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相続・遺言2020年03月06日 相続法が変わった(1) 執筆者:北村明美

もともと有利であった配偶者が、さらに有利になった。
どのように、結婚・離婚等に影響を及ぼすのだろうか。
1.配偶者は、元々、非常に有利であった。特に、税制面では、有利である。
(1)これまで、配偶者は次のように税法上有利になっている。
   贈与税 ㋐ 20年以上結婚している夫婦の間の居住用財産2,000万円までの贈与税はゼロ。
        (贈与税の基礎控除額110万円を加えると2,110万円までは贈与税はかからない。)
         しかも、土地は時価より低い相続税評価でよい。
   贈与税 ㋑ 1億6,000万円まで相続しても相続税はゼロ
        (相続税法19条 配偶者に対する相続税額の軽減)
       ㋒ 法定相続分以内の相続財産を相続する場合、それが100億円でも相続税はゼロ。
        (相続税法19条 配偶者に対する相続税額の軽減)
       ㋓ 被相続人名義の土地建物を配偶者が相続した場合、配偶者がそこに住んでいなかったとしても、その土地について、330㎡までは、相続税評価額の80%減の評価でOK。
        (小規模宅地等の特例)
   なぜ 配偶者にこのような特例が適用されるのかは、
       ① 配偶者の老後の生活保障
       ② 被相続人の財産の形成において、通常、配偶者の貢献があるから。
       ③ 同一世代での財産の移転になるので、次の相続までの期間が短いから
   等といわれている。
(2)このたびの相続法の改正により、さらに有利になる。
       ㋔ 20年以上結婚している夫婦の一方が先に亡くなり、他の一方に対し、居住用不動産を、遺贈または贈与したときは、持ち戻さなくてよい。
        (改正民法903条4項 持ち戻し免除の意思表示の推定)
       ㋕ 配偶者居住権(改正民法1028条~1041条)
         配偶者は、被相続人所有建物に被相続人死亡時居住していた場合、その建物全部について、無償で使用収益する権利を取得する。
       ㋖ 配偶者短期居住権(改正民法1037条~1041条)
   私は、「持ち戻し免除の意思表示の推定」に正直、驚いた。遺産分割の枠組みを変えるものだからである。
2.これらの優遇策の恩恵を受けるのは、あくまでも法律婚の配偶者である。
  夫婦別姓のために事実婚をしているカップルに恩恵はない。内縁関係のカップルにも恩恵はない。LGBTのカップルも恩恵は受けない。
  資産を形成した夫婦別姓のカップルが、相続税の優遇策を受けるために、近時法律婚せざるを得なかったケースがある。
  また、法律婚の妻の地位があまりにも有利なので、夫婦間は破綻していても、離婚を拒むというケースもある。
  古い頭の議員たちは、法律婚を優遇し、婚外子を忌み嫌う道徳観をあくまでも押し通そうとしているのであろうか。
  それでは、日本の人口減少をくいとめることは、到底できないだろうなと思う。
  そういえば、婚外子は、かつて非嫡出子と呼ばれ、嫡出子とくらべると法定相続分は2分の1にされていた。
  嫡出子と非嫡出子の相続分が同じになったのは、つい最近のH25(2013)年9月4日の最高裁大法廷決定である。
  また、法定相続人が、配偶者と子の場合、配偶者の法定相続分が1/3から1/2に引き上げられたのは、S56(1981)年1月1日施行の民法改正後である。
  日本において、かつては、配偶者の地位が低かった。婚外子は差別されていた。
  離婚件数は多い、不貞(不倫)も多い。日本でもLGBTが市民権をえようとしている。
  日本は、今後、どこをめざすのだろうか。
  改正法の規定は、以下のとおり、段階的に施行されることとされている。
  段階的施行というのは、そうあることではない。
  〇民法等の一部改正法
   ①自筆証書遺言の方式を緩和する方策
    …2019年1月13日~
   ②預貯金の払戻し制度、遺留分制度の見直し、特別の寄与等(①,③以外の規定)
    …2019年1月13日~
   ③配偶者居住権(配偶者短期居住権を含む。)の新設等
    …2020年7月10日~
(2020年2月執筆)

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