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人事労務2019年10月30日 育児休業中の社員の代わりを確保する際に利用できる助成金は? 女性社員の労務相談 執筆者:髙橋佳子(特定社会保険労務士)

Q 社員から妊娠の報告がありました。産前産後の休業から育児休業を取得することとなりましたが、小規模な会社のため、欠員による業務の負担増や、代替社員を確保する場合のコストが心配です。何か良い方法がありますか。

A 長時間労働の削減が進む中、欠員によって他の社員の負担が増すのは会社としても避けたいところです。育児休業を申し出た社員が復帰するまでの間、代わりの社員を手配する場合、一定の要件に該当すれば、代替要員の確保に対し、厚生労働省の両立支援等助成金が支給されます。

解 説

1 代替要員とは

一般的に会社で代替要員を手配しようとするときは、
① 社内の他の部署からの応援
② 派遣会社からの社員派遣
③ アルバイトなど臨時雇いを有期で直接雇用
のいずれかを選択することになりますが、②及び③のように新たな雇入れ又は派遣により代替要員を確保する場合、下記で紹介する両立支援等助成金が利用できます。
また、対象となるのは休業する社員の職務を代替する者に限定されますので、休業する社員が有資格者であり、職務上その資格が必要な場合は、代替要員も有資格者であることが必要となります。さらに、所定労働時間や手当の程度も同様である必要があります。

2 両立支援等助成金とは

厚生労働省の両立支援等助成金では、社員の職業生活と家庭生活の両立を支援するための取組を実施した中小企業に対して、6つのコースの助成金を支給しています(平成29年度の場合)。
なお、「中小企業」の定義は、資本又は出資の額3億円、常用労働者数300人を上限として、業種ごとに決まっています。
また、助成金の利用にあたっては、その他詳細な共通の要件がありますので、検討される場合は厚生労働省のホームページを参照してください。

3 育児休業等支援コース(代替要員確保)(平成29年度の場合)

(1) 支給要件
両立支援等助成金のうち、育児休業等支援コース(代替要員確保)は、会社が育児休業を取得する社員(取得する社員は男女問いません。)の代替要員を確保し、休業を取得した社員を原職等に復帰させた中小企業に支給されるものです。
支給にあたっては、会社は以下の取組が必要です。
① 職場復帰前に就業規則等に育児休業が終了した社員を原職等に復帰させる旨を規定すること
② 対象社員が連続して1か月以上休業した期間が合計して3か月以上の育児休業を取得した上で会社が休業期間中の代替要員を確保すること
③ 対象社員が育児休業終了後に上記規定に基づき原職等に復帰し、更に6か月以上継続就業すること
なお、助成金の支給要件等の詳細は、申請の際に厚生労働省ホームページを参照してください。
(2) 支給額
支給額は、支給対象の社員1人あたり47.5万円(60万円)です。さらに、休業する社員が有期契約社員だった場合は、1人あたり9.5万円(12万円)が加算されます。
なお、助成金の支給申請を行う直近の年度における生産性が3年前に比べ6%以上伸びている場合は、上記支給額の括弧内の額が支給されます。つまり、1人あたり最大72万円が支給されることになります。
(3) 支給対象期間
支給対象期間は5年間で、支給人数は1年度あたり10人まで支給されます。
なお、1人目の対象社員が原職等に復帰後6か月までに、会社が後述の「くるみん認定」を受けると、平成37年3月31日までに延べ50人まで対象となります。

専門家のアドバイス

次世代育成支援対策推進法では、常時雇用する社員が101名以上の会社に、職業生活と家庭生活の両立支援や多様な働き方ができる雇用環境の整備を図るための行動計画の策定・届出、公表・周知を義務付けています。
この行動計画に基づき、子育てサポートの雇用環境を整備した会社が申請を行うことで、厚生労働大臣が行う認定制度である「くるみん認定」を受けることができます。
さらに、環境整備を行い、より高い水準の取組を行った会社が一定の要件を満たすと、特例認定である「プラチナくるみん認定」を受けることができます。
前記助成金の支給対象期間におけるメリットのほか、税制優遇措置(くるみん税制)や公共調達における加点の付与などのメリットもあるので、認定を検討されるのも一考です。

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執筆者

髙橋 佳子たかはし けいこ

特定社会保険労務士

略歴・経歴

◯経歴
外資系香料メーカー勤務中、国籍の異なる4つの会社のM&Aを経験し、資材・商品管理の統合を手掛けるなか、新しい仲間と進んで交流することで、その後の仕事がスムーズに進むことを実感した経験から産業心理を学び、産業カウンセラー資格を取得。さらに5年半の法律事務所勤務を経て社会保険労務士として独立し、働く人を心と制度・法律面で支えるために活動しています。
現在、企業の人事制度設計や職場環境改善の相談を受けながら、働きやすい職場環境のためのセミナー、これから働く人の労働法講座などで積極的に講師を務め、平成26年度からは京都府社会保険労務士会のワークサポート委員会のメンバーとして、高校での出前授業を通し、キャリア形成の支援に力を注いでいます。
働き方改革、ワークライフバランスでも積極的に活動し、㈱ワークライフバランスの養成講座出身者で組織するコンサルタント集団「WLBC関西」に所属。関西中心に自治体や企業の働き方改革のコンサルティング、啓発にあたっています。
やりがい、生きがい、働きがいからのアプローチで、社員が自律的に働く仕組みを提案します。

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