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企業法務2015年10月23日 最近の事業承継・傾向と対策 発刊によせて執筆者より 執筆者:浅野洋

 我が国は戦後最大の高齢化社会を迎えており、中小製造業を例にとれば、法人数は1987年から2007年までの20年間で814万件から643万件と20%(171万件)強減少し、この間の経営者の平均年齢は51.7歳から57.3歳と著しく高齢化してきた。それ以後も事業所数は2009年から2012年までの3年間ではさらに420万件から385万件と8.3%(35万件)減少したとされている。
 60代以上で事業を後継者に何らかの形で引き継ぎたいと考えている経営者は70%弱(法人形態61.6%)であるが、この引き継ぎたいと考えている経営者の事業でも後継者が決まっている企業は56.6%に過ぎず、確保は困難と考えているケースが13.4%あるとされ、自分の代で廃業を考えている経営者を含めると中小製造業者の30%弱の経営者が様々な理由で承継をあきらめていると考えられる(中小企業白書2010年版、同2013年版、同2015年版などを参照)。
 自社の株式を上場するような実力があれば、上場により財務基盤と信用力を強化することができ、有能な人材の募集が容易になることで事業承継問題は解消されるし、特殊な技術や販路などノウハウを保持している企業であればM&Aや事業譲渡によって上場企業の傘下に入ることも可能であり、結果として事業承継の効果を得ることもできる。
 しかし、税理士が顧問をしている一般的な中小企業では、上記のような特性を有している企業はレアケースであり、事業承継問題はこのような高齢な経営者にとっては喫緊の課題とされている。
 一般的に事業承継は株主(オーナー)の会社に対する支配権の承継と経営能力の承継という二つの側面が考えられるが、税制や金融面からみると特に支配権の承継が重要となる。
 中小企業の事業形態は同族経営が大多数と考えられ、これを踏まえて事業承継の態様としては親族への承継と親族以外への承継とに区分し、さらに親族について推定相続人とそれ以外の親族に分類し、親族以外では社内にいる役員等とそれ以外の場合に分けて考えることになる。
 推定相続人への承継の場合、相続対策と相続税対策が必要となる。推定相続人である後継者に事業承継の意思があり、かつ既に対象会社の経営に参画している場合には現経営者は生前贈与と遺言によって円滑に事業承継するプランニングが可能となる。
 生前贈与には一般贈与だけでなく相続時精算課税制度を利用することや事業承継円滑化法における贈与税の納税猶予制度を含むことになるが、これらのスキームを実行するためには予め贈与税の課税標準となる自社株の評価額を算定しておく必要がある。
 また、遺言についていえば遺言執行を確実にするために遺言執行人を指定することや遺留分を予め計算するために現経営者の遺産総額を試算しておく必要があり、さらには経営資本を後継者に遺贈するために、代償分割などの分割方法の指定が必要となる場合もある。
 推定相続人がいない場合や推定相続人が後継者として適任でない場合は、推定相続人以外の親族(甥、兄弟、婿など)へ事業を承継することが考えられ、この場合でも、現経営者は生前贈与や遺言あるいは自社株の譲渡によって事業承継していくが、親族といっても親子ではないので自社株の評価は時価算定することが多い。
 推定相続人や親族に事業後継者がいない場合、あるいは後継者として適任でない場合は親族以外への承継を模索することとなる。
 たしかに、親族内で後継者がいなければ、従業員等の中で後継候補者を選定する場合もあるが、対象企業が金融機関から融資を受けているような場合には、新たな代表者(事業後継者)にも債務保証を求められる場合が一般的であり、オーナー一族でない後継候補者が個人保証を求められることで消極的になる場合も考えられる。
 このような背景から、平成21年度の税制改正で、中小会社の事業承継に資するために、取引相場のない株式等に係る相続税の納税猶予制度が創設されている。
 この制度は、経営承継相続人等が、非上場会社を経営していた被相続人から相続等によりその会社の株式等を取得し、その会社を経営していく場合には、その経営承継相続人等が納付すべき相続税額のうち、相続等により取得した議決権株式等(相続開始前から既に保有していた議決権株式等を含めて、その会社の発行済議決権株式等の総数等の3分の2に達するまでの部分)に係る課税価格の80%に対応する相続税の納税が猶予できるというものであり、生前贈与についても納税猶予の特例がある。
 しかし、この取引相場のない株式等に係る相続税等の納税猶予制度は創設当初から使い勝手が悪いとの批判があり、平成25年度と平成27年度の税制改正で所要の手当てがされてきている。事業承継対策を考えるうえで本制度の有用性が増したことを認識して今後の対策をしていくことが必要になる。

(2015年10月執筆)

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