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売買2020年09月09日 特別企画:焼酎メーカー売上高ランキング(2019年) 出典:帝国データバンク

初めて上位10社全てが減収
~霧島酒造が8年連続でトップも、焼酎離れがより顕著に~

はじめに
 国税庁が発表した2018年度(平成30年度)の国内酒類消費量は、約824万5900キロリットルと、前年度比1.5%減少した。減少するのは3年連続。他方、ウイスキー(前年度比8.9%増)はハイボールブームにより、また、リキュール(同5.1%増)やスピリッツ(同17.9%増)は缶チューハイや缶カクテルなどのRTD(ReadytoDrink)飲料市場の拡大により、それぞれ消費量や伸び率の増加が際立っている。
 焼酎の消費量は約77万9500キロリットルと、依然として根強いファンを抱えているものの、さかのぼって確認できる2007年度(100万4700キロリットル)以降、初めて80万キロリットルを割り込んだ。酒類合計も5年前の2013年度(859万1100キロリットル)から4.0%減少の824万5900キロリットルと酒離れが進んでいる傾向が見受けられ、消費者の嗜好の多様化と相まって、焼酎業界は厳しい状況に立たされている。
 帝国データバンク福岡支店では、売上高に占める焼酎・泡盛の割合が5割以上となった酒類製造業者(焼酎・泡盛以外の事業で計上した売上高も含む)を『焼酎メーカー』と定義。企業概要ファイル「COSMOS2」(約147万社収録)より、全国の焼酎メーカーの2019年(1月期~12月期)売上高をランキング形式により抽出し、上位50社の売上高や利益動向などについて集計した。なお、本調査は2019年8月に続く17回目。
1.売上高ランキング
1位 霧島酒造619億2000万円(前年比6.0%減)
 全国焼酎メーカーの2019年(1月期~12月期)の売上高ランキングは、8年連続1 で霧島酒造(株)(宮崎県都城市)がトップとなった。「黒霧島」を主体に、「白霧島」、2018年10月から通年販売になった「赤霧島」などを展開している。期中に「黒霧島」の醸造に用いる「黒麹」と清酒の醸造に用いる「黄麹」を掛け合わせて製造した「虎斑霧島」を新発売した。また、イギリスで毎年開催される酒類品評会「インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ(ISC)2019」において『茜霧島』が芋焼酎部門でトロフィー(最高賞)を受賞するなど、高い知名度を維持した。しかし、ハイボール缶などのRTD飲料の台頭により前年比6.0%減となった。これまで3月と9月に販売していた赤霧島を通年販売に切り替えたことで、決算期である3月のまとめ買い需要がなくなったことも売り上げ減少要因の一つとなった。
2位 三和酒類429億2700万円(前年比3.6%減)
 三和酒類(株)(大分県宇佐市)は、8年連続で2位をキープ。“下町のナポレオン”の愛称で知られる「いいちこ」シリーズを主体に、地元大分県産の麦を使用した「西の星」ブランドを展開。関東・関西・中部などの大都市圏をはじめ、北米やアジアなど世界各国・地域に販路を構築している。2019年4月に「いいちこ」発売40周年を記念して発刊40周年になる週刊ヤングジャンプとコラボキャンペーンを開催したほか、2019年9月に開催された「ラグビーワールドカップ2019年」にちなんだラグビーボール型のいいちこボトルを販売するなど主力商品の拡販に努めたが、減収を余儀なくされた。
3位 オエノングループ390億6200万円(前年比2.7%減)
 オエノンホールディングス(株)では、傘下の合同酒精(株)(東京都墨田区)、福徳長酒類(株)(千葉県松戸市)、秋田県醗酵工業(株)(秋田県湯沢市)の3社で焼酎を製造しており、本調査では同3社の焼酎事業の売上高[有価証券報告書記載のセグメント別アイテム(主要製品)別の販売実績]を集計対象としている。2008年以降、連結売上高に占める焼酎の比率が5割を下回って集計対象外となっていたが、2017年からランキングに復帰した。
 しそ焼酎「鍛高譚(たんたかたん)」をはじめ、本格焼酎「博多の華」シリーズ、北海道において大きなシェアを握る甲類焼酎「ビッグマン」シリーズなど多様なラインナップを展開している。「博多の華」シリーズ、甲類乙類混和焼酎の「すごむぎ」「すごいも」シリーズが好調に推移したものの、メーカーと組織小売業者等が商品を共同開発するPB(プライベートブランド)商品の減少が全体を押し下げる要因となった。また、甲類焼酎の「そふと新米」の売り上げ伸び悩みも減収の一因となった。
