一般2020年11月26日 特別企画:上場企業子会社の解散・清算動向調査(2020年1月~10月) 出典:帝国データバンク
新型コロナが理由の解散・清算は16件
~国内のみならず海外にも広がる~
~国内のみならず海外にも広がる~
はじめに
世界中に影響をもたらしている新型コロナウイルス。未だ収束のメドが立たない状況となっている。新型コロナウイルス関連倒産は11月20日時点で715件となり、知名度の高い企業が目立ち始めている。こうしたなか、上場企業においては、現時点において新型コロナによる重大な影響を受けていなくても、その不確実性から先行きを見通せず、経営判断が難しい状況に置かれ、事業の合理化に着手し、子会社を解散・清算する動きが広がっている。
帝国データバンクでは、2020年1月1日から10月31日までおよび前年同期(2019年1月1日~10月31日)の適時開示情報から、上場企業子会社の解散・清算を集計した。
調査は今回が初めてとなる。
調査結果(要旨)
1.2020年1月1日~10月31日の間に、解散・清算となった上場企業子会社は73件となり、前年同期比37.7%増となった。73件のうち、新型コロナウイルスが主要因となった件数は16件。国別にみると日本が28件でトップ。以下、中国(11件)、アメリカ(8件)と続き、アジア圏の企業が多くみられた
2.業種別にみると、「製造業」が21件(構成比28.8%)でトップ。以下、「サービス業」20件(同27.4%)、「卸売業」16件(同21.9%)と続く。うち、新型コロナウイルスの影響を受けた件数は「サービス業」(5件)が最多
3.要因別にみると、「事業の見直し」が33件(構成比45.2%)で最多。新型コロナウイルスの影響を受けたのは16件(同21.9%)となった
1.件数・エリア別
2020年1月1日から10月31日の間に、解散・清算となった上場子会社は73件(上場企業67社)となり、前年同期(53件、同45社)比で37.7%増となった。
国別にみると日本が28件で最多。以下、中国(11件)、アメリカ(8件)と続き、アジア圏の企業に解散・清算の動きが多くみられた。
2.業種別
73件を業種別にみると、「製造業」が21件(構成比28.8%)で最多。次いで、「サービス業」の20件(同27.4%)、「卸売業」の16件(同21.9%)と続く。また、新型コロナウイルスの影響を受けた16件を業種別にみると、「サービス業」が5件(構成比31.3%)で最多。サービス業には現地に進出した日系企業のプロモーション事業を手がけていた企業や、製造業では航空機内部品のほか、ケーブルなどの電子部品の製造業者がみられた。
3.要因別
73件を主要因別にみると、「事業の見直し」が33件(構成比45.2%)で最多。市場環境、事業環境の変化などを複合的に精査する過程で、グループネットワークや製造拠点の集約・再編などによる収益改善を目的とする動きが多くみられた。
次いで「新型コロナウイルス」の影響が16件(同21.9%)と続く。新型コロナウイルスの影響により都市封鎖など、事業活動を行ううえで発生した制約などにより、事業の継続を断念したケースなどがみられた。
まとめ
2020年は前年と比べて、上場企業の解散・清算の件数が増加した。特に公表された資料の中で、「新型コロナウイルス」を主要因とする会社が全体の21.9%を占めた。国内外を問わず、新型コロナに起因する経済の不確実性が高まっている情勢に鑑み、事業の選択と集中を考える企業が多いようだ。
業種別でみると、件数では「製造業」が最多となった。特に海外子会社では当初の事業計画と乖離が生じ、赤字が継続していることから、設立後浅い企業でも早々に撤退する動きがみられた。国別にみると、中国(11件)、アメリカ(8件)と続き、アジア圏の企業が多かった。一方、国内では、「サービス業」を中心に意思決定の迅速化を図るため、解散・清算する動きが特徴としてみられた。
今後も世界的に事業環境の変化、影響が一定程度長期化する社会情勢のなかで、先行きの見通しは依然として不透明である。コロナ禍の長期化を見据え、子会社の解散・清算のほか、事業の譲渡や売却を勘案した“選択と集中”の動きは今後も続くとみられる。
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