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民事2016年03月16日 マンションにおける管理規約 発刊によせて執筆者より 執筆者:大河内將貴

1 マンション標準管理規約について

 マンション(区分所有建物)の管理組合では、建物や敷地の管理や使用のために、集会の特別多数の決議により規約を定めることができます。国土交通省は、この規約を定める際の指針や参考になるものとして「マンション標準管理規約」を公表しています。直近では平成23年に改正されたものが発表されています。
 さらに、現在(2016年2月)、マンション標準管理規約の改正に向けて、改正案に対するパブリックコメントが終了しています。したがって、間もなく改正案が出されるものと見込まれます。
 改正が提案されている事項は、外部の専門家の活用、災害等の場合の緊急対応、コミュニティ条項等の再整理、暴力団等の反社会的勢力に対する対策、管理費等の滞納に対する措置等があります。
本コラムでは、上記の一部分について取り上げてみます。

2 外部専門家の活用

 管理組合の理事や監事等の役員は、これまで区分所有者の中から選任されていました。しかし、マンションが建設されてから時間がたつと、居住者の高齢化や賃貸化によって役員の適任者確保に苦労しているマンションもあるほか、大規模なマンションや高層マンション、修繕や耐震補強を検討すべきマンションでは、管理にあたって高度な知識が必要とされる場合もあります。
 そこで、従来の外部専門家の助言を得る場合のほかに、外部専門家が役員等に就任可能なものとし、マンションの必要に応じた様々な外部専門家の関与パターンが示されています。同時に外部専門家の就任にあたって利益相反取引の防止や幹事の権限の明確化等の規定を設けることとしています。

3 コミュニティ条項等の再整理

 現行の標準管理規約には、地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成に関する業務や同業務に要する管理費の使途を定めた条項がありましたが今回の改正案では削除されます。
 基本的な考え方としては、区分所有権に基づく管理組合と、地縁に基づき任意に形成される自治会を混同しないことが重要です。管理費についてはマンション建物や敷地といった共有財産の管理のための費用に充てられるべきものであり、管理組合の目的外の支出を行うことはできません。一方で自治会費は、任意に加入した会員からの会費により自治会の目的に従って運営し、自治会費はその運営のための費用に充てられるべきですから、マンション管理費用とは異なります。
 もっとも、コミュニティ条項を削除する趣旨は、地域コミュニティに配慮しなくてもよいという趣旨ではありません。むしろ同時に改正される予定の「マンションの管理の適正化に関する指針」には、良好なコミュニティの形成に積極的に取り組むことが望ましいとされています。ただし、マンション管理費と自治会費の適切な峻別が必要ということです。

4 管理費等の滞納に対する措置

 マンションの管理費等はマンションの適正な管理及び管理組合の運営にとって大変重要です。そのため、管理費等を確実に収めてもらい、管理組合としても確実な徴収をする必要があります。
 管理費等については、先取特権が認められていたり(区分所有法7条)、区分所有権を新たに譲り受けた者に対しても管理費等を請求できるため、管理組合としては最終的に徴収できる可能性が比較的高いのですが、滞納発生時には早めの段階で専門家に相談することがよいでしょう。改正案には、「滞納回収のための管理組合による措置に係るフローチャート」が添付されていますので、参考にしてください。
 なお、標準管理規約60条2項に、管理組合は管理費等を納付しない組合員に対し「違約金としての弁護士費用並びに督促及び徴収の諸費用を加算して、その組合員に対して請求することができる」との規定があります。この規定が定められている場合は、法的手続きを現実に取らざるを得なかった場合においても、管理組合が支払った上記諸費用の支払いを認める裁判例が多くあります。

(2016年3月執筆)

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