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企業法務2020年05月08日 残業代請求における民法改正の影響について 執筆者:大西隆司

1、消滅時効について
 2020年4月1日から改正民法が施行され、これに伴う労働基準法の一部改正を伴い、未払残業代請求の実務においても大きな影響を受けることになります。
 2020年3月31日までは、労働基準法115条が「この法律の規定による賃金(退職金を除く)、災害補償その他の請求権は2年間、この法律の規定による退職手当の請求権は5年間行わない場合において、時効によって消滅する」と規定され、残業代請求の消滅時効は、原則2年とされていました。
 しかし、2020年4月1日に施行の改正民法116条は、債権の消滅時効期間について、権利を行使することができることを知った日から5年とし、それまで定めていた短期消滅時効を廃止しました。
 これを受けて、労基法上の消滅時効をどのように規定するかが議論され、賃金請求権の消滅時効期間についても、民法一部改正法による短期消滅時効廃止後の契約上の債権の消滅時効期間とのバランスも踏まえ、5年とすることとしつつ、経過措置として当面の間、3年間の消滅時効期間とするとされました(労働基準法の一部を改正する法律)。
 同法律では、残業代請求に関し、施行期日以後に賃金の支払期日が到来した賃金請求権から改正法に定める消滅時効期間が適用されるとされており、2020年4月時点から将来に向かって生じる賃金について、3年の消滅時効が適用されることになります。
 今後発生する残業代について問題が生じた場合、遡って3年の支給が必要となり、企業においては、未払残業代の問題が生じないよう、残業を生じさせない労務管理を行うなどの対応に迫られるでしょう。なお、労働基準法の一部を改正する法律では、賃金台帳等の記録の保存期間については、5年に延長とされています。
2 遅延損害金について
 遅延損害金についても改正民法の影響を受けるところです。
 2020年3月31日までは、使用者が会社又は商人である場合、商事法定利率の年6%が適用され、公益法人などの商人に該当しない使用者の場合は、年5%が適用されていました。
 2020年4月1日以降は、商事法定利息が廃止され、民法404条所定の遅延損害金利率、年3%(その後3年ごとの変動制)が適用され、改正民法では、原則的な損害賠償の際の利率が低くなることになります。
 そこで、残業代請求を行う側にとって、特則的な規定を漏れなく利用して主張しておくことが重要となります。
 まず、退職後の賃金請求については、賃金の支払の確保等に関する法律6条1項により適用される退職日以降の遅延損害金についての年14.6%(同法施行令1条)の請求を行うことが大切です。
 同法6条2項では、使用者が合理的理由により争っている場合は適用しないとの除外規定があり、使用者側の主張に合理性があるかどうかが問題となりますが、不合理と考える労働者側の請求としては、退職後の賃金請求について忘れずに、14.6%の主張をしておくことが重要となるでしょう。
 また、訴訟に移行する場合、労働基準法114条の付加金の請求を行っておくことも大切です。
 付加金については、裁判所は、労働者の請求があって初めて命ずることができるため、訴訟で残業代請求を行う場合は、訴状の請求の趣旨及び請求原因欄で付加金の請求であることを明示しなければなりません。
 付加金に対する遅延損害金については、付加金の支払いを明示する判決が確定した日の翌日から発生し、利率は民法所定の利率によっており、2020年4月1日以降は年3%(その後3年ごとの変動制)となります。
 なお、付加金の請求は労働基準法違反があった時から2年以内にしなければならないと除斥期間が定められていましたが(労基法114条但書)、労働基準法の一部を改正する法律により2020年4月1日以降の期間について当面の間3年と改正されています。
(2020年4月執筆)

執筆者

大西 隆司おおにし たかし

弁護士(なにわ法律事務所)

略歴・経歴

なにわ法律事務所URL:http://naniwa-law.com/

略歴
◆「大阪産業創造館 経営相談室「あきないえーど」 経営サポーター(2012年~2015年3月、2016年~2019年3月、2020年4月~)」、関西大学非常勤講師(2014年度〜2016年度)、関西大学会計専門職大学院非常勤講師(2017年度〜)、滋賀県商工会連合会 エキスパート登録(2013年~)、大阪弁護士会遺言相続センター登録弁護士、大阪弁護士会高齢者・障害者支援センター「ひまわり」支援弁護士。

著書
『特別縁故者をめぐる法律実務―類型別のポイントと書式―』(新日本法規出版、2014年)共著
『法務・税務からみた相続対策の効果とリスク』(新日本法規出版、2015年)相続対策実務研究会代表大西隆司(なにわ法律事務所)編著
『事例でみる事業承継の実務―士業間連携と対応のポイント―』(新日本法規出版、2017年)編著
『〔改訂版〕事例でみるスタンダード相続手続―士業間連携による対応方法―』(新日本法規出版、2018年)編著等

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