所得税2024年04月11日
所得税・個人住民税の定額減税を実施! 法令ダイジェスト
所得税法等の一部を改正する法律 (令和6年3月30日法律8号)
地方税法等の一部を改正する法律 (令和6年3月30日法律4️号)

概 要
賃金上昇が物価高に追いついていない国民の負担を緩和し、物価上昇を上回る持続的な賃上げが行われる経済の実現を目指す観点から、個人所得課税、法人課税等について所要の改正が行われました。
施 行
令和6年4月1日(一部の規定を除く。)
個人所得課税
1)所得税・個人住民税の定額減税
令和6年分の所得税・令和6年度分の個人住民税について、納税者及び配偶者を含めた扶養親族1人につき、所得税3万円・個人住民税1万円を控除することとされました(納税者の合計所得金額が1,805万円以下である場合に限ります。)。
2)ストックオプション税制の利便性向上
スタートアップが付与したストックオプションの場合に、年間の権利行使価額の限度額を最大で3,600万円に引き上げることとされました。
3)住宅ローン控除の拡充
住宅ローン控除について、令和6年限りの措置として、子育て世帯等に対し、借入限度額を、認定住宅は5,000万円、ZEH水準省エネ住宅は4,500万円、省エネ基準適合住宅は4,000万円へと上乗せすることとし、新築住宅の床面積要件を、合計所得金額1,000万円以下の者に限り40㎡に緩和することとされました。
資産課税
1)法人版事業承継税制の特例措置に係る特例承継計画の提出期限の延長
法人版事業承継税制の特例措置について、特例承継計画の提出期限を2年延長することとされました。
法人課税
1)賃上げ促進税制の強化
〈1〉従来の大企業向けの措置について、税額控除率の上乗せ措置(賃上げ4%以上に対して5%、5%以上に対して10%、7%以上に対して15%、プラチナくるみんやプラチナえるぼしの認定を受けている場合に5%等)等の見直しを行った上、その適用期限を3年延長することとされました。
〈2〉従来の大企業のうち従業員数が2,000人以下の法人について、3%以上の賃上げを行ったときは、その 10%の税額控除ができる中堅企業向けの措置を加えることとされました。この場合において、4%以上の賃上げを行ったときは 15%、教育訓練費の増加割合が 10%以上等であるときは5%、プラチナくるみんやえるぼし(3段階目)以上の認定を受けているときは5%を税額控除率に加算することとされました。
〈3〉中小企業向けの措置について、教育訓練費に係る税額控除率の上乗せ措置について、教育訓練費の増加割合が5%以上等である場合に適用できることとし、くるみんやえるぼし(2段階目)以上の認定を受けた場合に税額控除率に5%を加算する措置を加え、5年間の繰越控除制度を設けた上、その適用期限を3年延長することとされました。
〈4〉法人事業税付加価値割における雇用者給与等支給額の対前年度増加額を付加価値額から控除する措置について、法人税の賃上げ促進税制の見直しに合わせ、適用要件等の見直しを行った上、その適用期限を3年延長することとされました。
2)戦略分野国内生産促進税制の創設
産業競争力強化法(改正を前提)の認定事業適応事業者が、産業競争力基盤強化商品生産用資産の取得等をしたときは、その認定の日以後10年以内の日を含む各事業年度において、その産業競争力基盤強化商品生産用資産により生産された産業競争力基盤強化商品のうちその事業年度の対象期間において販売されたものの数量等に応じた金額の税額控除ができることとされました。
3)イノベーションボックス税制の創設
国内で自ら研究開発した知的財産権(特許権、AI関連のプログラムの著作権)から生ずる譲渡所得、ライセンス所得のうち、最大30%の金額について、その事業年度において損金算入できることとされました。
4)中小企業事業再編投資損失準備金制度の拡充
中小企業事業再編投資損失準備金制度について、複数回のM&Aを実施する場合において、その株式等の取得価額に90%又は100%を乗じた金額以下の金額を中小企業事業再編投資損失準備金として積み立てたときは、その積み立てた金額は、その事業年度において損金算入できる措置が加えられました。
5)第三者保有の暗号資産の期末時価評価課税の見直し
譲渡についての制限その他の条件が付されている暗号資産の期末における評価額は、原価法または時価法のうちその法人が選定した評価方法により計算した金額とするほか、所要の措置を講ずることとされました。
6)交際費から除外される飲食費に係る見直し
交際費等の損金不算入制度について、損金不算入となる交際費等の範囲から除外される一定の飲食費に係る金額基準を1人当たり5,000円以下から1万円以下に引き上げることとした上、その適用期限を3年延長することとされました。
消費課税
1)プラットフォーム課税の導入
〈1〉国外事業者がデジタルプラットフォームを介して国内向けに行うデジタルサービスについて、国外事業者の取引高が50億円超のプラットフォーム事業者を対象に、プラットフォーム事業者に消費税の納税義務を課す制度を導入することとされました。
〈2〉あわせて、国外事業者により行われる事業者免税点制度や簡易課税制度を利用した租税回避を防止するため、必要な制度の見直しを行うこととされました。
国際課税
1)非居住者に係る暗号資産等取引情報の自動的交換のための報告制度の整備等
OECDにおいて策定された暗号資産等報告枠組み(CARF)に基づき、租税条約等により各国税務当局と自動的に交換するため、国内の暗号資産取引業者等に対し非居住者の暗号資産に係る取引情報等を税務当局に報告することを義務付ける制度を整備することとされました。
納税環境整備
1)GビズIDとの連携によるe-Taxの利便性の向上
法人が、GビズID(一定の認証レベルを有するものに限ります。)を用いて e-Taxにより申請等を行う場合には、その申請等を行う際の電子署名等を要しないこととされました。
2)更正の請求に係る隠蔽・仮装行為に対する重加算税制度の整備
隠蔽・仮装された事実に基づき更正請求書を提出していた場合を重加算税の適用対象に加えることとされました。
以 上
新日本法規出版株式会社
(2024年4月)
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