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民事2020年12月10日 特別対談企画 生活の知恵としての信託 ~不動産信託(後編)~ スターツ信託株式会社 代表取締役 渡邊貞夫 ✕ スターツ信託株式会社 取締役 鈴木真行 ✕ 信託ナビゲーター・税理士 石垣雄一郎 対談 対談者:渡邊貞夫 鈴木真行 石垣雄一郎

商事信託と民事信託の共通点を意識しながら

【はじめに】

 本年6月から不定期で始めました「生活の知恵としての信託」シリーズは、誰もが民事(家族)、商事を問わず、信託の使い方を知ることができる「信託の民主化」をめざした企画です(※1)。本シリーズに登場される方には、予めこの趣旨に対するご賛同をいただいております。

 今回は前編、中編に続くスターツ信託株式会社(※2)の不動産信託・最終回(後編)です。

 本対談における法的見解、考え方は、対談当事者個人によるものであり、読者またはそのお客様方の個別案件に対応するものではなく、その責任を負うものではありません。また、商品等の勧誘を目的とするものでもありません。

※2 スターツ信託株式会社・HP
https://trust.starts.co.jp/

【信託セミナー受講】

石垣 先日、鈴木さんが講師を務められた不動産信託セミナーにご招待いただき、会場受講者として参加させていただきました。ありがとうございました。社会情勢に合わせ、会場受講者の人数制限はありましたが、会場で知り合いの主催者事務局の方から、「最近は、コロナ禍で会場での受講者数が少なくなっていますが、今日は会場受講者が多いようです。テーマと講師次第では、こうなります。」と言われました。皆さん、熱心にメモを取りながら受講されていたのが印象的でした。ところで、講演冒頭部分の東京エリア内不動産市況説明は、不動産経営に携わる信託会社の見識のあり方を示されているようでしたが、講演のときはこうしたご説明を意識してされているのですか?

鈴木 はい。当社は不動産信託を専業としていますので、対象エリア内の不動産の需給バランス、その見通し、相場などには常に関心をもっています。特に、現在のようなコロナ渦にあっては、市場が大きく変化する兆候が見られ、市場把握の重要性がより増していますので、セミナー冒頭を東京エリアの不動産市況説明とさせていただいた次第です。

石垣 よかったと思います。といいますのは、賃貸不動産経営をするには、信託をするかしないかにかかわらず、また、商事信託、民事信託であるかにかかわらず、市場の把握は経営判断の基礎になるといえるからです。今回は、受託者について、継続的安定性のある商事信託、生命・健康リスクのある民事信託、その他諸々の相違点があることをふまえた上で、私は信託という点で民事信託に役に立つ共通点を意識しながら、対談を進めてまいりますので、よろしくお願いいたします。さて、講演の中で、印象的だったことの一つに御社がスターツグループ内での利益相反行為(信託法31条1項)に注意を払い、信託業務をされている旨のお話がありました。今回は、その点から改めて聞かせください。

【利益相反行為への配慮】

<グループ企業との取引>
鈴木 当社(受託者)は、まず、信託契約でお客さま(委託者兼受益者)に対しグループ会社との取引をすることにつき信託法31条1項、2項に規定する利益相反取引に該当する恐れがある場合には、事前に一定の行為についてご承諾をいただくことにしています(信託法31条2項1号)。さらに、その行為に関するグループ会社向け発注には独自に社内規定を設けています。例えば、建築工事をグループ会社に発注する際には建築金額を検証し、物件の募集管理業務をグループ会社に委託する際には業務内容や価格を検証して、通常の取引と比べて受益者に不利にならない条件で行うように努めています。

石垣 その点は、これから御社との信託契約を検討する方にとっては、とても大切な判断材料になるように思います。民事信託の受託者は、意外と利益相反行為(信託法31条)、競合行為(信託法32条)(※3)を意識していないことがあります。しかし、この意識をもって相続人、信託債権者その他利害関係人の間でトラブルを生じさせないよう、信託の運営を心がけることが必要です。商事信託の講演に出席してそのことを改めて強く感じた次第です。

※3 信託法31条、32条の規定は、信託契約にその旨の定めを設けなくても、その規定の適用を受けることに留意しなければなりません

<不動産の管理に関する信託会社と不動産管理会社の違い>
石垣 基本的な質問で恐縮ですが、信託会社による信託不動産の「管理」と、不動産管理会社による物件の「管理」の違いを簡単にご説明していただけますか?

