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厚生・労働2020年04月30日 高年齢者の就業増加や副業解禁など、昨今の労働環境の変化に対応する改正! 法令ダイジェスト 雇用保険法等の一部を改正する法律(令和2年3月31日法律14号)

概要

多様化する就業ニーズに対応したセーフティネットの整備、就業機会の確保等を通じて、職業の安定と就業の促進等を図るため、雇用保険について、育児休業給付の失業等給付からの分離による位置付けの明確化、65歳以上の短時間複数就業者に対する適用等の措置を講ずるとともに、65歳から70歳までの高年齢者就業確保措置等による支援、大企業における中途採用比率の公表の義務化、複数就業者に対する労災保険の給付の拡充等の措置が講じられました。

施行

令和2年4月1日(一部の規定を除く。)

雇用保険法の一部改正関係

1)目的の改正
 労働者が子を養育するための休業をした場合に必要な給付を行うことにより、労働者の生活及び雇用の安定を図ることを雇用保険の目的として追加するものとされました。

2) 育児休業給付の新しい給付の体系への位置付け

〈1〉育児休業給付金について、失業等給付の雇用継続給付から削除するとともに、失業等給付とは別の章として育児休業給付の章を新設するものとされました。

〈2〉改正前の育児休業給付金に係る規定を削除するとともに、〈1〉で新設する章に同内容を規定するものとされました。

〈3〉失業等給付で措置されている未支給の失業等給付、返還命令等、受給権の保護及び公課の禁止の規定について、育児休業給付について準用するものとされました。

〈4〉国庫は、育児休業給付について、育児休業給付に要する費用の8分の1を負担するものとされました。

〈5〉一般保険料徴収額に育児休業給付率(1,000分の4の率を雇用保険率で除して得た率をいいます。)を乗じて得た額は、育児休業給付に要する費用に充てるものとされました。


3) 高年齢被保険者の特例

〈1〉次に掲げる要件のいずれにも該当する者が、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働大臣に申し出た場合には、申出を行った日から高年齢被保険者となることができるものとされました。

〈ア〉2以上の事業主の適用事業に雇用される65歳以上の者であること。

〈イ〉1の事業主の適用事業における1週間の所定労働時間が20時間未満であること。

〈ウ〉2の事業主の適用事業(申出を行う労働者の1の事業主の適用事業における1週間の所定労働時間が厚生労働省令で定める時間数以上であるものに限ります。)における1週間の所定労働時間の合計が20時間以上であること。

〈2〉事業主は、労働者が〈1〉の申出をしたことを理由として、労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないものとされました。


4) 被保険者期間の計算方法の改正
 被保険者期間が12か月(特定理由離職者及び特定受給資格者にあっては6か月)に満たない場合は、賃金の支払の基礎となった日数が11日以上であるもの又は賃金の支払の基礎となった時間数が80時間以上であるものを1か月として計算するものとされました。

5) 高年齢雇用継続給付の改正
 高年齢雇用継続基本給付金及び高年齢再就職給付金の額は、各支給対象月に支払われた賃金の額に100分の10(賃金の額が、みなし賃金日額に30を乗じて得た額の100分の64に相当する額以上であるときは、みなし賃金日額に30を乗じて得た額に対する賃金の額の割合が逓増する程度に応じ、100分の10から一定の割合で逓減するように厚生労働省令で定める率)を乗じて得た額とするものとされました。

6) 雇用安定事業の改正
 高年齢者就業確保措置の実施等により高年齢者の雇用を延長する事業主に対して、必要な助成及び援助を行うことについて、雇用安定事業として行うことができるものとされました。

7) 会計法の特例
 年度の平均給与額が修正されたことにより、厚生労働大臣が自動変更対象額、控除額又は支給限度額を変更した場合において、変更に伴いその額が再び算定された失業等給付及び育児休業給付があるときは、これらに係る未支給の失業等給付及び育児休業給付の支給を受ける権利については、会計法第31条第1項の規定を適用しないものとされました。

8) 報告徴収及び立入検査の対象の追加
 報告徴収及び立入検査の対象に、被保険者等を雇用し、又は雇用していたと認められる事業主を追加するものとされました。

9) 国庫負担の改正

〈1〉令和2年度及び令和3年度の各年度における失業等給付、育児休業給付等の支給に要する費用に係る国庫の負担額については、国庫が負担すべきこととされている額の100分の10に相当する額とするものとされました。

