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倒産2020年04月14日 “コロナ・ショック”で遠のく金融仲介機能の正常化(前編) 帝国データバンク情報部長 中森貴和が企業情報を斬る! 執筆者:中森貴和

 年初来、新型コロナウイルスが未曽有のパンデミックを引き起こし、世界を大きく揺るがせている。わが国では消費増税や天候不順、インバウンド需要の減少、そして米中摩擦によって昨年後半からマクロ景気は減速モードが増していただけに、今回のコロナウイルス禍がもたらす経済的ダメージは計り知れない。川上から川下まで幅広い業界に悪影響を及ぼしているが、なかでも中小企業は業種を問わず存続自体が脅かされ、すでに負債規模は限定的なものの「新型コロナウイルス関連倒産」も頻発している。
 実は企業倒産は2019年3月末の中小企業金融円滑化法の実質終了や12月の金融検査マニュアルの廃止を受けて大きく潮目が変わり、経営不振企業の整理や金融機関の不良債権処理がようやく進み始め、倒産件数は昨年後半から本格的な増加に転じていた。
 そうしたところに今回の新型コロナウイルスの感染拡大が世界経済を直撃、わが国でも政府・金融当局が即座に前例のない大規模な中小企業の資金繰り対策に乗り出すことになり、金融機関の融資・与信の現場では大きな混乱が生じている。

増加トレンドへ潮目変わった企業倒産

 それでは、まずは昨年の後半から大きく潮目が変わった企業倒産を巡る動きを振り返る。倒産件数は中小零細企業を中心に2019年に本格的な増加トレンドへ転換、今年3月まですでに7カ月連続で前年を上回っている。
 潮目の変化の要因は、後継者難や将来への見通しが立たないことから事業継続をあきらめる経営者が顕在化してきたことがある。さらに、中小企業金融円滑化法の実質終了や金融検査マニュアルの廃止によって金融機関の支援スタンスにも変化が見え始めていたことから、長らく延命されてきた倒産予備軍が炙り出されてきた格好だ。
 こうしたなか、「倒産への動きが表面化してから、倒産までのスピードが速くなっている」(大手地銀審査部)という。倒産に直結する事前情報がないまま倒産に至るケースが増えているわけだが、背景には「与信管理体制の緩み」がある。ここ10年余り、金融機関は中小企業金融円滑化法の縛りによってほぼ無条件で返済猶予に応じてきた。その結果、日常的な取引先のチェックが疎かになり、金融機関や大手商社などの審査・与信機能がマヒ状態に陥り、それが企業の新陳代謝を阻むだけでなく、「倒産メカニズム」そのものを崩してしまったのだ。つまり、倒産の兆候がなかったわけではなく、情報をキャッチできなかったのである。
 与信管理の緩みとその弊害に直面する象徴が地方銀行である。地銀はマイナス金利や融資先の減少で信用度の低い融資や管外への進出を強いられ、審査部門の人員削減も相まって「融資審査が甘くなり、目が行き届かなくなった」(中堅地銀幹部)。かといって業績や担保に捉われない“目利き力”、事業評価は容易ではなく、案の定、与信コストが急増している。

相次ぐ粉飾決算の発覚

 地銀といえば、融資先で粉飾決算の発覚が相次いでいる。手口は売掛金や在庫の過大計上から循環取引による売上の水増しなど様々だが、最近は複数の「銀行借入明細」を作成し、融資先に窮する金融機関から巧みに融資を引き出す手口が横行している。こうした粉飾は10年ほど前から始まっていたケースが大半を占める。例えば、10年に亘る粉飾で年商は公表の半分、実態は大幅な債務超過だった人気アパレル小売チェーンのリファクトリィ(東京、負債約60億円)では地銀など約20もの金融機関が融資を行っていたが突然、民事再生法を申請、大きな衝撃が走った。リーマン・ショック以降、実態は業績が回復していないにもかかわらず粉飾で回復を装い続け、銀行はそれを見抜けない。まさに与信管理機能の極度のマヒであり、経済の根幹を成す金融仲介機能の喪失である。
 一旦、緩んでしまった与信システムを立て直すのは容易ではなく、再構築のためには、かなりの時間とコスト、そして多額の不良債権という痛みを覚悟しなければならないだろう。
 いずれにせよ、金融機関の融資先に対する与信スタンスは確実に正常化していく。その過程でこれまでの先送りのツケを払いつつ、緩やかながらもかなりの数の中小零細企業が淘汰され、地域金融機関の最終処理が断行されると見られていた。

コロナ禍で「金融円滑化法」復活へ

 ところが、今回のコロナウイルス禍が局面を大きく変える。2月からの感染症の急拡大に伴って、瞬時に世界中でヒトの移動、消費活動が止まり、モノ、カネへと波及、わが国でもコロナ・ショック直後から、一斉に産業界から悲鳴が上がった。
 そこで3月初旬、政府は早々に中小企業向けの緊急資金繰り対策の実施を表明した。金融庁は各金融機関トップに直接、電話を入れて支援を要請、実行件数の定期的な報告を求めた。極めて異例である。某地銀幹部は「表現はともかく、ニュアンスとしては有無を言わせず融資先を救済してほしい」と捉えたという。そうであれば業績や規模を問わず、すでに延滞先であっても支援せざるを得ない。まさに“中小企業金融円滑化法の復活”であり、「金融検査マニュアルが廃止され、名実ともに終わったはずの金融モラトリアムに逆戻りする」(地銀融資担当)ことで再び、与信システムはフリーズ状態に陥る。
 その後、政府は具体的な支援策を打ち出している。その骨子は、自然災害など非常事態時に売上高が前年同月比20%以上減少したケースで信用保証協会が借入債務を100%保証する「セーフティネット保証4号」を一般枠とは別に保証枠を最大2.8億円まで拡充。さらに、信用保証協会が借入債務を80%保証するに構造不況業種向けの「セーフティネット保証5号」も業種を大幅に拡大、保証枠も同様に最大2.8億円まで広げた。
 そのほか、日本政策金融公庫が中小企業、個人事業主向けに実質無利子・無担保融資の「新型コロナウイルス感染症特別貸付」を実施、商工中金も危機対応融資によって資金繰りを支える。民間では地銀や信用金庫、信用組合を通じた無利子・無担保融資に政府が利子補填、最長5年の返済猶予期間を設ける。

(2020年4月執筆)

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執筆者

中森 貴和なかもり たかかず

株式会社帝国データバンク 名古屋支店情報部長

略歴・経歴

これまでに、「危ない会社の見分け方」「最近の倒産動向と今後の見通し」「粉飾決算の見分け方」「中小企業金融円滑化法の出口戦略」などの与信管理系セミナーのほか、「ゼネコン業界の現状と見通し」「金融再編の行方とその影響」「新興ベンチャーの経営リスク」などの業界セミナー、「企業の成長の条件」など経営者向けセミナーなど数多くの実績を有する。

職歴・経歴
1959年 東京都生まれ
1981年 専修大学経済学部卒業後、新聞社に就職
1985年 帝国データバンク本社情報部に入社
     同部署で情報取材課課長補佐、同課長を歴任
2009年 名古屋支店情報部長に就任、現在に至る。

セミナー実績
・「中小企業金融円滑化法の出口戦略」
・「粉飾決算の見分け方」など多数

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