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倒産2020年04月23日 特別企画:コンプライアンス違反企業の倒産動向調査(2019年度) 出典:帝国データバンク

コンプラ違反倒産、8年連続で200件超
~粉飾倒産は2年連続の増加~

はじめに
 2019年度の企業倒産件数は2年ぶりに増加に転じる可能性が高い。主に小規模倒産の件数が増加しているなかで、中規模以上の倒産においてひときわ目立っているのがコンプライアンス違反倒産だ。業績堅調と目されていた企業において、長年にわたる粉飾が発覚するケースが続いており、多数の取引先や金融機関を巻き込んだ末の倒産が周囲へ与える影響は深刻さを増している。また、新型コロナウイルスなどによる事業環境の急変は、こうしたコンプライアンス違反を改めて浮き彫りにする可能性がある。
 帝国データバンクでは、「粉飾」や「業法違反」「脱税」などのコンプライアンス違反が取材により判明した企業の倒産を「コンプライアンス違反倒産」と定義。2019年度(2019年4月~2020年3月)の同倒産(法的整理のみ)について分析した。
 なお、本調査は2005年4月から集計を開始しており、前回調査は2019年4月8日。
注 1:「コンプライアンス違反」は、意図的な法令違反や社会規範・倫理に反する行為などを指す
注 2:同一企業に複数のコンプライアンス違反がある場合は、主な違反行為で分類
1.年度別推移~前年度から微減も200件超える
 2019年度(2019年4月~2020年3月)のコンプライアンス違反(以下コンプラ違反)倒産は、225件判明。前年度を3.4%下回り、微減となった。また、2012年度以降8年連続で200件台となった。
 倒産件数全体では、2019年度は2月までに7736件と前年同期を4.5%上回っており、増加に転じる可能性が高いなかで、コンプラ違反倒産はわずかながら減少した。しかし、長年にわたり粉飾を続けていた企業の倒産が相次いだことで、融資を行っていた金融機関の危機感を募らせている。
2.違反類型別~「粉飾」が2年連続で増加
 2019年度のコンプラ違反倒産を違反類型別に分析すると、最も多かったのは決算数値を過大(過少)に見せる「粉飾」で78件(構成比34.7%)判明、2年連続で前年度を上回った。また、「粉飾」での倒産企業は負債額が大きくなる傾向にあり、コンプラ違反倒産を負債額順に並べると、上位20社のうち15社を占めている。個別の事例をみても、長年にわたる粉飾や、循環取引による短期間で業績が急拡大していたケースが目立ち、金融機関等から簿外で借り入れを行っており、売り上げを大きく上回る負債を抱えた倒産が散見された。
 件数で次に多かったのは、事業外での不祥事や悪質な不払いなどの「その他」(48件、構成比21.3%)、行政処分などの「業法違反」(31件、同13.8%)が続いた。
3.業種別~サービス業が最多
 業種別にみると、最も多かったのは「サービス業」の49件(構成比21.8%)。医療法人や学校法人で経営層による横領が発覚するなど、特殊法人での不正な資金流出が目立った。
 また、「建設業」と「卸売業」が48件(同21.3%)で続いた。「マルコス」「シーンズ」といった卸売業者を中心に都内で大規模な循環取引が行われていたことなどもあって「卸売業」の負債額上位10社すべてが「粉飾」でのコンプラ違反倒産となっている。
4.主な倒産事例
【粉飾】
■婦人服アパレルブランド「J.FERRY」を展開していた(株)リファクトリィ(東京都中央区、2019年5月民事再生法)は首都圏・大都市圏を中心に全国32店舗を展開。オンラインショップでも販売を手がけ、2018年6月期には年売上高約44億円を計上していた。しかし、2019年5月に10年以上にわたる粉飾決算が判明。実際には2016年以降、売り上げの不振が続き、2018年6月期の年売上高は約25億6000万円にまで減少していた。こうしたなか、多額の簿外債務も重荷となり、自主再建を断念した。
■やきとり店「ひびき庵」を経営していた(株)ひびき(埼玉県川越市、2019年8月民事再生法)は、人気のみそだれを使ったやき鳥で、モンドセレクションをはじめ各種の表彰を受けていた。メディアにも幅広く取り上げられるなど知名度も高く、出店ペースの加速とともに業容も拡大基調をたどり、2018年6月期は年売上高約20億7400万円を計上していた。しかし、製造工場開設や出店数の増加など、各種の投資に要した費用が大きく膨らみ収益を圧迫。10年ほど前から架空売上の計上など粉飾が行われていたほか、不正リースも発覚し、法的手続きによる再建を目指すこととなった。
【資金使途不正】
医療法人社団冠心会(東京都品川区、2019年8月民事再生法)は、心臓病専門病院「東京ハートセンター」を経営、循環器内科や心臓血管外科の優秀な医師が在籍していることで知られ、メディアにもたびたび取り上げられるなど知名度は高く、2018年3月期の年収入高は約41億100万円を計上していた。しかし、近年は家賃の支払遅れや給与遅配が発生するなど急速に資金繰りが悪化。医師の退職により事業縮小が続く中、当時の経営陣における不明瞭な資金流出がマスコミ報道等で明らかになり信用は急速に悪化。経営に大きな混乱をきたす事態が発生し、債権者からの民事再生手続き申し立てを受けていた。
5.まとめ
 2019年度のコンプラ違反倒産は225件判明した。前年をわずかに下回ったが、8年連続で200件を超えており、毎年一定数のコンプラ違反倒産が発生していることがわかる。前年度から件数は減少したものの、依然として個人投資家を巻き込んだ「資金使途不正」の倒産が発生。合わせて医療法人や学校法人など特殊法人における横領も発覚しており、企業が資金をどのように使っているのか、透明性の確保が難しい現状が浮き彫りとなった。
 また、引き続き「粉飾」による倒産が高水準で発生していることも注目される。売り上げを大きく上回る負債規模の倒産も多い。これらの企業では10年以上の長期にわたり粉飾を続け、事業規模に比して取引金融機関数が多いなどの特徴が見受けられ、低金利下で融資先を探している金融機関の姿勢を逆手にとって融資を引き出していたとされている。加えて「マルコス」「シーンズ」など複数の企業が関与、架空循環取引により業績をよく見せた揚げ句、倒産に至った事例も発生している。
 粉飾などコンプラ違反は、事業環境が悪化した際に金融機関に吐露するケースや、デューデリジェンスのなかで発覚するケースが多い。好況時には表面化しにくい傾向にあるが、昨年からの消費税増税、新型コロナウイルスによる景気後退で事業環境が一変している企業は多く、今後、過去からの不正が明らかになるケースは増えていく可能性があるだろう。

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