鈴木 信託会社の行う管理とは、ハード面の物件を維持管理することではなく、受託者としてソフト面の「不動産経営を行うこと」です。ハード面の管理は通常の賃貸不動産と同じように管理会社が行っています。ただし、信託会社が受託者として信託財産の物件所有者となる場合は、知識・経験・ノウハウを持つ不動産のプロである信託会社が家主となることが最大のポイントです。管理会社主導の運営ではなく、受託者である信託会社は自らが不動産経営を行い、その下で管理会社を監督することになります。信託をしてない場合、不動産オーナーは管理会社が適切に業務運営をしているかどうかをチェックすることは容易でないこともありますが、信託をしている場合、専門家である信託会社は、そうしたチェックをすることができますし、善管注意義務を負う立場からはそうしなければなりません。信託会社は管理会社などとは異なり監督官庁(金融庁)の監督下にあり、その業務内容については定期的にモニタリングを受けています。
また、管理会社が倒産しても、預託して管理される敷金や共益費は保護されませんが、信託会社が倒産した場合には、信託口座でお預かりしている敷金や修繕積立金などの金銭は信託財産として保護される点も違いといえます。

石垣 不動産信託の特徴を端的にご説明していただきましてありがとうございます。受託者が賃貸不動産経営を信託により引き受けて一定の経営責任を負うという考えは、商事信託、民事信託にかかわらず、その通りだと思います(※4)。商事信託はプロが受託者となりますが、民事信託は、一般的に不動産に詳しい専門家が受託者になるわけではありません。しかし、不動産経営意識は必要ですから、もし受託者にその意識がないことになると適切な判断ができず、受益者の利益を守れないばかりか、関係各方面でトラブルを生じさせる原因を作ってしまうことにもなりかねません。今のご説明は、民事信託をする方にとっても参考にすべきことです。

※4 不動産経営意識の醸成方法については、拙著「問題解決のための民事信託活用法」(新日本法規刊)第1章・ケース③の後継者育成型信託で取り上げました。
https://www.sn-hoki.co.jp/shop/item/5100046

【受益者に対する信託財産の管理状況報告】

石垣 不動産信託を専業とする信託会社は、不動産会社の管理レポートに添付されたチェックリストの内容確認以外に何を点検されるのですか?

鈴木 不動産管理会社のチェックリストの確認もしますが、信託会社独自のフォーマットもあります。また、不動産は現物確認が必要なため自主点検という作業もあります。信託会社には受託者責任がある以上、管理会社任せにすることは出来ないため、受託者自らが現場に赴きます。
なお、顧客への状況報告は原則として、3ヵ月に1回(後述の財務諸表等の報告と一緒に)行います。

石垣 汗をかくことを人任せにせずに行うことが不動産信託業務のような印象ですが、金融商品の信託とは随分異なるようですね。

鈴木 大手信託銀行が手間のかかる土地信託のビジネスを縮小し、業務効率が良い金融資産の信託に注力する傾向にあるのは自然な流れかもしれませんが、私たちは、不動産信託を必要とする一定のお客さまが存在する以上、そのニーズに対応することを使命として行動することを心掛けています。

石垣 私の個人的意見を言わせていただけば、信託会社と立場が違うとはいえ、不動産管理・仲介会社が信託会社と同じような経営者意識(または経営者代行意識)があれば、もう少し高い品質の役務を提供できるのではないかと、時々思わされることがあります。

【グループ企業に委託するとは限らない不動産管理・仲介業務】

石垣 ところで、不動産管理・仲介業務について、御社は、グループ企業ではなく、従来から不動産オーナー(委託者兼受益者)が業務を委託してきた不動産会社に業務を委任することはあるのですか?

