倒産2020年07月28日 特別企画:旅館・ホテル・簡易宿所の倒産動向調査(2020年上半期) 出典:帝国データバンク
2020年上半期の倒産、既に前年件数を上回る
~新型コロナウイルス関連倒産が半数近く占める~
~新型コロナウイルス関連倒産が半数近く占める~
はじめに
今年に入り新型コロナウイルスの影響で、ニューヨークやロンドン、パリなどの都市部では都市封鎖(ロックダウン)が行われ、日本においても外出自粛が広がっている。
新型コロナウイルスの感染拡大で多くの国で渡航制限措置が取られたことから旅行需要が停滞し、旅行業や宿泊業者は大打撃を受けている。日本政府観光局(JNTO)によると今年5月の訪日外国人客数は、前年同月比99.9%減の1700人となり、統計を開始した1964年以降で過去最少だという。
これまでインバウンドの恩恵を受けていた旅館・ホテル・ゲストハウスなどは経営が立ち行かなくなり、苦境に立たされている。緊急事態宣言が解除され、政府が「GoToキャンペーン」の前倒し実施を発表したものの、新型コロナウイルスの第2波、第3波が懸念されるほか、記録的な豪雨による浸水被害や土砂災害は九州や中部地方の温泉地にも大きな被害をもたらしており、今後も宿泊関連業者の倒産が増加する可能性がある。
帝国データバンクでは、2000年以降の旅館・ホテル・簡易宿所など宿泊事業を主業とする事業者(法人・個人事業者)の倒産動向(負債1000万円以上、法的整理のみ)について集計・分析した。
調査結果要旨
1.2020年上半期の旅館・ホテル・簡易宿所の倒産件数は80件発生し、すでに前年(72件)を上回るペースで推移している。80件のうち新型コロナウイルス関連倒産が37件となり、全体の46.3%を占めた
2.業態別にみると「旅館・ホテル」(73件)が最多。デザイナーズのカプセルホテル「ファーストキャビン」運営の(株)ファーストキャビン(千代田区、破産、負債約11億3000万円)グループが経営破たんし「簡易宿所」が6件発生した
3.負債額別にみると「1億円~5億円未満」(27件)が最多となり、構成比33.8%を占めた
4.負債額上位企業10社のうち、7社が新型コロナウイルス関連倒産となった
1.件数・負債動向~新型コロナの影響で倒産増加~
2020年上半期(1月~6月度)の旅館・ホテル・簡易宿所の倒産件数は80件となり、すでに前年(72件)を上回るペースで推移している。また、倒産した80件のうち、新型コロナウイルスの影響を受けた企業は37件あり、全体の46.3%を占めた。
負債総額は2020年上半期で約568億6400万円に達しており、ホテル「ラッソ」などを展開していたWBFホテル&リゾーツ(株)(大阪市、民事再生法、負債約160億円)が負債額トップとなった。次いで、関西屈指の設備を誇るリゾートホテル「ロイヤルオークホテルスパ&ガーデンズ」運営の(株)ロイヤルオークリゾート(滋賀県大津市、破産、負債約50億円)が続いた。2社ともに新型コロナウイルス関連倒産となった。
2.業態別動向~「旅館」が最多、新型コロナウイルスが追い打ち~
業態別の内訳をみると、2020年上半期は「旅館・ホテル」(73件)が最多となった。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で予約キャンセルが相次ぎ、経営が立ち行かなくなったケースが目立つ。今年は「簡易宿所」の倒産が例年に比べて増加したが、デザイナーズカプセルホテル「ファーストキャビン」運営の(株)ファーストキャビン(東京都千代田区、破産、負債約11億3000万円)グループの経営破たんが押し上げ要因となった。これまでインバウンド需要に支えられて人手不足状態が続いていた旅館やホテルは新型コロナウイルスの影響で業務量が減り、人余りの状態となっている。他の業種に比べて設備投資費用がかかるほか、人件費コストが重荷となり、経営が悪化した業者が増加している。事業再建に向けてM&Aやスポンサー支援を模索するもインバウンド需要の減退から支援を得られず、倒産した事例も多い。

4.まとめ
2020年上半期(1月~6月度)の旅館・ホテル・簡易宿所の倒産件数は80件となり、すでに前年(72件)を上回るペースで推移している。また、倒産した80件のうち、新型コロナウイルスの影響を受けた企業は37件あり、全体の46.3%を占めた。業態別では「旅館・ホテル」(73件)が最多となった。
緊急事態宣言の解除に伴い、自治体が宿泊施設に補助金を出したり、割引クーポンの発行など各種支援策を打ち出している。また今月22日より国内観光の需要を喚起すべく「GoToキャンペーン」が前倒しで行われる予定だが、再度の新型コロナウイルスの感染拡大や記録的な豪雨被害の影響で効果は限定的との見方もある。老舗旅館や大型ホテルが金融機関に返済猶予を申請、身売りなどで再建を模索する動きが見られるが、過去の設備投資による借り入れ負担に加え、当面、インバウンド需要が見込めないことから経営破たんする事例が出始めている。
新型コロナウイルスの影響が長期化すると、観光産業は廃業や倒産を余儀なくされる宿泊関連業者が増えるとみられ、今後も厳しい状況が続くだろう。
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