 なお、トップ10の顔ぶれや順位は前年と変わらないが、全社が減収となった。上位10社全てが減収となるのは調査開始以来、初めて。
1 2015年4月に旧・霧島酒造(株)は霧島ホールディングス(株)に商号を変更したうえで持ち株会社となり、新たに設立した霧島酒造(株)(2014年3月設立)が酒類製造部門を継承した。順位は旧・霧島酒造(株)からの通算。
2.売上高合計推移
 2008年(2009年発表分)から2016年(2017年発表分)にかけて、オエノングループが集計対象外となっていた。このため、上位50社の売上高合計については、2009年(2010年発表分)の集計時に、2005年までさかのぼって同グループの売上高を除外し、かつ、51位企業の売上高を加算する調整を実施。以降、この調整後データを用いて売上高合計の推移をみてきたため、2019年は2016年以前との単純比較ができない。
 そこで、2019年についても、上記と同様の調整を行ったうえで売上高合計を比較すると、2019年の上位50社(調整後)の売上高合計は、前年比4.6%減の2621億3400万円と、3年連続で減少した。ピーク時の2008年(3090億1300万円)から15.2%減少し、2005年以降の最少となった。全体としては、消費者の嗜好の変化によりウイスキーやワイン、リキュール類との競合が続いていることに加え、若者をはじめとする酒離れの影響で苦戦が続いている。  なお、調整前の上位50社の売上高合計は3004億9600万円で、前年(3140億3400万円)と
 なお、調整前の上位50社の売上高合計は3004億9600万円で、前年(3140億3400万円)と比較すると4.3%の減少となった。
3.売り上げ動向
 売り上げ動向をみると、「増収」企業が8社(前年18社)だったのに対し、「減収」が37社(同28社)にのぼった。「横ばい」は5社(同4社)。7割を超える企業が減収を余儀なくされ、2005年6月の調査開始以降、最も減収企業が多かった。前回調査までは、焼酎部門は減収となったものの、ウイスキーやリキュールなど他部門の増収が寄与して減収を免れる企業もあったが、今回は他部門が増収しても焼酎部門の減収をカバーしきれない企業が散見された。
 「減収」企業の増加は、売上高規模を問わない業界全体の課題となっている。売上高規模別にみると、「減収」企業割合が最も高かったのは「20~50億円」(15社中12社)で、全ての区分で5割を超えた。
 また、売上高規模別に社数の推移をみると、「100億円以上」で1社、「20~50億円」で2社減った。売上高規模別の売上高合計をみると、売上高規模を下げた企業の移動で社数が増えた「50~100億円」、「10~20億円」は増加したものの、売上高合計の62.5%を占める「100億円以上」は前年を大きく上回る過去最大の減少幅(8.9%)となるなど、大規模メーカーの苦戦が総売上高を押し下げた一因となっている。
4.利益の動向
 税引き後当期純利益が判明した39社のうち、「赤字」企業は9社、構成比は23.1%にのぼった。この9社のうち、2年連続減収となった企業が5社を占めている。主力の原材料となる芋の価格が下落したものの、売上高が伸び悩むなか、減収分を吸収できなかった点が共通項として浮上する。
 また、運送費や製造委託経費の上昇のほか設備投資を行ったことによる減価償却費の負担、広告宣伝費の増加などが赤字計上の理由としてあげられた。
5.都道府県別の分布
 売上高上位50社を本社所在地別にみると、「鹿児島県」が前年より1社増え22社で最多。「宮崎県」が5社、「大分県」と「沖縄県」がそれぞれ4社で続いた。
 他方、都道府県別の売上高合計は、ランキングトップの霧島酒造(株)を含む「宮崎県」が855億3900万円で最多だった。霧島酒造(株)の減収に加え、5社中4社が減収を余儀なくされたことで、前年比5.4%減となった。「鹿児島県」は22社中18社が減収を余儀なくされ同5.1%減の702億4100万円。麦焼酎を主力とする「大分県」は4社全てが減収で、同3.4%減の619億9700万円と3県とも減収を余儀なくされた。
まとめ
 2019年の焼酎メーカー売上高ランキングでは、霧島酒造(株)が8年連続で首位となった。同社の売上高は10年前の2009年(428億1500万円)と比べて1.45倍に伸びたものの、前年比では6.0%減となった。上位50社の売上高合計は10年前と比べて14.2%減少、前年比でも4.6%減少した。
