紛争・賠償2025年11月13日 「あきや」とは。 発刊によせて執筆者より 執筆者:塩見明

「遠くに、親から相続した『あきや』がありまして・・・」
私が所属する愛知県弁護士会では「空き家問題110番」という空き家に関する無料電話相談会を3ヶ月に1回のペースで行っています。そして、電話の出だしは、このように始まるものが多いです。
実は、皆さんが、日頃から使う「あきや」という言葉。実は、その表現方法は2つあります。
空家特措法上の定義では「空家」とされており、日常用語としての「空き家」とは、その意味が異なります。
なので、電話相談等で相談者の方が「あきや」という言葉を使われても、それが空家特措法上の「空家」なのか、誰も住んでいない家だから「空き家」という表現を使っているのか、しっかり話を聞かないといけません。
その「あきや」が誰も住んでいないという意味の「空き家」であったとしても、その所有者には管理責任等が課され、空き家の不具合で近隣住民に何か損害を与えたら、損害賠償責任が発生する可能性もあります。
一方、その「あきや」が、仮に空家特措法上の「空家」に該当していた場合、その「あきや」は、空家特措法上に則って、挙句の果てには解体処理されてしまうかもしれません。そして、莫大な解体処理費用の請求が舞い込んでくる可能性もあります。
「えっ、そうなの?」、「知らなかった?」だけでは済まされない問題が、空き家問題には潜んでいます。
とくに「空き家」から「空家」に変わると大変なのです。
二つの文字を見比べてください。「き」が抜いてあるか抜いていないかの違いなんです。「空き家」の管理に気を抜いてしまうと、「空家」に変身してしまうという、「空き家問題、き(気)を抜くな」というメッセージではないでしょうか。
空き家の現状については、総務省が定期的に調査を実施しています(「住宅・土地統計調査住宅数概数集計」という資料です。)。2023年10月1日現在の統計資料によると、日本国内の総住宅数(6,502万戸)のうち、空き家は900万戸で過去最多となっており、総住宅数に占める空き家の割合(空き家率)は13.8%で、こちらも過去最高を更新中です。空き家率を都道府県別にみると、和歌山県及び徳島県が21.2%と最も高く、次いで山梨県が20.5%、鹿児島県が20.4%、高知県が20.3%、長野県が20.0%などとなっています。
空き家数の推移は、これまで一貫して増加が続いており、1993年から2023年までの30年間で約2倍となっています。将来的には、さらに空き家数が増加するという予測もありますので、空き家問題の本格化はまさにこれからが本番といえます。
そんな時勢に対応すべく、本書は、気を抜いてはいけない空き家問題の事例とその対応方法をまとめました。ぜひお手にとってご一読ください。
(2025年11月執筆)
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