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企業法務2023年03月22日 1カ月60時間超の時間外賃金の割増率増加について 執筆者:大神令子

既に皆様も御存知のことかと思いますが、4月1日から1カ月の時間外労働(残業)が60時間を超えた場合の割増率が、中小企業でも25%から50%に引き上げられます。60時間超の割増率が50%になるのは、大企業では既に適用されており、それが2023年(令和5年)の4月1日から中小企業にも拡大されるというお話は、以前から聞いていらっしゃったことではないかと思います。

それに伴い、60時間超の時間外労働が深夜労働となった場合は、合計で75%増しという大きな割増率となります。

既に適用が目の前に迫ってきていますので今からでは事前対策も難しいかと思いますが、50%もの割増賃金を支払わなければならなくなると、企業経営にも大きな問題が生じると思いますので、今後も引き続き労働時間の削減に取り組んでいく必要があると思います。
方法としては、① 労働時間の見直し、②従業員数の拡充、③ 働き方の見直し、④代替休暇の導入、ということになるかと思います。

① 労働時間の見直し

長時間労働の削減には、労働時間の見直しが必ず必要となります。労働時間に無駄な時間がないか?長時間労働に慣れてしまって必要以上に残業をしていないか?等を見直すことになります。

ここで大きな問題となるのが従業員の皆様の収入です。残業代が減れば収入が減ることになりますので、従業員の皆様からすれば望ましいこととは限らないという点が問題です。また、無理やり時間短縮をさせて、却って災害に繋がるような事態になることは避けなければなりません。

従業員の皆様に対しては、労働時間が短くなるメリットについて御理解いただくための地道な話し合いをしなければならないだろうと思います。また、給与額が大きく下がらないようにするためのインセンティブが必要となるケースもあるかと思います。

労働時間の見直しには、従業員の皆様と会社との信頼関係がポイントになるように思います。

② 従業員数の拡充

労働時間の見直しをしても、やはり時間外労働が必要になるだけの業務量があるということであれば、それは人を増やして一人当たりの業務量を減らすことを考えなければなりません。
人を増やせば人件費が増えるとお考えの方もおいでだと思いますが、50%もの割増賃金を支払うことを考えれば、従業員を増やした方が人件費を抑えることができるのではないかと思います。

ただ、今の採用市場の状況では、なかなか人を増やすことは難しい部分があるとは思います。特に中小企業では難しいと思いますが、諦めず従業員を増やしていくことを続けていただきたいと思います。

③ 働き方の見直し

これは労働時間の見直しとは全く違う観点のシステムとしての見直しです。今からでも対応可能な企業もあるかもしれません。

業務としてどうしても長時間の稼働が必要な場合には、シフトを利用していくつかの労働時間帯を作り、交替で勤務していただくことも御検討ください。それによって一人あたりの労働時間を減らし、長時間労働を削減することができるかもしれません。

また、業務に繁忙期と閑散期がある場合は、変形労働時間制の導入をしていただき、労働時間の平準化をしていただければ、1カ月あたりの労働時間を減らすことができるかもしれません。

労働時間短縮のための方策は可能な限り御利用いただきたいです。

④ 代替休暇の導入

どうしても60時間超の時間外労働が生じる場合のこれからの対策として、代替休暇を導入するということがあります。

60時間を超える時間外労働について、その時間数を有給で休ませた場合は残業をしていなかった扱いにすることができるという制度です。この有給による代替休暇は年次有給休暇とは別に有給で休ませるものです。

この制度を導入するには従業員代表との間で労使協定を結ぶ必要があります。実際に労使協定で定めなければならないことには細かい決まりがあります。また、代替休暇の取得は従業員の自由意志となりますので、御注意ください。

現実の60時間超の割増の扱いについてですが、60時間までは25%増しの時間外手当(残業代)で良いことになっています。ただ、45時間から60時間の間は暫定的に率を上げていくことが望ましいとなっています。60時間を超えたところからは、必ず50%増しの時間外手当としてください。割増率をどのような形にするにしても、就業規則(賃金規程)に盛り込む必要があります。

2023年4月の時間外労働時間のカウントについてですが、3月31日までの労働に関しては、60時間を超えていたとしても50%にする必要はありません。タイムカードの締日の関係で4月1日を跨ぐ場合であっても、3月31日までは25%増しの時間外手当でも違法にはなりません。4月1日以降については、法律が改正になった4月1日からカウントを始めて 、60時間を超えたところから50%増しで支払う必要があります。

タイムカードが4月1日を跨ぐ場合は、3月31日までは全て25%増しで、4月1日以降はそこからカウントしますので、結果的に60時間を超える長時間労働となっても50%増しとならない場合があります。ご注意ください。

いずれにしても、長時間労働は好ましくはありません。適正な労働時間の短縮をされるよう御検討ください。

(2023年3月執筆)

※本記事は2023年4月6日に内容を訂正いたしました。

執筆者

大神 令子おおがみ れいこ

社会保険労務士

略歴・経歴

大神令子社会保険労務士事務所代表

2000年(平成12年)12月 社会保険労務士試験 合格
2001年(平成13年) 2月 大阪府社会保険労務士会 登録
2002年(平成14年) 4月 大阪府内社会保険事務所にて 社会保険相談指導員
2006年(平成18年)12月 大神令子社会保険労務士事務所設立

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