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一般2021年01月06日 特別企画:2021年の景気見通しに対する企業の意識調査 出典:帝国データバンク

新2021年、企業の3割が景気悪化見込み、回復は1割超
~景気回復のために必要な施策、「感染症の収束」がトップ~

はじめに
 2020年12月8日に発表された7-9月期の実質GDP成長率2次速報は、前期(4~6月期)比5.3%増、年率換算で22.9%増となり、4四半期ぶりのプラス成長となった。2020年の国内経済は、新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)の影響を大きく受けているが、ここのところは緩やかながら企業の生産・出荷や個人消費が上向き、景気DIが6カ月連続でプラスになるなど、徐々に持ち直しの動きもみられる。しかし一方で、感染拡大にともなう下振れリスクも懸念されている。
 そこで、帝国データバンクは、2020年の景気動向および2021年の景気見通しに対する企業の見解について調査を実施した。本調査は、TDB景気動向調査2020年11月調査とともに行った。
※調査期間は2020年11月16日~30日、調査対象は全国2万3,686社で、有効回答企業数は1万1,363社(回答率48.0%)。なお、景気見通しに対する調査は2006年11月から毎年実施し、今回で15回目
※本調査における詳細データは景気動向オンライン(https://www.tdb-di.com)に掲載している
調査結果(要旨)
1.2020年の景気動向は、「回復」局面であったと考える企業は3.4%にとどまり、前回調査(2019年11月調査)から0.3ポイント減少、3年連続で1ケタ台となった。他方、「踊り場」局面とした企業は24.8%だったほか、「悪化」局面とした企業は56.0%で同24.8ポイント増加し、2012年以来8年ぶりに5割超となった
2.2021年の景気見通しは、「回復」局面を見込む企業は13.8%で、前回調査から7.0ポイント増となった。「踊り場」局面になると見込む企業は28.7%と同4.1ポイント減少。「悪化」局面を見込む企業は同4.8ポイント減少の32.4%となったものの、2年連続で3割を上回った。特に『建設』(44.8%)と『不動産』(40.4%)では悪化を見込む割合が目立っている
3.2021年景気への懸念材料は、新型コロナウイルス感染症などの「感染症による影響の拡大」が57.9%で最も高い(複数回答3つまで、以下同)。次いで、「雇用(悪化)」(21.0%)、「所得(減少)」(19.2%)など、新型コロナに関連する項目が続いた
4.景気回復のために必要な政策では、「感染症の収束」が58.0%で最も高い(複数回答、以下同)。また、「中小企業向け支援策の拡充」(31.6%)、「個人消費の拡大策」(25.0%)が続いた
5.アメリカ大統領にバイデン氏が就任した場合に日本経済にどのような影響を与えると思うか尋ねたところ、「プラスの影響」が17.2%となり、「マイナスの影響」の14.2%を上回った。「影響はない」は27.2%となり、「分からない」が41.4%だった
1.2020年の景気は「悪化」局面が56.0%、8年ぶりの5割台に上昇
 2020年の景気動向について尋ねたところ、「回復」局面であったと考える企業は3.4%にとどまり、2019年の景気動向(前回調査、2019年11月実施)から0.3ポイント減少し、3年連続で1ケタ台となった。他方、「踊り場」局面とした企業は24.8%で、前年の半数近くまで減少した。また、「悪化」局面とした企業は同24.8ポイント増の56.0%で、2012年以来8年ぶりの5割台へと上昇した。「分からない」は15.8%だった。
 2020年を「回復」局面とした企業からは、「新型コロナによる影響もあったが、GoToトラベル等の政府の諸政策もあり回復基調にある」(港湾運送、香川県)や「2019年の台風被害から脱却し、需要は増えている。新型コロナの影響もあるが順調」(養鶏、茨城県)といった声が聞かれた。加えて、「新型コロナによって対面販売の売り上げが減少したが、ECなど非対面販売が増加した。
 この非対面の良さを活用し売り上げに寄与させたい」(寝具製造、愛知県)のような、新型コロナによる環境の変化を前向きに捉えている様子もみられた。また、「踊り場」局面とみる企業からは、「補助金、助成金等で大幅な悪化は避けられているが、今後の新型コロナの感染状況でどちらにも振れる」(化学工業製品製造、埼玉県)や「緊急事態宣言の解除後、少しずつ経済が回ってきているが、今はまだ悪化に近い踊り場」(ソフト受託開発、新潟県)など、新型コロナの状況の変化による浮き沈みについて指摘する意見が多い。
 他方、「悪化」局面とみている企業からは新型コロナの影響として、「設備投資意欲が減少していると感じる」(セメント卸売、石川県)や「事業用賃貸の家賃値下げ交渉が多々あり、情勢を考慮すると対応せざるを得ない」(土地売買、神奈川県)といった意見が、業界や地域を問わず多く聞かれた。
2.2021年の景気は「悪化」見込みが32.4%、特に『建設』『不動産』では高水準
 2021年の景気について、「回復」局面になると見込む企業は2020年の景気見通し(2019年11月実施)から7.0ポイント増の13.8%となった。企業からは、「新型コロナに対するワクチンの開発と提供体制次第で回復すると感じる」(木造建築工事、愛媛県)など、ワクチンの開発に期待する声が多く聞かれた。また、「踊り場」局面は28.7%と2020年見通し(32.8%)より減少した。「悪化」局面を見込む企業は32.4%と2020年見通しより減少したものの、3割を上回り依然として高水準となっている。
