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経営・総務2019年11月07日 特別企画:「後継者難倒産」の動向調査(2019年1~9月累計) 出典:帝国データバンク

後継者難倒産、前年同期比 12.8%増~ 事業承継問題の深刻化で、年間最多を更新する勢い ~

はじめに

 企業経営者の高齢化が進むなか、政府は2021年までの5年間を中小企業の事業承継支援の集中期間と定めている。中小企業庁は昨年10月、中小企業の経営者、後継者、支援機関などを一堂に会した「全国事業承継推進会議」を開催。以降も、今年に入り各地で地方ブロック会議が開催されるなど、より積極的な支援に乗り出している。一方、後継者が不在の企業では、経営者の突然の体調不良や死亡などを機に事業遂行不能となり、倒産に追い込まれるケースが散見されている。
 こうしたなか帝国データバンクでは、後継者不在のため事業継続の見込みが立たなくなったことなどを要因とした倒産(個人事業主含む、負債1000万円以上、法的整理)を「後継者難倒産」と定義し、2019年1~9月に発生した倒産について集計・分析した。

1.件数・負債総額

 2019年1~9月累計の後継者難倒産は325件発生し、前年同期比12.8%の増加となった。件数は2年連続で前年同期を上回り、調査を開始した2013年1月以降、1~9月累計としては過去最多で、年間最多だった2013年の411件を更新するペースで推移している。また、負債総額は前年同期比1.2%の微減で、333億8300万円にのぼった。
 2019年1~9月累計の倒産件数全体(6137件)が前年同期を2.6%上回るなか、後継者難倒産の増加率(12.8%)は、それをさらに上回っている。
 調査開始以降の6年9カ月間累計では、件数は2539件、負債総額は3525億4800万円にのぼった。

2.負債規模別

 負債規模別件数をみると、2019年1~9月累計は負債「1億円未満」が228件と、前年同期比15.7%増加し、構成比は7割超を占め突出している。
 経営者個人に経営ノウハウや取引先、人脈などを大きく依存する小規模企業では、経営者の突然の体調不良や死亡などを機に業績不振に陥り、倒産に追い込まれるケースが目立つ。また、後継者不在で廃業を当初予定していたものの、資産売却によっても債務を整理できず、円滑な廃業を選択できなくなった企業などによる倒産も散見されている。

3.業歴別

 業歴別件数では、2019年1~9月累計は業歴「30年以上」で最多の166件(構成比51.1%)発生し、過半を占めた。比較的若い経営者が多い業歴「10年未満」でも34件(前年同期比21.4%増)と散発し全体の1割を占めるなど、業歴を問わず後継者難問題は深刻化しているといえる。

4.まとめ

 2019年1~9月累計の後継者難倒産は325件発生し、前年同期比12.8%の増加。負債総額は333億8300万円にのぼることが明らかとなった。代表の体調不良などをきっかけに業績不振に陥り、事業継続を断念せざるを得なくなった企業や、後継者不在で廃業を当初予定していたものの、債務を整理できず倒産に追い込まれた企業などが目立つ。デリケートな要因であるため、とくに零細企業の倒産などでは、取材時に判明し難いケースもあることから、実態ではさらに多くの後継者難倒産が発生しているものと推察される。
 経済産業省は今年8月、来年度の経済産業政策の重点や税制改正の要望ポイントを公表し、親族以外の第三者による事業承継の促進や、事業承継時の経営者保証を不要とする新たな信用保証メニュー創設などを掲げた。円滑な事業承継に向けた施策は年々厚みを増してきているものの、経営者の高齢化や後継者不在が進むなか、今後も後継者難倒産は増加基調で推移する可能性が高く、その動向が注目される。

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