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一般2020年10月05日 特別企画:都内に本店を置く23信用金庫預金・貸出金調査(2020年3月期) 出典:帝国データバンク

預金、貸付金ともに合計額は増加傾向続く
~西武信金の貸付金が大幅減~

1. はじめに
 10月1日、長崎県を基盤とする「十八銀行」と「親和銀行」が合併し「十八親和銀行」が誕生するほか、来年1月には新潟県を基盤とする「第四銀行」と「北越銀行」の合併も予定されるなど、引き続き地方銀行を中心に再編機運が高まっている。こうしたなか、信用金庫でも今年1月に宮崎県で「宮崎都城信用金庫」と「南郷信用金庫」が合併し「宮崎第一信用金庫」が誕生したほか、9月には石川県で「北陸信用金庫」と「鶴来信用金庫」が合併し「はくさん信用金庫」が誕生した。東京都の信用金庫については、2006年1月に3金庫が合併し「多摩信用金庫」が発足したのを最後に合併は行われておらず、今後に注目が集まっている。
 帝国データバンクでは、東京都内に本店を置く23の信用金庫の、預金積金残高、貸出金残高、自己資本比率、の推移について調査した。
1. 預金積金残高 ~23金庫合計で25兆5090億円
 2020年3月末時点の23金庫の預金積金残高の合計は25兆5090億8600万円となり、2019年3月末(25兆2033億1700万円)比で3057億6900万円増加(1.21%増)した。
 23金庫中19金庫(構成比82.6%)で預金積金を伸ばし、総預金積金残高の増加が続いている。
 2020年3月末時点で、預金積金残高が1兆円を超えているのは、3兆6934億円の「城南」、2兆8028億円の「多摩」、2兆4839億円の「城北」をはじめ、「西武」「東京東」「巣鴨」「朝日」「さわやか」「芝」「東京」の10金庫。
 前年比で最も預金積金残高の増加幅が大きかったのは、「東京」(5.33%増)。以下、「東京シティ」(5.02%増)、「世田谷」(3.57%増)と続いた。一方でマイナスとなったのは「東京三協」(2.18%減)や「西武」など4金庫だった。
 各金庫では、少子高齢化の進行といった社会の変化を踏まえ、高齢者や子育て世代向け商品を拡充するなど多様化する利用者のニーズや資金運用に対応するべく幅広い預金商品を取り揃えていることが増加に寄与している。増加率5.33%で23信金中トップとなった「東京」は、初めて1兆円の大台に乗せた。
2. 貸出金残高 ~23金庫合計で14兆481億円
 2020年3月末時点の23金庫の貸出金残高の合計は14兆481億5100万円となり、2019年3月末(14兆9億2800万円)比で472億2300万円増加(0.34%増)した。23金庫中21金庫(構成比91.3%)で貸出金残高を伸ばした。中小事業者向け融資に積極的に取り組んでいることなどが貸出金の増加につながっているものの、西武信用金庫の前期比9.98%の減少が影響し、全体でも同0.34%増(前年は1.85%増)と伸びは鈍化した。
 貸出金残高が1兆円を超えているのは、2兆2115億円の「城南」、1兆4981億円の「西武」、1兆2090億円の「城北」、1兆1388億円の「朝日」、1兆904億円の「多摩」、1兆138億円の「東京東」の6金庫。「朝日」が前年に続いて前年比5%以上の増加となった。
 前年比2ケタの伸びを記録した信金はなく、最も増加率が大きかったのは、「朝日」(5.58%増)。以下、「興産」(4.13%増)、「亀有」(3.86%増)が続いた。投資用不動産向け融資問題のあった「西武」は、2019年3月末で前年比0.14%増とこれまでの増加傾向(2017年3月末=15.76%増、2018年3月末=14.84%増)が鈍化していたが、2020年3月末では前年比9.98%減と大幅なマイナスとなった。その他、増加率がマイナスとなったのは「城北」で0.16%減となった。
3. 自己資本比率 ~平均9.58%と3年連続の10%割れ