 「回復」局面と見込む企業を業界別にみると、『製造』(17.3%)や『運輸・倉庫』(16.6%)が高い。それに対して、「悪化」局面では『建設』(44.8%)と『不動産』(40.4%)の高水準が目立つ。企業からは、「新型コロナの影響で、公共工事に対する予算配分の削減が懸念される」(土木工事、山形県)や「人手不足で、仕事があっても思うように受注できない。受注できても、外注労務費が職人不足でかなり値上がりしていて、利益に結び付かない」(防水工事、宮崎県)、「新型コロナの影響で外国人の減少が見込まれ、家賃相場にも悪い影響が出てくるように感じる。また、給与減少や失業者が増えることで、賃貸の相場は下がっていくものと考えられる」(建物売買、東京都)などの意見が聞かれた。
3.2021年景気の懸念材料、新型コロナ関連の項目が上位に
 2021年の景気に悪影響を及ぼす懸念材料を尋ねたところ、新型コロナなどの「感染症による影響の拡大」が57.9%で突出して高かった(複数回答3つまで、以下同)。次いで、「雇用(悪化)」(21.0%)や「所得(減少)」(19.2%)のほか「米国経済」(19.0%)やインバウンド需要を大きく左右する「訪日観光客数の減少」(13.3%)、「中国経済」(12.1%)といった、海外経済と関連する項目が続いた。
 また、2019年まで3年連続で5割近くの企業が懸念材料にあげていた「人手不足」は、11.1%と大幅に減少しており、新型コロナによる業務量の減少などの影響を受け、変化が表れていた様子がうかがえる。
 企業からも、「失業者増加、賃金カットの影響で消費が伸びないと、自社の受注も増加が見込めない」(非鉄金属卸売、和歌山県)や「東京五輪開催と、それにともなう訪日観光客の動向がカギを握る」(土木建築サービス、新潟県)、「中国経済は徐々に回復にあり、これが原油価格高騰に影響するのではないかと懸念する」(一般貨物自動車運送、兵庫県)などの声があげられた
4.景気回復に必要な政策、「感染症の収束」が58.0%で突出して高い
 今後、景気が回復するために必要な政策を尋ねたところ、「感染症の収束」が58.0%でトップとなり、突出して高かった(複数回答、以下同)。次いで、「中小企業向け支援策の拡充」(31.6%)が3割超となり、「個人消費の拡大策」(25.0%)、「雇用対策」(22.5%)、「法人向け減税」(21.1%)、「公共事業費の増額」(20.3%)が2割台で続いた。また、新型コロナの影響で2021年に延期となった「東京五輪の開催」(16.6%)も上位にあげられている。企業からは、「さまざまな政策が必要だが、あくまで最優先課題は新型コロナウイルスの収束」(広告代理、宮城県)や「疲弊した中小企業の再建を含め、雇用の維持・促進をしなければ経済活動の活性化につながらない」(土木建築サービス、岐阜県)などの意見が聞かれた。
5.バイデン米新大統領就任の場合、日本経済に「プラスの影響」予想がマイナスを上回る
 11月8日未明(日本時間)、アメリカ大統領選挙で民主党候補のバイデン氏が当選確実とマスコミ各社は報じた。バイデン氏は国際協調を重視する姿勢を打ち出すなど、米国における政策の転換が予想され、対日政策にも注目が集まっている。そこで、もしバイデン氏がアメリカの新大統領に就任した場合、日本経済にどのような影響を与えると思うか尋ねたところ、「プラスの影響」が17.2%となり、「マイナスの影響」の14.2%を上回ったものの、いずれも1割台となった。「影響はない」は27.2%だった。「分からない」(41.4%)が4割を超えており、現時点では影響を捉えかねている様子がうかがえた。
 企業からは、「アメリカ第一主義から多国間協調路線への転換に期待したい」(肉製品製造、山梨県)といった国際協調を期待する声が多数あげられ、「TPPなど各種止まっていた経済対策の再稼働や、欧米などとの協調姿勢、環境対策に期待したい」(中古自動車卸売、広島県)などの意見もあげられた。一方で、「環境面で今までとは異なる厳しい政策が予想される。すなわちエンジンなど自動車部品を製造している当社や同業には新たな対応が求められる」(内燃機関電装品製造、兵庫県)など、予想される新たな政策に関する意見もみられる。
まとめ
 2020年の景気は、「回復」局面と考える企業が3年連続の1ケタ台にとどまり、「悪化」局面と考える企業は2012年以来8年ぶりの5割超となった。新型コロナによる新たな需要や環境の変化を捉えているという意見もみられたものの、新型コロナによる悪影響に関する声が業界や地域を問わずあげられている。2021年の景気について、「悪化」局面と見込む企業は2年連続で3割台となったものの、ワクチンの開発などに対する期待から「回復」局面を見込む企業も少なくない。
 2021年の懸念材料では「感染症による影響の拡大」、景気回復に必要な施策では「感染症の収束」がいずれも突出してトップとなるなど、国内景気は引き続き新型コロナの状況次第とみている企業が多い。また、バイデン氏が米国の新大統領に就任した場合の日本経済への影響に関しては、プラスの影響があると予想する見方がマイナスの見方を上回った。
 本調査からも、2020年は総じて新型コロナウイルスの感染状況に左右される1年となった。2021年は延期となった東京五輪・パラリンピックなどのイベントによる経済効果に加えて、新型コロナの収束が期待される。企業にとっては正念場が続くなかで、政府は新型コロナの収束を最優先にしつつ、企業活動や消費活動の活性化に向けた施策を一層推進する必要があろう。

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