カートの中身空

閲覧履歴

最近閲覧した商品

表示情報はありません

最近閲覧した記事

企業法務2016年04月27日 経営支配権をめぐる紛争について 発刊によせて執筆者より 執筆者:平井貴之

 改正会社法が平成27年5月1日に施行され、同年6月1日からコーポレートガバナンス・コードが適用されていることもあり、多くの企業が、例年に比べて、株主総会の準備を念入りに進めていることと思います。
 ところで、近年世間を騒がせた株主総会といえば、平成26年度の株式会社大塚家具における親子間での経営支配権争いを思い出す方も少なくないのではないでしょうか。
 株式会社大塚家具は、もともと、大塚勝久氏が株式会社大塚家具センターとして創業した会社であるところ、平成21年、世代交代の一環として、勝久氏の娘である大塚久美子氏が、代表取締役社長に就任しました。
 しかし、会員制を主体とした高級路線の勝久氏と、門戸を開いたカジュアル路線の久美子氏の間で経営方針が反発し、平成26年、久美子氏が代表取締役から解職されて勝久氏が代表取締役に復帰したところ、反対に平成27年1月には、勝久氏が代表取締役から解職されて久美子氏が代表取締役に復帰するという異例の事態になりました。
 その後、勝久氏側と久美子氏側が、それぞれ相手方を取締役候補から除外する取締役選任議案を平成26年度定時株主総会に提出したことで、会社の命運は、株主の判断に委ねられることとなりました。
 世間の耳目を集めた親子の争いは、前年度比10倍以上の株主の出席の下で、61%の賛成を獲得した久美子氏が勝利をおさめました。
 しかし、株主総会によっても事態が完全に収束したわけではなく、勝久氏は、株式会社大塚家具の資産運用会社である株式会社ききょう企画を相手取って、合計15億円もの社債償還請求訴訟を提起するとともに、新たに株式会社大塚家具と競業する匠大塚株式会社を設立しました。
 そして、平成28年4月11日、株主総会で久美子氏に敗れた勝久氏は、株式会社ききょう企画に対する訴訟の第一審で勝訴することとなりました。
 株式会社ききょう企画は、株式会社大塚家具の発行済株式の約10%を保有しているため、勝久氏は、15億円の社債償還請求権の強制執行として、その株式の差押さえ等を狙っていた可能性がありました。しかし、株式会社ききょう企画は、保有していた株式会社大塚家具の株式を担保に金融機関から15億円を調達して勝久氏に支払うことで、上記事態を回避することができたようです。
 株式会社大塚家具は上場企業でありますが、会社法は、上場の有無や会社の規模を問わず、経営者、従業員、株主、及び債権者等に、会社経営に影響を与え得る権利をそれぞれ認めているため、国内のあらゆる企業は、経営支配権をめぐる紛争に巻き込まれる危険性があります。
 経営支配権をめぐる紛争が長期化すれば、本業に支障が生じ、風評によって予期せぬ損害を被る危険性もあるため、会社としては、事前に関係者からのあらゆる請求を想定した上で定款、契約、株式構成等を整備し、個別の請求に臨機応変に対抗して可能な限り速やかに紛争を決着させられるかどうかが重要となります。

(2016年4月執筆)

人気記事

人気商品

発刊によせて執筆者より 全71記事

  1. 発刊によせて
  2. 税理士事務所経営のささやかな羅針盤となるように
  3. 相続問題に効く100の処方箋
  4. 相続土地国庫帰属制度の利活用促進の一助になれば
  5. 患者と医療従事者とのより望ましい関係の構築を願って
  6. 遺言・遺産分割による財産移転の多様化と課税問題
  7. 専門職後見人の後見業務
  8. 不動産の共有、社会問題化と民法改正による新しい仕組みの構築
  9. 登記手続の周知
  10. 育児・介護休業制度に対する職場の意識改革
  11. メンタルヘルスはベタなテーマかもしれないけれど
  12. 持続可能な雇用・SDGsな労使関係
  13. 自動車産業における100年に1度の大変革
  14. 中小企業の事業承継の現状と士業間の連携
  15. 消費税法に係る近年の改正について
  16. コーポレートガバナンスと2つのインセンティブ
  17. 労働者の健康を重視した企業経営
  18. 被害者の自殺と過失相殺
  19. <新型コロナウイルス>「株主総会運営に係るQ&A」と中小企業の株主総会
  20. 意外と使える限定承認
  21. 保育士・保育教諭が知っておきたい法改正~体罰禁止を明示した改正法について~
  22. 筆界と所有権界のミスマッチ
  23. 相続法改正と遺言
  24. 資格士業の幸せと矜持
  25. 労働基準法改正への対応等、ケアマネジャーに求められる対応は十分か
  26. 人身損害と物的損害の狭間
  27. <新債権法対応>契約実務における3つの失敗例
  28. 新債権法施行へのカウントダウン - 弁護士実務への影響 -
  29. 不動産売買における瑕疵担保責任から契約不適合責任への転換の影響
  30. 子を巡る紛争の解決基準について
  31. 所有者不明土地問題の現象の一側面
  32. 相続法の大改正で何が変わるのか
  33. 民法改正による交通事故損害賠償業務への影響
  34. 「相手が不快に思えばハラスメント」の大罪
  35. 身体拘束をしないこと
  36. 合同会社の設立時にご検討いただきたい点
  37. 社会福祉法人のガバナンスが機能不全している実態が社会問題に
  38. 借地に関する民法改正
  39. ただの同棲なのか保護すべき事実婚なのか
  40. 農地相談についての雑感
  41. 瑕疵か契約不適合か 品確法は、改正民法に用語を合わせるべきである
  42. 外国人受入れ要件としての日本語能力の重要性
  43. 相続法改正の追加試案について
  44. 民法(債権法)改正
  45. 相続人不存在と不在者の話
  46. 財産分与の『2分の1ルール』を修正する事情について
  47. 離婚を引き金とする貧困問題と事情変更による養育費の変更
  48. 建物漏水事故の増加と漏水事故に関する終局的責任の帰趨
  49. 働き方改革は売上を犠牲にする?
  50. 次期会社法改正に向けた議論状況
  51. 消費者契約法改正と「クロレラチラシ配布差止等請求事件最高裁判決(最判H29.1.24) 」の及ぼす影響
  52. 「買主、注意せよ」から「売主、注意せよ」へ
  53. 障害福祉法制の展望
  54. 評価単位について
  55. 止まない「バイトテロ」
  56. 新行政不服審査法の施行について
  57. JR東海認知症事件最高裁判決について
  58. 不動産業界を変容させる三本の矢
  59. 経営支配権をめぐる紛争について
  60. マンションにおける管理規約
  61. 相続法の改正
  62. 消防予防行政の執行体制の足腰を強化することが必要
  63. 最近の地方議会の取組み
  64. 空き家 どうする?
  65. 個人情報保護法、10年ぶりの改正!
  66. 最近の事業承継・傾向と対策
  67. ネーム・アンド・シェイムで過重労働は防止できるのか
  68. 離婚認容基準の変化と解決の視点
  69. 境界をめぐって
  70. 妻の不倫相手の子に対しても養育費の支払義務がある?
  71. 個別労働紛争解決のためのアドバイス
  • footer_購読者専用ダウンロードサービス
  • footer_法苑WEB
  • footer_裁判官検索