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倒産2020年04月16日 “コロナ・ショック”で遠のく金融仲介機能の正常化(後編) 帝国データバンク情報部長 中森貴和が企業情報を斬る! 執筆者:中森貴和

「新型コロナウイルス関連倒産」の行方は

 ところで、「新型コロナウイルス関連倒産」だが、すでに全国で旅館・ホテルや旅行会社、クルーズ船運営、アパレル、食品、そして飲食関連など56社(4月15日時点)が倒産、もしくは事業停止に至っている。
 業種的にはやはり不特定の利用者を対象にする「集客型」業界の影響が大きい。外食、小売りなどの消費関連の需要が消失、大半は戻らないだけにダメージは計り知れない。いち早く悪影響を受けたのは中国からのインバウンド需要を失った旅館やホテル、ツアーバス、そのほか観光関連などだ。政府の自粛要請に基づいて様々なイベントが中止や延期、規模縮小を余儀なくされる事態も相次いでいる。専門店などの小売やキャンセルが相次いでいる飲食店のほか、アパレルは暖冬による極度の不振に今回の新型コロナが追い打ちをかけている。また、製造業もサプライチェーンの寸断や中国など世界需要の激減で大きなダメージを受ける。このように直接、間接的にとにかく幅広い業種に様々な影響を及ぼしているが、こうしたしわ寄せは中小零細業者に集中していく。
 因みに、新型コロナウイルス関連倒産は、①以前から中国依存で中国経済の減速、インバウンド需要の減少で業績が落ち込んでいたところへ追い打ち②コロナウイルス禍の影響を受けて、タイムラグを経て資金繰りが詰まる③後継者難、事業の将来性から今回を機に事業継続を断念、破産、もしくは廃業――と大きく3パターンに分類できる。これまで発生している関連倒産の多くは、①の「追い打ち、ダメ押し型」に該当し、時間の経過とともに②のコロナの影響を受けた本来の形へ移行することになる。そして、後継者難などにコロナ禍がトリガーを引く③のパターンは、①、②ともにセットになるケースが増えていくと見られる。

倒産、廃業は引き続き緩やかな増加トレンドか

 新型コロナ関連の融資に対しては、やはり各金融機関とも戸惑いを隠せない。政府と金融庁の意向から当初は「とりあえず信用保証協会の保証枠を使って融資、保証枠がなくなったら、リスケで対応するしかない」(大手信金幹部)とのスタンスを取っていたが、その後、民間金融機関による実質無担保・無利子融資や国の利子補填など政府がさらに踏み込んだ支援策を打ち出したことで、リスキーな融資にも応じざるを得ない。なかには新型コロナウイルスの影響を疑う事例があっても無下には断れず、その結果、いきなり資金繰りが詰まって倒産に至るケースは限定的になろう。
 手元資金はせいぜい1~2カ月程度の中小企業だけに公的融資が行き渡る前に資金ショートに陥る事態も想定されるが、当面は、コロナ関連倒産は封じ込められ、断続的な発生はあっても倒産ラッシュは回避される公算が大きい。
 但し、緊急融資によってとりあえずの資金繰りにメドをつけたとしても、低利や無利子とはいえ借入金であり、いずれは返済しなければならない。そうであれば、先述の③に当たる後継者難、もしくは事業の将来性が見通せないと判断し、今回のコロナ・ショックを機に「廃業」の選択をするケースがかなりの数にのぼるかもしれない。また、債務が膨らまないうちに法的整理に踏み切るケースもあり、抑制されつつも倒産件数が積み上がる可能性もある。
 直前まで好景気だったリーマン・ショック時と今回を比較すると、当時はまずは大手企業が影響を受け、その後に下請け、中小企業へ波及する構図だった。ところが今回は中国経済の減速や消費増税、台風、暖冬、人件費高騰などによって、すでに疲弊していた中小企業を直撃したことで、リーマン・ショックより遥かにその衝撃は大きい。1997年からの金融危機時に施行された30兆円枠の「中小企業金融安定化特別保証制度」やリーマン・ショック後の中小企業金融円滑化法の施行後には大幅に倒産件数は減少に転じたが、今回も同様に減少傾向を辿るとは限らないわけだ。ただ、コロナ関連倒産は、かなり長期に亘って発生し続けることは間違いないだろう。
 また、コロナ・ショックが長期化すれば、地域金融機関の体力と救済が限界に達し、企業側も耐え切れなくなり、貸し手、借り手ともに息切れする懸念が募る。
 ようやく与信システムが正常化へ向けて動き出した矢先のコロナ・ショック。この未知の危機を前にして金融機関の現場はかつてないほどの混乱に直面しているが、コロナ終息後、一定のタイムラグを経て、かなりの融資先の処理に着手せざるを得ないだろう。ただ、いつ再び、与信機能が正常化へ向かうのか、今のところ全く見通すことはできない。

(2020年4月執筆)

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執筆者

中森 貴和なかもり たかかず

株式会社帝国データバンク 名古屋支店情報部長

略歴・経歴

これまでに、「危ない会社の見分け方」「最近の倒産動向と今後の見通し」「粉飾決算の見分け方」「中小企業金融円滑化法の出口戦略」などの与信管理系セミナーのほか、「ゼネコン業界の現状と見通し」「金融再編の行方とその影響」「新興ベンチャーの経営リスク」などの業界セミナー、「企業の成長の条件」など経営者向けセミナーなど数多くの実績を有する。

職歴・経歴
1959年 東京都生まれ
1981年 専修大学経済学部卒業後、新聞社に就職
1985年 帝国データバンク本社情報部に入社
     同部署で情報取材課課長補佐、同課長を歴任
2009年 名古屋支店情報部長に就任、現在に至る。

セミナー実績
・「中小企業金融円滑化法の出口戦略」
・「粉飾決算の見分け方」など多数

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