 酒類業界全体をみても、人口減少や少子高齢化により飲酒率の高い年齢層が減少しているうえ、健康志向の高まりによる飲酒の敬遠といった問題も内包している。今回特に目についたのが、減収企業の数だ。売上高上位50社中37社が、上位10社では全社が減収となるなど、2005年6月の調査開始以降、最も減収企業が多かった。前回調査では、焼酎部門の売り上げをウイスキーやリキュールといった勢いのある他部門でカバーしていたのに対し、今回は焼酎部門の減収分を他部門の増収でカバーし切れてない企業が散見され、焼酎業界にとって焼酎離れや消費者の嗜好の多様化がより顕著になって表れる結果となった。
 こうしたなか、10%以上売り上げを伸ばしているランキング35位の(資)光武酒造場(佐賀県鹿島市、前年比13.8%増)、同47位の大隅酒造(株)(鹿児島県曽於市、同12.5%増)のほか、去年に引き続き売り上げを伸ばした甲類焼酎を主力とする同11位の(株)宮﨑本店(三重県四日市市、同7.6%増)、同22位の福井酒造(株)(愛知県豊橋市、前年比2.2%増)には注目したい。(資)光武酒造場では、黒麹芋焼酎「魔界への誘い」とアニメ「デビルマン」のコラボ製品を皮切りに、「キューティーハニー」や「北斗の拳」ともコラボを行っている。特に、2019年3月より販売を開始した芋焼酎「北斗の拳」シリーズは、発売の告知をしてから1カ月足らずで約3万本の予約が入るなど売り上げ増加に大きく貢献した。(株)宮﨑本店は、前年同様、「キンミヤ焼酎」が関東圏にとどまらず、関西地区、九州地区でも売り上げを伸ばしたことで全体を押し上げた。
 今後の動向として酒税法の改正と新型コロナウイルスによる影響は考慮すべき点だ。2018年の酒税法改正により、2026年の10月までに、3段階で酒税が変更になる。第一段階として2020年10月からビールや日本酒が減税され、新ジャンル(第三のビールなど)や、ワインは増税する。
 焼酎に直接関係ないものの、最初の一杯として根強いビールや、年々、輸出量が伸びている日本酒が減税となることは焼酎業界にとっても油断できない内容だ。加えて、2020年は新型コロナウイルスの流行で“外飲み”より“家飲み”を選択する人が増えている。長期自粛を余儀なくされる期間もあったことから、スーパーやディスカウントストアなどで販売する紙パックやペットボトル商品の需要が伸びている可能性が高い。しかし、自宅で飲む頻度が高い人にとっては大容量で自身の好みに割って飲める甲類焼酎等がお得だが、たまにしか飲まない人には缶を空けたらすぐに飲めるRTD飲料が目に留まるだろう。若者の酒離れや健康志向の増加を考慮すると、後者の方が売り上げを伸ばしている可能性が高い。また、飲食店での焼酎消費量の落ち込みが売り上げの推移にどれだけ影響を与えるのかも注視したい。いずれにせよ焼酎業界に留まらず、酒類消費量の低下は酒業界全体の課題である。消費者の嗜好の多様化に合わせた商品の開発を行うか、海外市場の取り込みを狙うのか、国内市場の先細りがみえるなかで、生き残りをかけた戦略を構築す る必要がある。
【参考資料】
■熊本県の売上高合計の推移
 2020年7月3日から7月31日にかけて、熊本県を中心に九州や中部地方など日本各地で発生した「令和2年7月豪雨」。政府は激甚災害に指定するなど、深刻な被害をもたらした。特に球磨川やその支流で氾濫が生じた人吉・球磨地方は球磨焼酎の生産地であり、今回の豪雨で影響を受けた焼酎メーカーは少なくない。
 そこで、帝国データバンク福岡支店は、熊本県内における『焼酎メーカー』(定義は本調査と同様)を企業概要ファイル「COSMOS2」(約147万社収録)より抽出し、2015~2019年の売上高が判明した21社の売上高合計の推移をグラフにした。
 熊本県内の焼酎メーカーを地域別にみると、球磨郡が14社で最も多く、次いで人吉市が5社、上益城郡と天草市で各1社となった。売上高合計の推移では、2016年4月に発生した熊本地震の影響を受けた企業もあったが、大半は若者の酒離れや同業他社との競合により年々売り上げを落としている状況だ。
 今回のデータでは、熊本県内の焼酎メーカーのうち、約9割が球磨郡と人吉市で占めていることが分かった。2020年は豪雨の影響で、直接被害を受けたメーカーもあれば、道路などが遮断されたことから、出荷量が減ったことも考えられる。一刻も早い復旧を願うとともに、球磨焼酎の伝統が守り続けられることを期待したい。

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