に感じて仕事が手につかないこと
・労働者が抗議をしているにもかかわらず、事務所内にヌードポスターを掲示しているため、当該労働者が苦痛に感じて業務に専念できないこと

専門家のアドバイス

セクハラ指針が示しているのはあくまで「典型例」であり、典型例以外にも様々な状況が考えられます。
一言に「相手方の意に反する性的な言動」といっても、人によって「意に反する」ものかどうかはそれぞれです。
また、「性的な言動」というのは、必ずしも卑わいな言動に限定されるものではなく、交際相手の有無を尋ねる、結婚の予定を尋ねる、なども性的な言動と評価されることがあります(このようなプライベートな質問というのは「個への立入り」として、別途、パワハラと評価されることもあります。)。
性的な言動について、発言者には、相手方が嫌がっているかどうかわからないこともあるかと思います。しかし、発言の内容からして、通常の社会人であれば不快、不当に思うのが当然の言動をしていれば、相手方が明示的に嫌がっている態度を示していなくても、相手方が嫌がっている可能性がある、むしろその可能性が高い、ということを認識すべきでしょう。
L館事件(最判平27・2・26判時2253・107)は、女性被害者は、退職までは嫌がるそぶりを見せなかったものの、実際には、男性管理職2名の日々の言動を一言一句記録していて、これをもとに退職時に被害申告をした、というケースで、被害者から明白な拒否の態度を示されておらず、加害者は、被害者から当該言動について許されていると誤信していたのですが、そのような誤信を加害者に有利に斟酌することは相当ではない、と判示しています。
その理由として、最高裁が、職場におけるセクハラ行為については、被害者が内心でこれに著しい不快感や嫌悪感等を抱いていても、職場の人間関係の悪化等を懸念して、加害者に対する抗議や抵抗、会社に対する被害の申告を差し控えたり、ちゅうちょすることが少なくないと考えられる、と判示していることは、セクハラ事案に対応するにあたって、心にとどめておくべきでしょう。
「冗談のつもりだった」、「相手も笑っていたので、まさか嫌がっているとは思わなかった」という弁解は通用しません。

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執筆者

小西 華子こにし はなこ

弁護士(竹林・畑・中川・福島法律事務所)

略歴・経歴

○経歴
平成15年 旧司法試験合格
平成16年 東京大学法学部卒業
平成17年 検事任官
平成21年 弁護士登録,竹林・畑・中川・福島法律事務所入所
以後 現在に至る。
◯経営法曹会議会員

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