〈2〉雇用保険の国庫負担については、引き続き検討を行い、令和4年4月1日以降できるだけ速やかに、安定した財源を確保した上で雇用保険法附則第13条に規定する国庫負担に関する暫定措置を廃止するものとされました。

労働者災害補償保険法の一部改正関係

1) 目的の改正
 事業主が同一人でない2以上の事業に使用される労働者(以下「複数事業労働者」といいます。)の2以上の事業の業務を要因とする事由による負傷、疾病、障害又は死亡に対して迅速かつ公正な保護をするため、必要な保険給付を行い、あわせて、複数事業労働者の2以上の事業の業務を要因とする事由により負傷し、又は疾病にかかった労働者の社会復帰の促進、労働者及びその遺族の援護、労働者の安全及び衛生の確保等を図り、もって労働者の福祉の増進に寄与することを労働者災害補償保険の目的として追加するものとされました。

2) 複数事業労働者に対する新たな保険給付の創設
 業務災害に関する保険給付及び通勤災害に関する保険給付と並び、複数事業労働者の2以上の事業の業務を要因とする負傷、疾病、障害又は死亡に関する保険給付を創設するものとされました。

3) 給付基礎日額の算定方法の特例
 複数事業労働者の業務上の事由、複数事業労働者の2以上の事業の業務を要因とする事由又は複数事業労働者の通勤による負傷、疾病、障害又は死亡により保険給付を行う場合は、複数事業労働者を使用する事業ごとに算定した給付基礎日額に相当する額を合算した額を基礎として、厚生労働省令で定めるところによって政府が算定する額を給付基礎日額とするものとされました。

4) 会計法の特例
 年度の平均給与額等が修正されたことにより、厚生労働大臣が労働者災害補償保険法第8条の2第1項第2号に規定する厚生労働大臣が定める率、同法第8条の3第1項第2号に規定する厚生労働大臣が定める率等を変更した場合において、変更に伴いその額が再び算定された保険給付があるときは、保険給付に係る未支給の保険給付の支給を受ける権利については、会計法第31条第1項の規定を適用しないものとされました。

労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律の一部改正関係

1) 国の施策
 国が総合的に取り組まなければならない事項として、次に掲げるものを追加するものとされました。

〈1〉労働者の職業選択に資するよう、雇用管理若しくは採用の状況その他の職場に関する事項又は職業に関する事項の情報の提供のために必要な施策を充実すること。

〈2〉高年齢者の職業の安定を図るため、高年齢者雇用確保措置等の円滑な実施の促進のために必要な施策を充実すること。


2)中途採用に関する情報の公表を促進するための措置等

〈1〉常時雇用する労働者の数が300人を超える事業主は、厚生労働省令で定めるところにより、雇い入れた通常の労働者等に占める中途採用により雇い入れられた者の割合を定期的に公表しなければならないものとされました。

〈2〉国は、事業主による〈1〉の割合その他の中途採用に関する情報の自主的な公表が促進されるよう、必要な支援を行うものとされました。

労働保険の保険料の徴収等に関する法律の一部改正関係

1) 労災保険率の算定方法の改正
 複数事業労働者の場合における労災保険率の算定方法について所要の規定の整備を行うものとされました。

2) 雇用保険率の弾力的変更の算定方法の改正
 労働保険特別会計の雇用勘定の積立金の状況による雇用保険率の変更に係る算定において、教育訓練給付の額と雇用継続給付の額を除いて算定するとともに、算定で用いる国庫の負担額から育児休業給付に要する費用に係る国庫の負担額を除き、算定で用いる徴収保険料額から一般保険料徴収額に育児休業給付率(1,000分の4の率を雇用保険率で除して得た率をいいます。)を乗じて得た額を新たに除くものとされました。

3) 二事業率の弾力的変更の範囲の改正
 労働保険特別会計の雇用勘定における雇用安定資金の状況による雇用保険率の変更が行われた場合において、厚生労働大臣は、雇用安定資金の状況に鑑み、必要があると認めるときは、労働政策審議会の意見を聴いて、1年以内の期間を定め、雇用保険率を変更された率から1,000分の0.5の率を控除した率に変更することができるものとされました。

