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一般2020年08月27日 特別企画:人手不足に対する企業の動向調査(2020年7月) 出典:帝国データバンク

企業の人手不足感は4月以降3割前後で推移
~新型コロナウイルス拡大前の5割から大幅に減少~

はじめに
 生産年齢人口が減少するなか、近年は人手不足の解消が企業経営において最重要課題としてあげられている。また、人手不足によって倒産に追い込まれるケースも増加傾向にある。そのため、企業には常に生産性の向上などの「働き方改革」が求められている。一方で、新型コロナウイルスの影響で国内景気は厳しい水準で推移しており、採用の見送りや失業者の増加、労働者の減少などといった雇用動向に関する注目度はより一層増している。
 そこで、帝国データバンクは人手不足に対する企業の見解について調査を実施した。本調査は、TDB景気動向調査2020年7月調査とともに行った。
※調査期間は2020年7月16日~31日、調査対象は全国2万3,680社で、有効回答企業数は1万1,732社(回答率49.5%)。なお、雇用の過不足状況に関する調査は2006年5月より毎月実施しており、今回は2020年7月の結果をもとに取りまとめた。
※本調査の詳細なデータは景気動向オンライン(https://www.tdb-di.com)に掲載している。
1.正社員不足は30.4%、人手不足割合は前年同月から18.1ポイント減少
 現在の従業員の過不足状況を尋ねたところ(「該当なし/無回答」を除く)、正社員について「不足」していると回答した企業は30.4%となり、前年同月から18.1ポイント減少し7月としては4年ぶりの3割台に低下した。「適正」と回答した企業は46.8%で同4.6ポイント増加し、半数近くの企業が人手は適正と感じている。一方、「過剰」と回答した企業は22.9%で同13.6ポイント増となり、企業の過不足感は大きく変化している。
 「不足」していると回答した企業を業種別にみると、「建設」が51.9%(前年同月比15.6ポイント減)がトップとなり、唯一5割を上回った。次いで、「メンテナンス・警備・検査」(48.1%、同20.3ポイント減)、「教育サービス」(48.0%、同3.2ポイント増)、「農・林・水産」(47.1%、同17.8ポイント減)など7業種が4割台で続いた。上位となった10業種中で8業種は人手不足割合の大幅な減少がみられるなか、「教育サービス」と、スーパーマーケットを含む「各種商品小売」の2業種は増加している。教育サービスでは生徒の募集が困難であるとの声が多数を占めるなかで、「新型コロナウイルスの影響で授業等の日程が大幅に狂い、その調整に翻弄される状態が続いている」(専修学校、東京都)といった声もみられた。
 規模別にみると、「大企業」(36.9%)は前年同月比22.4ポイント減少となり、全体より減少幅が大きい。「中小企業」は28.9%(同17.0ポイント減)、「小規模企業」は30.3%(同11.8ポイント減)となり、いずれも10ポイント以上減少した。
2.新型コロナウイルスの影響が拡大した4月以降は3割前後で推移
 人手不足割合を月次の推移でみると、新型コロナウイルスの影響で緊急事態宣言が発出され経済活動が停滞した4月に、正社員の人手不足割合は大幅に減少した。緊急事態宣言が続いた5月もさらに減少し、5月25日の全国解除を経て6月以降も3割前後で推移している。非正社員も、4月以降はほぼ横ばいが続いている。業種による差はみられるものの、「営業案件が減り人手が余ってきている」(労働者派遣、大阪府)といった声があげられている。
3.非正社員不足は16.6%、正社員と同様に「過剰」の割合が大幅に増加
 非正社員が「不足」していると回答した企業(「該当なし/無回答」を除く)は16.6%となり(前年同月比13.2ポイント減)、2013年2月(16.6%)の水準まで減少した。「適正」は62.2%(同0.4ポイント減)でほぼ横ばいとなった一方で、「過剰」は21.2%(同13.5ポイント増)となり大きく増加している。
 業種別にみると、スーパーマーケットを含む「各種商品小売」は47.6%となり、最も高かった。
 前年同月より14.6ポイント減少したものの、他業種より割合が高かった。次いで、「教育サービス」(43.5%、同7.8ポイント増)が続き、正社員と同様に増加している。以下、「家具類小売」(40.0%、同5.5ポイント減)も4割台となったほか、「飲食店」(38.6%、同41.4ポイント減)、「飲食料品小売」(37.1%、同26.5ポイント減)、「メンテナンス・警備・検査」(36.7%、同18.1ポイント減)、「医薬品・日用雑貨品小売」(33.3%、同14.5ポイント減)、「娯楽サービス」(33.3%、同27.8ポイント減)などが3割台で続いた。
 規模別では、「大企業」は17.3%(同16.9ポイント減)、「中小企業」は16.4%(同12.1ポイント減)、「小規模企業」は17.2%(同11.0ポイント減)で、すべての企業規模で1割台となった。
 これまで人手不足の割合が1位で推移してきた「飲食店」では、2020年1月時点の76.9%から緊急事態宣言が発出された4月に大きく減少して16.4%となり、この間60.5ポイントの減少となった。緊急事態宣言が2020年5月25日に解除され徐々に客足が戻ったこともあり、7月は51業種中4番目に高い人手不足割合となった。同様に人手不足が顕著だった「旅館・ホテル」では、正社員・非正社員ともに2020年1月の時点で6割以上の企業で人手不足を感じていた。しかし、4月にかけて大きく減少した。飲食店は6月以降やや上昇傾向にある一方で、旅館・ホテルは1割台で横ばいの推移が続いている。
4.人手の「過剰」、「旅館・ホテル」が正社員・非正社員ともトップ
 新型コロナウイルスの影響で人手不足割合が大きく減少した一方で、人手を「過剰」としている割合は増加している。業種別にみると、「旅館・ホテル」が正社員・非正社員ともにトップとなり、「飲食店」も上位となった。また、自動車需要の落ち込みにより「輸送用機械・器具製造」も人手過剰割合が正社員・非正社員とも50%前後に増加した。
まとめ
 「TDB景気動向調査」(帝国データバンク)によると、7月の景気DIは29.1と前月から1.5ポイント増加し、国内景気は一部で持ち直しの動きがみられた一方、厳しい水準での推移が続いた。
 こうしたなか、正社員の人手不足を感じている企業は30.4%となり、7月としては4年ぶりに4割を下回った。非正社員は前年同月から13.2ポイント減少の16.6%となった。とりわけ「各種商品小売」は内食需要の拡大などもあり最も高くなっている。これまで人手不足割合が高水準だった「旅館・ホテル」「飲食店」はともに人手を「過剰」とする割合が高くなっている。
 新型コロナウイルスの影響により、5割前後で推移していた人手不足割合は3割まで減少した。しかし、企業からは「どの程度まで業務量が回復するかわからないが、潜在的にある人手不足は解決していない」(塗装工事、大阪府)といった声があり、新型コロナウイルスが収束に近づき業務量が増加する過程で再び人手不足に陥るケースも想定される。今後は、徐々に経済活動の制約が解除されていくなかで、人手不足割合がどのように推移するか注視する必要があろう。

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