 23金庫の平均自己資本比率を見ると、2017年3月末10.04%→2018年3月末9.83%→2019年3月末9.58%→2020年3月末9.58と3年連続で10%割れとなった。
 2020年3月末時点で23金庫中、最も自己資本比率が高かったのは「亀有」で15.47%。次いで「東栄」で11.14%、「西武」で11.00%となり、自己資本比率が10%を上回っているのは23金庫中9金庫となった。
 前年比で最も増加率が大きかったのは「西武」(1.34ポイント増)。そのほか増加したのは「さわやか」「西京」「東京」「青梅」「瀧野川」など12金庫。
 自己資本比率は引き続き全23金庫で国内基準の4%を上回ったもののほぼ横ばいとなっており、低金利政策が長期化するなか、経営の健全性確保に苦慮している様子がうかがえる。
4. 金融再生法上の不良債権
 23金庫の金融再生法上の不良債権の総額をみると、2020年3月末は4704億100万円となり、2019年3月末(4883億5700万円)比で179億5600万円減少した。2020年3月末時点で23金庫中16金庫が前年比減少、同7金庫が増加した。
 前年比で最も減少したのが「城北」の48億8400万円減。以下、「東京東」43億6300万円減、「瀧野川」31億3500万円減と続く。一方で、前年比で最も増加したのは「西武」の63億100万円増。以下、「東京」の7億8800万円、「芝」の4億4000万円、「東京シティ」2億7400万円と続く。
 また、23金庫の金融再生法上の不良債権に対する保全率をみると、98.88%で「朝日」がトップ。以下、「城南」98.80%、「昭和」98.55%、「世田谷」98.29%と23金庫中14金庫が90%を上回っている。一方で、「東京シティ」69.44%、「多摩」78.85%の2金庫は80%を下回った。
 前年比で最も低下したのは、8.29ポイント減の「目黒」。以下、「芝」5.84ポイント減、「興産」0.96ポイント減と続く。23金庫中、保全率が向上したのが14金庫、低下したのが9金庫。
5. まとめ
 信用金庫は、主な取引先が営業エリアの中小企業や個人事業者、地域住民であり、地域経済を支える役割を果たしている。東京都内に本店を置く23信用金庫の総貸出金残高は、23金庫中21金庫で貸出金残高を伸ばしたものの、貸出金合計の増加率は1.21%と前年度末の1.85%を下回った。一方で、中小企業金融円滑化法が終了した2013年3月末では、前年比で貸出金残高を伸ばした金庫が21金庫中8金庫にとどまっていたことに鑑みると、東京都における資金需要は依然として旺盛であるとみられる。
 ただし、近時は融資見直しを検討するケースも増えてきている。ここ数年大きな伸びを見せてきた西武信用金庫の貸付金は前年度から約10%減少した。投資用不動産向けの不正融資問題が発覚し、金融庁から業務改善命令を受け融資方針を見直したことが大きく影響した格好だ。
 菅内閣総理大臣は、自民党総裁選立候補時に、「将来的に地方の銀行は多すぎる」と発言し、合併特例法の施行を11月に控えるなか、地銀再編への注目度が高まっている。こうしたことから地銀の再編に注目が集まりがちだが、地域の金融機関という点では信用金庫も同様であり、今後再編への議論が高まることが予測される。一方で、現在コロナ関連の緊急融資が積極的に行われている影響で貸付金は増加が予想されていることに加え、預金についても外出自粛要請などの影響で個人の支出が抑えられていることから、例年以上に増加していることが予想されている。
 現在、新型コロナウイルス感染拡大の影響により都内信用金庫の営業エリアにおいても厳しい経営を余儀なくされている事業者は多く、各信用金庫も未曽有の事態に必死に対応している。信用金庫が地域に密着していることから、もし再編の機運が高まれば例年以上に各事業者に与える影響は大きく、動向が注目される。

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