鈴木 はい、あります。信託案件のご紹介元が不動産会社や管理会社の場合は、その会社が担ってきた管理・仲介業務を継続していただくことがあり、そのようなケースでは管理・仲介業務についてスターツグループへの変更は致しません。ただし、会社規模・財務基盤に不安がある場合や提供していただく管理サービスの内容が一般的に見て著しく劣っている場合は、「受益者保護」の観点から、変更せざるを得なくなることはあります。なお、ご紹介元が不動産管理・仲介をする会社以外の場合には、原則としてスターツグループの管理とさせていただきます。

石垣 中小の不動産管理・仲介会社は、信託会社に顧客を紹介したら、自らの事業機会を無くすのではないかと懸念することがあると思います。必ずしもそうではないことが正しく伝わることは信託の社会的な広がりに欠かせない気がします。

【委託先の不動産会社への影響力】

石垣 ところで、ピタットハウスの店長経験者を擁する御社は、信託する賃貸建物に空室が生じた場合に、募集店(仲介会社)は何をすべきか、その業務内容・手順を熟知されていると思います(前編参照・※5)。そのことを知る募集店は必然的に「業務を的確に遂行」しようとする力が働き、必然的に受益者の利益となる効果を生じさせていると推測されますが、その点はいかがですか?

鈴木 前編でもふれましたが、実際、その効果はあると思います。信託物件に空室が生じている場合は、募集店に対してリーシングレポートの提出を求めます。1週間の募集状況、反応、案内促進状況、そして、案内状況を業務として必ず報告してもらうようにしています。お陰様で、募集店は、緊張感をもって募集業務を「的確に遂行」しています。

石垣 募集店は、インターネットからの引き合い情報だけで仲介・成約できるならばいいのですが、その情報だけを頼りに、積極的な募集活動や市況に応じた不動産オーナー向けの提案活動をしていませんと、通常、報告内容がワンパターン化されてきます。そうなると、成果が出ていないこともあって、あまり仕事をしていないという印象をもたれがちです。そうならないよう、募集店にリーシングレポートの提出、点検を通じて募集業務の品質管理する点はプロの仕事だと思います。品質の高い業務提供のできる不動産会社の育成と、その存在は、不動産市場を健全に発展させる礎であり、不動産信託の社会的広がりに欠かせないインフラだといえます。その意味でも御社のような取り組みをされる信託会社は、社会的に助かる存在だと思います。

【顧客への報告、帳簿・財務諸表の作成、税務署への「信託の計算書」提出等】

<顧客への報告>
石垣 委託者・受益者への報告はどのようにされているのですか?

鈴木 信託不動産については、3ヵ月毎に収支状況について決算書を作成して受益者に信託財産の状況報告(信託法37条)を行うとともに信託配当の交付を行います。この決算業務では、受託者として第三者への委任業務を含む管理運用状況などについてチェックリストによって点検を行い、受益者(お客さま)への訪問面談などの方法により、信託事務の処理の状況、信託財産の状況、信託財産責任負担債務の状況(信託法36条)を報告しています。

<帳簿、財務諸表の作成>
石垣 信託法36条の受託者による報告義務を具体化する信託法37条に基づく信託帳簿(会計帳簿)、貸借対照表、損益計算書の作成は、どうされているのですか?

