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教育2020年02月26日 保育士・保育教諭が知っておきたい法改正~体罰禁止を明示した改正法について~ 発刊によせて執筆者より 執筆者:木元有香

1 体罰の禁止の法定化
 令和元年6月19日に成立した児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律(6月26日公布)においては、児童の権利擁護の観点から、①親権者は、児童のしつけに際して体罰を加えてはならない、②児童福祉施設の長等についても同様、と規定されました。
 具体的には、児童虐待の防止等に関する法律第14条(親権の行使に関する配慮等) において、「児童の親権を行う者は、児童のしつけに際して、体罰を加えることその他民法(明治29年法律第89号) 第820条の規定による監護及び教育に必要な範囲を超える行為により当該児童を懲戒してはならず、当該児童の親権の適切な行使に配慮しなければならない。」(傍線部分が令和元年改正法による改正部分)と、規定されました。
 また、児童福祉法第33条の2第2項において、「児童相談所長は、一時保護が行われた児童で親権を行う者又は未成年後見人のあるものについても、監護、教育及び懲戒に関し、その児童の福祉のため必要な措置を採ることができる。ただし、体罰を加えることはできない。」とし、同法第47条第3項では、「児童福祉施設の長、その住居において養育を行う第6条の3第8項に規定する厚生労働省令で定める者又は里親は、入所中又は受託中の児童等で親権を行う者又は未成年後見人のあるものについても、監護、教育及び懲戒に関し、その児童等の福祉のため必要な措置をとることができる。ただし、体罰を加えることはできない。」(傍線部分が令和元年改正法による改正部分)と規定されました。
 いずれも、令和2年4月1日より施行されます。
 なお、政府答弁1によれば、そもそも親権者以外の者は民法上の懲戒権を有しないので、従来より体罰が禁止されている、また、学校については従来学校教育法において、保育所や幼保連携型認定こども園のような児童福祉施設等においては今回の改正において体罰を禁止するので、全ての体罰が禁止される、との見解が示されています。

2 体罰の定義について
 今回の改正法には、体罰の明確な定義規定はありません。しかし、体罰の範囲については、厚生労働省の指針「体罰等によらない子育てのために~ みんなで育児を支える社会に ~」(令和2年2月、厚生労働省)において示されています。
 同指針は、国連児童の権利委員会による体罰の定義を踏まえ、「身体に、何らかの苦痛を引き起こし、又は不快感を意図的にもたらす行為(罰)である場合は、どんなに軽いものであっても体罰に該当し、法律で禁止されます。」と記しています。そのうえで、頬やお尻を叩くことや、長時間正座をさせること、等を体罰の具体例として挙げています。また、今回の改正法の体罰の範囲には入らないとされた「言葉により戒める行為」についても、著しい暴言等は心理的虐待にとして禁止されていること、怒鳴りつけたり、子供の心を傷つける暴言等は子どもの権利を侵害する行為であることを明記しています。

3 保育士・保育教諭の対応
 特定教育・保育施設及び特定地域型保育事業並びに特定子ども・子育て支援施設等の運営に関する基準第25条(虐待等の禁止)は、「特定教育・保育施設の職員は、教育・保育給付認定子どもに対し、児童福祉法第三十三条の十各号に掲げる行為その他当該教育・保育給付認定子どもの心身に有害な影響を与える行為をしてはならない。」と規定しています。すなわち、保育士・保育教諭は、今回の体罰禁止の改正法の施行前から、体罰が禁止されていたと考えます。園長のような施設長についても同様です(同法第26条(懲戒に係る権限の濫用禁止)2)。
 そのため、改正法の施行以前であっても、保育士・保育教諭による体罰は許されません。また、前述の厚生労働省の指針はよく読んで、内容を把握してください。
 そのうえで、改正法の施行後は、保護者支援の一環として、保護者による園児への体罰をなくす支援を行うことが求められます(保育所保育指針第4章2、幼保連携型認定こども園教育・保育要領第4章第2)。具体的には、お便りや保護者会で、その他個別に、体罰によらない適切な子育ての方法をお伝えしたり、必要に応じて、外部の相談窓口(市区町村や保健センター、児童相談所等)を案内することが考えられます。

1 令和元年5月10日衆議院本会議 井出委員の質問に対する安倍首相の答弁及び、令和元年6月18日参議院厚生労働委員会 川田委員の質問に対する政府参考人の答弁
2 (懲戒に係る権限の濫用禁止)
第二十六条 特定教育・保育施設(幼保連携型認定こども園及び保育所に限る。以下この条において同じ。)の長たる特定教育・保育施設の管理者は、教育・保育給付認定子どもに対し児童福祉法第四十七条第三項の規定により懲戒に関しその教育・保育給付認定子どもの福祉のために必要な措置を採るときは、身体的苦痛を与え、人格を辱める等その権限を濫用してはならない。

(2020年2月執筆)

発刊によせて執筆者より 全55記事

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執筆者

木元 有香きもと ゆか

弁護士・保育教諭
(鳥飼総合法律事務所)

略歴・経歴

2005年 東京大学法学部卒
2007年 東京大学法科大学院修了、司法試験合格
2008年 最高裁判所司法修習修了、弁護士登録
2014年 保育士資格取得・登録
2018年 幼稚園教諭一種免許状取得

〈主な著書〉
『幼稚園・保育所・認定こども園のための法律ガイド』(フレーベル館)著、『保育現場における困りごと相談ハンドブック-保育士・保育教諭のお悩み解決のために-』(新日本法規出版)著、『企業のうつ病対策ハンドブック』(信山社)共著、『Q&A 外国人をめぐる法律相談』(新日本法規出版)共著、『ここが変わる!!新たな税務調査手続への対応』(ぎょうせい)共著、『改正社会福祉法で社会福祉法人の法務・財務はこう変わる!』(清文社)共著、『ハラスメントの事件対応の手引き』(日本加除出版)共著、『Q&A 社会福祉法人制度改革対応ガイド』(ぎょうせい)共著、『日経MOOK 社長のための残業時間規制対策』(日本経済新聞出版社)共著、『迷ったときに開く 実務に活かす印紙税の実践と応用』(新日本法規出版)共著

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