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一般2020年11月02日 特別企画:第11回東海3県の航空機産業動向調査 出典:帝国データバンク

合計売上高2734億3100万円、9.6%増加
~2019年度は業績堅調も、先行き不安感強まる~

はじめに
 国産ジェット旅客機「スペースジェット(旧MRJ)」が名古屋空港で初フライトを果たしてから早くも5年が経過した。開発の遅れから受注キャンセルが発生したものの、航空機産業は自動車や工作機械に次ぐ、ものづくりの柱としての期待は大きい。
 こうしたなか、新型コロナウイルス感染症拡大によって航空旅客需要が一気に喪失。中部国際空港を起点にLCCの運航を行っていたエアアジア・ジャパンが撤退を決めるなどコロナ禍によって人の移動が制限されるなか、航空機の需要についても先行きは不透明な状況にあり、航空宇宙産業の集積地でもある当地区への影響が懸念される。
 帝国データバンク名古屋支店は、企業概要データベース「COSMOS2」(147万社収録)をもとに東海3県に本社を置く航空機関連企業78社について、2019年度(2019年4月~2020年3月)の業績、事業規模、所在地などを調査・分析した。なお、同調査は今回が11回目。
1.売上高推移~最新期売上高は2734億3100万円、前年度比9.6%の増加
 東海3県の航空機関連企業78社の業績推移をみると、2019年度の合計売上高は2734億3100万円、前期比9.6%増加した。「増収」だった企業は28社と前年度の30社から2社減
少した。「スペースジェット」の生産計画に狂いが生じている局面において、自動車や工作機械向けなど航空機部門以外での受注を伸ばしたことで増収となったケースも散見される。
 直近3年度の比較では、2017年度(2408億4900万円)、2018年度(2495億5500万円、3.6%増)から、
2019年度は2734億3100万円と順伸基調を辿っている。経済産業省「生産動態統計」によると、航空機生産実績は2017年(1月~12月の計)から3年連続で前年比増加となっており、総体としては航空機・同部品生産は緩やかながら成長が続いている様子が窺える。
2.利益推移~「黒字」企業が8割超も「増益」「減益」は拮抗
 東海3県の航空機関連企業78社のうち、当期損益が判明した53社の2019年度の当期損益合計は5420億4120万円の赤字。前期から大きく赤字幅は拡大、11期連続の赤字となった。機体の売上計上はなく開発費の減損損失や従業員の解雇などで特別損失を計上した三菱航空機1社で5269億3000万円の巨額の単年度赤字を計上したことに加え、三菱重工航空エンジンも199億3400万円の最終赤字となっており、この2社を除くと48億2279万円の黒字となる。
 「増益」企業は26社(構成比49.1%)で前年度から増加、「黒字」企業も40社(同85.1%)で前年度から増加した。
 2019年度の収益状況については、「黒字」企業が大半を占めており、直近の業績については堅調だった様子が窺える。しかし、「増益」と「減益」企業の数は拮抗しており、中小規模事業者を中心に資材価格や人件費の高騰などの影響を受けているとみられる。
3.所在地別~「愛知」がトップを維持、「岐阜」は3位
 全国の航空機関連企業のうち、多数を占める「航空機・同付属品製造業」(主業・従業含む)の都道府県別所在地では、全国227社のうち「愛知」が44社、前回調査(44社)と同数で、6年続けてトップの座を維持した。2位は「東京」で35社、3位は「岐阜」で32社となり、当地区に航空機関連企業が集積していることを裏付けた。「三重」は2社だったほか、近県では「長野」が9社、「静岡」が2社だった。
 2018年度の前回調査では、「愛知」が44社でトップ。以下、2位は「東京」(34社)、3位は「岐阜」(32社)、4位は「栃木」(17社)の順で、「三重」(2社)を含めた全国に占める東海3県の構成比は35.0%(78社)だった。今回の調査でも上位の顔ぶれには概ね変わりはなく、東海3県の構成比は34.4%(78社)と引き続き3分の1超を占めた。
 なお、三菱重工業や川崎重工業、SUBARU、ナブテスコなど東海3県以外に本社を置く関連企業も、東海地区に主要生産拠点などを構えており、実際の集積率はさらに高いものと見られる。
4.従業員規模別~「100人以上」が35.9%で最多
 東海3県の航空機関連企業78社の従業員規模を分析すると、「100人以上」の企業が28社(構成比35.9%)と最も多く、前回調査(29社、37.2%)に続いて最多となった。航空機の構成部品は300万点にのぼるとされ、自動車の100倍ともいわれる。複雑で様々な生産工程があり、各々に多くの従業員が関わっている実態を物語っている。
 一方、「9人以下」の企業は20社、25.6%にのぼり、従業員規模は二極化している。これは、完成機メーカーからみると孫請け以下にあたる中小・零細の金属加工メーカーなどが多く含まれているためである。
 従業員規模の大きい企業をみると、「スペースジェット」の生産を手がける三菱航空機(愛知県豊山町)が1500人でトップ。しかし、同社は従業員の削減を含めた開発体制の大幅縮減を進めており、次年度は順位の変動があるとみられる。
5.売上高上位企業~1位は三菱重工航空エンジン、2位はアイコクアルファ
 東海3県の航空機関連企業の売上高上位は表9の通り。
 1位は、三菱重工業の子会社で航空機エンジン部品製造の三菱重工航空エンジン(愛知県小牧市)で売上高は1082億8700万円。ボーイング787に搭載されている「Trent1000」やエアバスA350搭載エンジンである「TrentXWB」向け部品のほか、スペースジェット向けPW1200Gエンジンの最終組立を手がけている。
 2位はアイコクアルファ(愛知県稲沢市)で288億900万円。主業の自動車部門や航空宇宙部門などが軟調だったことあり3期ぶりの減収。3位は川崎岐阜協同組合(岐阜県各務原市)で149億8600万円。川崎重工業からの共同受注を主な事業としている。
まとめ
 航空機・航空機部品生産額に占める東海3県(愛知・岐阜・三重)の割合は全国の50%に達するといわれる。そうした関係者のみならず、多くの期待を背負っている国産ジェット旅客機「スペースジェット」の本格的な生産が始まる前に、コロナ・ショックによって状況は一変。世界的に航空機需要は減退し、「スペースジェット」も開発体制の大幅な縮減を余儀なくされた。また、現状の主力といえるボーイング向けに関しても、中型機「787」の減産の影響を受け、一時操業を見合わせた工場も出るなど、航空機産業を取り巻く環境は大きく悪化している。
 ものづくりの新たな柱として航空宇宙産業への期待は大きく、思い切った設備投資を行って転進を図った中小メーカーは少なくない。しかし、感染症拡大防止の観点からも航空旅客需要が急激に回復する可能性は低く、エアアジア・ジャパンの事業廃止や全日空の給与削減など各航空会社も対応を迫られているなか、航空機・航空機部品メーカーにとっても正念場を迎えようとしている。
※1「COSMOS2」で業種が「航空機・同付属品製造業」(主業・従業含む)かつ「所在地」が東海3県にある企業を調査対象とした
※2※1の条件以外でも、航空機の関連団体の会員で航空機に関わる売上高の比率の高い企業なども対象に追加した
※3業績の最新期は原則として2019年度だが、それ以外は判明している最新期を使用した

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