鈴木 信託契約によりますが、通常は四半期ごとに貸借対照表と損益計算書を作成しています。なお、信託会計では現金主義を採用しているため、当社が作成する損益計算書には未収収益や未払費用は計上していません。また減価償却なども行っていません。

石垣 受託者の義務とはいえ、その役務提供は、顧客(受益者)は事務負担がなくなる分、助かります。関与税理士も手間の多くが省かれます。ですから、税理士は、手間が省かれた分、先を見越し、税務シミュレーションを含む将来(未来)財務諸表を作成し、顧客が判断や意思決定をしやすくするための基礎資料を提供するなど、より質の高いサービス提供の時間を作ることが可能になります。これは顧客にとって信託報酬の範囲内の業務ではあっても、私は商事信託を活用するメリットの一つと考えます(※6)(※7)(※8)。

※6 J-REITはこのメリットを生かしているといえます。
※7 民事信託の受託者から会計帳簿・財務諸表作成業務の委託を受ける新たな事業展開の例としては、JA福岡市の取り組みが参考になります(拙著「問題解決のための民事信託活用法」(新日本法規刊)第1章・信託エピソードP149-P150参照)。
https://www.sn-hoki.co.jp/shop/item/5100046
※8 民事信託の場合、信託契約において受託者が受益者に財務諸表の内容を報告するのは、受益者から報告の求めを受けた時とする旨の定め(信託法37条3項ただし書参照)を設けることがあります。たとえ信託契約の定めがそうなっていたとしても、報告は定期的に実施し、その事実がわかるよう記録しておくことが望ましいと考えます。

<税務署への「信託の計算書」提出>
石垣 信託会社は、受託者の義務として、「信託の計算書」を毎事業年度終了後1か月以内に、信託会社以外の受託者については、毎年1月31日までに、受託者の所轄税務署長に提出しなければなりません(所得税法施行規則96条)(※9)。受託者は、「帳簿等の作成等、報告及び保存の義務」(信託法37条)を負い、帳簿等のデータに基づき、「信託の計算書」を作成し、これを所轄税務署長に提出します。この点について、実務では、どのような取り扱いをされているのですか?

鈴木 「信託の計算書」は、損益計算書、貸借対照表の形式となっていますが、信託会社で作成する損益計算書には先ほどもお話ししたように減価償却などの記載はありません。また、貸借対照表ですが不動産については受託時の簿価を記載しています。これらは全て信託銀行時代からの慣習になっています。

石垣 信託会社では、そういう実務になっているのですね。民事信託の受託者の参考になるかと思います(※10)。ありがとうございます。

※9 拙著「問題解決のための民事信託活用法」(新日本法規刊)第2章P267-P269参照。なお、受託者は、信託の効力が生じた時、所轄税務署長に信託調書の提出を義務づけられています(同P236-P237、信託契約書案文はP144参照)。信託が終了したときも同様に調書の提出義務があります(同P300、信託契約書案文はP148参照)。
https://www.sn-hoki.co.jp/shop/item/5100046
※10 もっとも、個人(受益者)の場合は、毎年3月15日までに確定申告をしなければなりませんので、類似のデータを受託者が毎年1月31日までに提出しなければならないこの制度がはたして必要かという問題は残っています。

【信託会社に管理・運用の一任を希望する顧客】

石垣 御社のHP(※2)に掲載されたケース以外で、特徴的なニーズとして、例えば、どのようなものがありますか?

鈴木 税対策が目的で購入後の管理運営は全て信託会社に任せてしまうことを前提に賃貸物件を購入するお客さまが一定数存在しています。

石垣 投資信託の個人投資家(受益者)のようですね。

鈴木 それに似ています。こうしたお客さまに対し、賃貸不動産を受託するには当社の基準に合致した物件を選定(※11)しなければなりませんので、その基準に見合った収益物件をご紹介しています。

石垣 購入する側からすると、一度、御社のフィルターをかけてもらって、収益物件として一定の品質のものを入手でき、物件選定失敗のリスクを軽減できます。この利点をうまく活用して顧客層を増やす方法をとられていることがわかります。

鈴木 ご購入の主たる目的は、ほとんどが相続税対策のための相続税評価額の圧縮であり、必ずしも不動産の賃貸経営(不動産経営)に関心があってご購入されているわけではありません。

石垣 その分、御社の責任は重いともいえますが、その購入手法は不動産に特化した商事信託ならではと思います。そうした顧客は、本来、自らが実施すべきことを、御社が信託の枠組みの中で代わりに実施してくれることをよく理解していることがわかります(下記信託メモ・参照)。

