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建築基準2020年07月13日 多様化する暮らし方と変わる住宅街のあり方 執筆者:日置雅晴

 コロナの影響で、あっというまに日本でもテレワーク利用が広がった感じがあります。通勤が不要になり、時間効率が上がると言うことで、これを契機にコロナが収まってもテレワークやサテライトオフィスなどはかなり利用が進むと言われています。
 このような動きが広がると、単に働き方だけではなく、住宅のあり方やまちづくりなど広範に影響が広がる可能性が出てきて、いずれは都市計画法などの改正につながる可能性も出てきます。
 暮らし方の変化が、まちづくりにどのような影響を与えるのかを考えてみましょう。
 まずは、住宅のあり方です。近年共稼ぎカップルなどの生活を考えて、交通の便が良い駅近の高層マンションなどの需要が高まり、郊外型の住宅は人気が低下していました。
 在宅勤務が主流となれば、テレワーク用の部屋などある程度余裕を持った広い住宅が求められ、通勤不要で交通の便はそれほど優先されなくなるので、郊外型戸建て住宅が復権するかもしれません。
 専門職などでは、都心部のオフィスを廃止して、自宅兼事務所にするなどの動きも出てくるかもしれませんし、都心部の集中オフィスから、郊外の小さなサテライトオフィスに分散をはかる職場も出てくるでしょう。
 郊外地の人口減少、地価低下に悩んでいた地域では、このような需要を取り込んだ新しい住宅街の再生や、住宅地内のサテライトオフィス誘致が考えられそうです。
 ただし、住宅で業務を行う場合、単なるテレワークなら問題はないのですが、自営業者が事務所兼自宅とするような来客や勤務者を伴う場合や、サテライトオフィスを設ける場合には、都市計画上の用途地域による制約を受ける場合があります。
 その場所が良好な低層住宅街で第1種低層住居専用地域とされている場合(郊外型の戸建て住宅街では結構あります)には、単独の事務所の設置は禁止されていますし、自宅兼事務所の場合でも、過半が住宅であることや、事務所部分が50平米以下であることなどかなりの制約があります。
 仮に、都市計画法上の規制をクリアしても、近隣居住者との間で、騒音等を巡るトラブルが生じる可能性もあります。
 もっとも、近年はこのような低層住居専用地域における厳しい用途規制は、居住者の利益にもならないというような意見も出ていました。例えば居住者が高齢化して、遠くまで買い物に行きにくくなっても、コンビニなどの設置が禁止されているので、誘致が出来ないなどの問題が指摘されています。
 都市計画により、守られてきた住環境は大切ですが、その結果として居住者が減少して、地域が衰退してしまっては、本末転倒です。
 地域で、時代の変化に合わせて、必要かつ適切なルールを絶えず見直して行く議論を継続することが必要です。
 コロナを契機に、様々な生活スタイルが変わるのであれば、それまでの高齢化や少子化などの影響もふまえ、新しい生活スタイルと、良好な住環境を両立し、地域を活性化していける新しい動きが拡大すれば、災い転じて福となすとなるかと思います。

(2020年6月執筆)

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執筆者

日置 雅晴ひおき まさはる

弁護士

略歴・経歴

略歴
1956年6月 三重県生まれ
1980年3月 東京大学法学部卒業
1982年4月 司法習修終了34期、弁護士登録
1992年5月 日置雅晴法律事務所開設
2002年4月 キーストーン法律事務所開設
2005年4月 立教大学法科大学院講師
2008年1月 神楽坂キーストーン法律事務所開設
2009年4月 早稲田大学大学院法務研究科教授

著書その他
借地・借家の裁判例(有斐閣)
臨床スポーツ医学(文光堂) 連載:スポーツ事故の法律問題
パドマガ(建築知識) 連載:パドマガ法律相談室
日経アーキテクチャー(日経BP社) 連載:法務
市民参加のまちづくり(学芸出版 共著)
インターネット護身術(毎日コミュニケーションズ 共著)
市民のためのまちづくりガイド(学芸出版 共著)
スポーツの法律相談(青林書院 共著)
ケースブック環境法(日本評論社 共著・2005年)
日本の風景計画(学芸出版社 共著・2003年)
自治体都市計画の最前線(学芸出版社 共著・2007年)
設計監理トラブル判例50選、契約敷地トラブル判例50選(日経BP社 共著・2007年)
新・環境法入門(法律文化社・2008年)
成熟社会における開発・建築規制のあり方(日本建築学会 共著・2013年)
建築生産と法制度(日本建築学会 共著・2018年)
行政不服審査法の実務と書式(日本弁護士連合会行政訴訟センター 共著・2020年)

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