4)雇用保険率の改正
 令和2年度及び令和3年度の各年度における雇用保険率については、1,000分の13.5(うち失業等給付に係る率1,000分の6)(農林水産業及び清酒製造業については1,000分の15.5(同1,000分の8)、建設業については1,000分の16.5(同1,000分の8))とするものとされました。

高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部改正関係

〈1〉定年(65歳以上70歳未満のものに限ります。以下同じです。)の定めをしている事業主等は、その雇用する高年齢者等について、次に掲げる措置を講ずることにより、65歳から70歳までの安定した雇用を確保するよう努めなければならないものとされました。ただし、事業主等が、労働者の過半数を代表する者等の同意を厚生労働省令で定めるところにより得た創業支援等措置を講ずることにより、その雇用する高年齢者等について、定年後等から70歳までの間の就業を確保する場合は、この限りでないものとされました。

〈ア〉定年の引上げ

〈イ〉65歳以上継続雇用制度(その雇用する高年齢者等が希望するときは、高年齢者等をその定年後等に引き続いて雇用する制度をいいます。〈3〉及び〈4〉において同じです。)の導入

〈ウ〉定年の定めの廃止

〈2〉〈1〉の創業支援等措置は、次に掲げる措置をいうものとされました。

〈ア〉その雇用する高年齢者等が希望するときは、高年齢者等が新たに事業を開始する場合等に、事業主が、事業を開始する高年齢者等との間で、事業に係る委託契約等(労働契約を除き、委託契約等に基づき事業主が事業を開始する高年齢者等に金銭を支払うものに限ります。)を締結し、委託契約等に基づき高年齢者等の就業を確保する措置

〈イ〉その雇用する高年齢者等が希望するときは、次に掲げる事業(〈b〉又は〈c〉の事業については、事業主と事業を実施する者との間で、事業を実施する者が高年齢者等に対して事業に従事する機会を提供することを約する契約を締結したものに限ります。)について、事業を実施する者が、高年齢者等との間で、事業に係る委託契約等(労働契約を除き、委託契約等に基づき事業を実施する者が高年齢者等に金銭を支払うものに限ります。)を締結し、委託契約等に基づき高年齢者等の就業を確保する措置

 〈a〉事業主が実施する社会貢献事業(社会貢献活動その他不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与することを目的とする事業をいいます。〈b〉及び〈c〉において同じです。)

 〈b〉法人その他の団体が事業主から委託を受けて実施する社会貢献事業

 〈c〉法人その他の団体が実施する社会貢献事業であって、事業主が社会貢献事業の円滑な実施に必要な資金の提供その他の援助を行っているもの

〈3〉65歳以上継続雇用制度には、事業主が、他の事業主との間で、事業主の雇用する高年齢者等であってその定年後等に雇用されることを希望するものを、その定年後等に他の事業主が引き続いて雇用することを約する契約を締結し、契約に基づき高年齢者等の雇用を確保する制度が含まれるものとされました。

〈4〉厚生労働大臣は、〈1〉に掲げる措置及び創業支援等措置(〈5〉において「高年齢者就業確保措置」といいます。)の実施及び運用(心身の故障のため業務の遂行に堪えない者等の65歳以上継続雇用制度及び創業支援等措置における取扱いを含みます。)に関する指針を定めるものとされました。

〈5〉厚生労働大臣は、高年齢者等職業安定対策基本方針に照らして、高年齢者の65歳から70歳までの安定した雇用の確保その他就業機会の確保のため必要があると認めるとき等に、事業主に対し、高年齢者就業確保措置の実施について必要な指導及び助言をすること並びに高年齢者就業確保措置の実施に関する計画の作成等を勧告することができるものとされました。

〈6〉事業主による厚生労働大臣への報告事項に、創業支援等措置等に関する状況を追加するものとされました。

検討

〈1〉政府は、中途採用に関する情報の公表を促進するための措置等の施行後5年を目途として、その施行の状況を勘案しつつ検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとされました。

〈2〉政府は、高年齢被保険者の特例の施行後5年を目途として、高年齢被保険者の特例の適用の状況、これにより高年齢被保険者となった者に対するこの法律による改正後の雇用保険法に基づく給付の支給状況等を勘案しつつ、2以上の事業主の適用事業に雇用される労働者に対する同法の適用等について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとされました。

以 上

新日本法規出版株式会社
(2020年4月)

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