【信託メモ・商事信託特有の「不動産経営者育成型信託」】 

このニーズとは反対に、不動産経営に関心のある人の存在も見込まれます。不動産経営に関心があっても、その経験がない人にとって、信託会社による「不動産信託」は不動産経営を代行してもらうだけでなく、不動産経営を学ぶ有効な手段、機会となります(※12)。信託会社(受託者)が経営をバックアップする体制をとってくれるのであれば、委託者兼受益者にとっては「不動産経営者育成型信託」となります。そうすると、委託者兼受益者となるべき人の対象は必ずしも高齢者でなくてもよいことになります。ここに信託会社は新たな潜在的需要を見出すことができるのではないかと思われます。

※12 民事信託における「後継者育成型信託」については拙著「問題解決のための民事信託活用法」(新日本法規刊)第1章・ケース3参照

【指図権者の定め】

石垣 運用型信託会社(※13)である御社は、信託契約書に受託者の権限を制限(信託法26条ただし書)する指図権者の定めを設けることはあるのですか?

鈴木 当社が受託している信託案件は「賃貸不動産の管理運営」が目的のため、原則として指図権者を置かない信託契約がほとんどです。ただし、当初から物件を売却することを想定しているようなケースでは指図を受けるような信託契約にすることがあります。商事信託の場合、売却権限まで受託者が持っていると、お客さまは勝手に売られてしまうのではないかと不安に思う方もいらっしゃるからです。

石垣 不安解消の措置としての指図権(※14)は必要ですね。

※14 拙著「問題解決のための民事信託活用法」(新日本法規刊)第1章・ケース③では「後継者育成型信託」における指図権の利用方法(信託契約書案文も参照)を示しています。
https://www.sn-hoki.co.jp/shop/item/5100046

【顧客に対応した不動産信託のレアな活用例】

石垣 不動産信託のレアな活用例をご紹介していただけますか?

鈴木 信託物件からの収益金(信託配当)を公益法人やNPO法人などに寄付したいというお客さまがいらっしゃいますので、信託期間中お客様の信託口座からNPO法人などへ収益を寄付するスキームを提供しております。

【やりがいのある信託業務】

石垣 信託業務にやりがいを感じられるのは、どのようなときですか?

鈴木 一番はお客さまから信託を使ったことで「こんな風に変わった」と言っていただけることが励みになります。例えば、次のようなことがあります。

● 50年近く資産管理してきた高齢のお客さまから「信託したことで気持ちが軽くなった(精神的負担軽減や時間的ゆとり)。」
● 親なき後で悩んでいたお母さまから「障がいのある子への資産継承で悩んでいたが明るい兆しが見えた。」
● 将来財産を受け継ぐ娘さんから「慣れない不動産経営を引継ぐことへの抵抗(不安)が少なくなった。」

不動産信託は外部へのアウトソーシングです。民事信託では親族内での財産管理の問題があり、ご家族に負担が残ります。財産は大切ですが、家族はそれ以上に大切な存在です。お客さまの状況に応じた提案を受け入れていただき、実践し、成果が出ますと、喜びを感じることができるやりがいのある仕事です。

【対談を通じて】

石垣 さて、本対談もいよいよ終わりに近づいてきましたが、前編、中編、後編と3回にわたる対談を通じて何かご感想がありましたら、お話していただけますか?

鈴木 対談を通じての感想として、信託はとても良い制度ですが、世間一般に広報されているのは信託の組成手法や信託を活用した問題解決方法の紹介等が中心であり、お客様(委託者兼受益者)目線が主であるように思います。もちろん、そこは顧客重視で良いのですが、信託契約で最も重要になるのは民事信託でも商事信託でも「受託者の役割」(※16)です。今回の対談のように受託者の資質や特性、業務の遂行能力などに焦点を当てていただくことは従来なかったことですので大変ありがたく思っております。

