教育2022年11月24日 学校の頭髪を巡る最近の裁判事例から思う 執筆者:日置雅晴
自分が中学生だった半世紀前、地方の公立中学で頭はいわゆる丸刈りがルールとされていた。
当時頭髪は頭を怪我から守る物のはず、何でこれをカットすることを強制させられるのか、何の意味があるのかと思いながらも、中学生故学校や自治体と裁判するとかは思いもせず、学校と教師から言われるままに丸刈りにしていた記憶が蘇る。
あれから半世紀、教育現場は変わったのか、実際の教育現場の状況を常に見ているような状況ではないが、自治体関係の判例情報などを見ていると、いまだに頭髪などを巡る訴訟が起こっているようだ。
最近の学校での頭髪問題を巡る裁判事例を紹介し、教育現場での頭髪などのルールや指導方法を司法がどう評価しているのかを見つつ、教育現場における生徒指導や校則の問題を法律家になった視点で見直してみたい。
生徒指導や校則については文科省は、こういった裁判例もふまえて、概要次のように解説している。
半世紀たっても相変わらずこのような裁判事例みたいな内容の生徒と学校の紛争がおこり、教育現場で解決できず、裁判で係争されているのかと残念に思う反面、文科省が示している考え方は、ある意味法律を作る場合の考慮事項や国民が社会に出て法律というルールの中で対峙して生活していく場合の国民と国や自治体の関係と大きく変わることはない。
そう言う意味では、法律も校則も制定には合理的な立法事実が必要だし、それをふまえた合理的なルールが民主的に定められるべきであり、不合理なルールを学校や国が勝手に定めるべきではない。そのような思考を各人が学生時代の校則と向き合うことで身につけ、社会に出てからはきちんと法律と向き合って生きていく、そう言う能力を学生時代に身につけることは法治国家で生きていくために必要不可欠である。頭髪を巡る訴訟や校則を通じて、日本社会の法的統治という思考の理解レベルが向上するなら、不合理な校則や生徒指導の存在意義もあったのかもしれない。
自分が今の法的知識を持って半世紀前学生だったら、裁判をいくつも起こしていたかもなあと思いつつ、裁判事例を分析してみた。
(2022年11月執筆)
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執筆者
日置 雅晴ひおき まさはる
弁護士
略歴・経歴
略歴
1956年6月 三重県生まれ
1980年3月 東京大学法学部卒業
1982年4月 司法習修終了34期、弁護士登録
1992年5月 日置雅晴法律事務所開設
2002年4月 キーストーン法律事務所開設
2005年4月 立教大学法科大学院講師
2008年1月 神楽坂キーストーン法律事務所開設
2009年4月 早稲田大学大学院法務研究科教授
著書その他
借地・借家の裁判例(有斐閣)
臨床スポーツ医学(文光堂) 連載:スポーツ事故の法律問題
パドマガ(建築知識) 連載:パドマガ法律相談室
日経アーキテクチャー(日経BP社) 連載:法務
市民参加のまちづくり(学芸出版 共著)
インターネット護身術(毎日コミュニケーションズ 共著)
市民のためのまちづくりガイド(学芸出版 共著)
スポーツの法律相談(青林書院 共著)
ケースブック環境法(日本評論社 共著・2005年)
日本の風景計画(学芸出版社 共著・2003年)
自治体都市計画の最前線(学芸出版社 共著・2007年)
設計監理トラブル判例50選、契約敷地トラブル判例50選(日経BP社 共著・2007年)
新・環境法入門(法律文化社・2008年)
成熟社会における開発・建築規制のあり方(日本建築学会 共著・2013年)
建築生産と法制度(日本建築学会 共著・2018年)
行政不服審査法の実務と書式(日本弁護士連合会行政訴訟センター 共著・2020年)
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