石垣 そう受け止めていただけますと、企画した方としても、とてもありがたいです。受託者にフォーカスすることは、顧客が信託会社を選ぶときに必要なもう一つの顧客目線を提供することになるのではないでしょうか。商事信託、民事信託、いずれの場合も、どのように優れた信託契約書を作っても、受託者が機能しませんと、まったく意味をなしません。信託の社会的普及も叶いません。今後、信託のより一層の普及促進を図るという点からは、既に課題解決の実践されていることを含みますが、私は次のようなことを現状の課題と考えています。

≪民事信託≫

● 民事信託は、「信託の当事者および関係者の学び」の場を信託前と信託後でどのように作り出すか、「信託の民主化」の観点からは一部の専門家だけに知識やノウハウが偏ることは好ましくない。広く伝える方法をこれまで以上に検討する。
● 受益者の利益のため、信託を管理運用する受託者を支える体制をどう構築するか、
● 民事信託の設定しかできないケースを除き商事信託との比較検討の実施、組み合わせをどう図るか、

≪商事信託≫

● 商事信託は、信託会社は民事信託と比べると管理運用体制が整っており、受託者の生命リスク、健康リスクがなく、信託に継続的な安定をもたらす。この利点とともに、信託会社の専門性をどのように潜在的顧客に知らせるか、
● または、どのようにして潜在的顧客からのアプローチを受けやすくするか、
● また、信託会社は事業採算性を考慮しながら、富裕層だけでなく、どの層にまで信託業務を広げることができるか、

といったことです。こうした課題解決のためには、信託をよく知る人を増やす土壌作りの必要性を感じています。この対談企画もその取り組みの一つです。

【今後の展望】

石垣 さて、最後になりましたが、スターツ信託さんの今後の展望について、信託を社会に広げるという視点をまじえて、お話していただけますでしょうか?

渡邊 お陰様で、当社は、昨年度、土地信託受託件数で日本一となりました。そこでこのストック数を拡大し続けることに注力します。そのためにスターツグループのお客様はもちろんですが、グループ以外で信託を必要としている方々に如何に有益な情報をお届けできるかが使命と感じています。

信託を必要とする主な方は、
①不動産経営で、今、悩んでいる方
②子どもに財産を引き継いだ後、経営に問題有りと悩んでいる方
③子どもへの継承をよりスムーズにしたい方
④不動産が共有名義で悩んでいる方
⑤建築はしたいが借入の連帯保証人がいない方
となります。

日本の社会には、このようなお悩みを抱えている方がまだまだ沢山いらっしゃいます。

そのお悩み解決のため、手遅れとなる前に如何に早く正確な情報をお届け出来るかこれからも工夫をして行きたいと思います。
ご覧頂いている皆様の周囲でお困りの方がいらっしゃいましたら、是非、信託のご案内をお願い致します。

この度は、この様な対談の機会を頂きありがとうございました。
微力ながら不動産をお持ちの方々のお悩みに寄り添えるようにこれらからも努めて参ります。

【むすびに代えて】

石垣 本年6月末の準備開始から、これまでに何度もお付き合いいただき、既存の書籍やセミナーではあまり知ることができないことに、お二人が丁寧にお答えいただけましたことは、一つの社会貢献をしてくださったという思いでとても感謝しております。そして、本企画が不動産信託に関心のある方々の実践面でのご理解の一助となりましたら幸いです。

読者の皆様方におかれましては、最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。

(2020年10月 対談)

執筆者

石垣 雄一郎いしがき ゆういちろう

税理士、信託ナビゲーター

略歴・経歴

税理士資格取得後、不動産会社で17年間上場企業の新規開拓や中小企業、個人不動産オーナー向けの営業や新規プロジェクトの立ち上げ支援業務を担当。ダンコンサルティング(株)では、不動産や株式を主とした民事信託等の浸透に関するコンサルティング業務に従事しながら全国各地からの依頼で信託の実践や活用に関する講演活動も行っている。民事信託のスキームの提案を実施し、不動産会社等にも顧問として信託の活用法を具体化する支援を行っている。

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